【IOF_15.log】転生狸おやじ
「ところでさー、みんなの国に徳川家康っていたでしょ。狸おやじって言われてた人。イザナミちゃんから聞いたんだけど、あの人も異世界から転生してきた人らしいよ。誰もできなかった日本の統一とその後の安定をもたらしたすごい人ってことよね。家康は、ムジーナ国からの転生ね。なにそのご都合主義って感じ」
「酒の席の与太話で大河ドラマを根底からひっくり返すような発言やめてください」
いや、福原代理、大河ドラマはどうでもいいです。ひっくり返るのは日本の歴史です。
「そんなこんなでグレートなことを成し遂げた家康だけど、やっぱり望郷の念は捨てがたかったみたいで、終生をかけて帰還の手段を探っていたらしいわよ。結局、成功しないまま生涯を閉じたそうですわ」
「帰還方法が未完成だったということは、開発していた事実はあると?」
福原代理ナイス突っ込みです!
「もちろんあるわよ。今でもその痕跡は残っているはず」
痕跡ですって! あ、でもここ異世界から日本の痕跡を探るなんてできません。期待して損しました。
「家康が遺したものといえば江戸城、いまの皇居とか日光東照宮なんかがすぐに思い付きますね」
日光東照宮といたえば、逆さ柱があえての未完成状態を保つものだとか、眠り猫の裏に雀が描かれていたりして、なにかと謎の多いところです。謎は別として、有名どころとしては陽明門とか、眠り猫とか三猿とかですか。
神はさらに続けます。
「ほら、よくいるじゃない、常人では考えも及ばないようなこと成し遂げる天才とか、ものすごい政治力で国をまとめあげたりするような人たち。その手の人も異世界人が割と多いっていうのが天界の常識。私の星にはまだそこまでの人は来たことないけどね。あ、ジュリちゃんが最初の人になっちゃうかも」
「やめてください」
福原代理が本気で困惑しています。
家康といえば、ミステリアスな人ですね。日光の東照宮も色々と謎が多いみたいです。
「そうそう、日本の転生者といえば、織田信長? 彼もそうなんだって」
「また歴史をひっくり返しますか」
「あれはね、六欲天を管理していた管理五課の神が他化自在天にいる魔王を戦国の世に転生させたら面白そうじゃね? って冗談半分の軽いノリで転生上申をあげたら、部長まで誰も中身も見ないでハンコを押したもんだから転生の決裁がおりちゃったんだって。バカなの? それをまた管理職が何の疑問も抱かずに実行した結果転生したのが第六天魔王、つまり織田信長よ」
「そんなお役所あるあるみたいなノリで魔王を転生させないでください」
「私がやったんじゃないから私に言われてもねえ」
神が鼻くそほじりやがりました。最低ですね、この神。
それから夜明けまでの間、何人かの歴史上の人物が異世界人だったという与太話を聞かされ続けました。いいのでしょうか、こんな職務上知り得た秘密をほいほい漏らして。
「ねえねえ、リリヤちゃん。さっき私たちが転移したきっかけが何かの干渉って言ってたっすよね。それって何すか?」
さすが鑑識、理系らしい疑問です。
鑑識の可愛さんは、見た目はゆるふわ系女子なのにバリバリの理系で言動も残念男子っぽいという大いなるギャップの持ち主です。ギャップ萌えというより違和感がすごいです。
「ああ、それね。詳細は未解明だけど電波の干渉らしいよ。干渉? 励振とか言ってたかな? 詳しいことは分からないや。とりあえず、電波って、電磁波ともいうでしょ。読んで字の如く電界と磁界が交互に発生して電波になるわけで、結局のところエネルギーなのですわ。そのエネルギーのうち特定の波長になんらかのパルスが乗ると転移のゲートに干渉が起こるらしいというところまでは解明ずみ」
神が人差し指をくるくると回して得意げに説明します。
「その波長は?」
「メートル法でいうところの2メートルだってこの前開発部の先輩が言ってた。なかなかのイケメンで眼福なのよ彼」
「後段はノイズっす。2メートルすか。警察無線の周波数帯が150メガヘルツで、波長がちょうど2メートルっすね。私たちの転移にもなんか関係ありそうっす」
可愛さんすごい! 早くも転移の原因に迫ろうとしています。
これは、もしかしたら意外と早く帰還できるようになるのでは? もっとも、私は異世界の方がワクワクしそうなので帰らないかもしれません。




