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【IOF_13.log】神も役人

「なんですかって、あなたに付与したスキルよ」

「それはそうなんでしょうけど、庇護、統率、鑑定、外交ってなんなんですか? それと、資格欄にリリヤ神の守護(2)、国を導く者なんてものが追加されています」

 いいわねー、その困惑顔。そそられるわ。

 え、でも私そんなにたくさんスキル付与したっけ? 私が付与したのは、たしか鑑定とリリヤ神の守護だけだったはずなんだけど。

 ていうか、他のスキルや称号を付与したの誰よ!

 しかも、リリヤ神の守護(2)ってどういこと? 今回、初めて人間に守護を付与したけど、守護に数字がくっつくなんて神業務対応要領に書いてなかったんですけどー?

 でもまああれよ、こんなことするのはきっと同期のイザナミちゃんに決まってるわ。あの子が日本を管理してるから転移際に手土産で持たせたに違いないわ。まったく、今度の飲み会で一言物申してやるんだから。

「ところでジュリちゃん、他の人のスキルも見せてあげれば?」

「え、ああ、そうですね。それで、なんで急にジュリちゃん呼びなんですか?」

「だってもう私たち友達でしょ?」

「はあ、そうですか」

 意外とあっさり受け入れるタイプね、ジュリちゃんは。

「では、皆さんの人事記録も確かめていいですか?」

「どうぞ!」

 ジュリちゃんが残りの人たちのスキルを読み上げていきます。

 それぞれ、担当している仕事に関係するようなスキルを付与してあげたから、活用してくれるといいな。


「あのー、私は?」

「あなたは幽霊でしかも女子大生だから警察官としての人事記録はありません。あ、あなたは隠密のスキルがあります」

 おっ、ジュリちゃんがさっそく鑑定のスキルを発動させたみたい。

「ほんとですか?! なんかかっこいいスキルですね。 ていうか、なんで分かったんです?」

 幽霊が喜んでる。なんかこの子ほのぼのする。消すのはやめよう。

「たぶん鑑定のスキルだと思います。幽霊さんのスキルはなんだろうと思ったら、ふと頭に浮かんだ感じです」

「よくある鑑定って言うと目の前にダイアログみたいのが開く仕様じゃないんだ」

 メガネの陰キャっぽい女子がぼそっとごちたわね。声ちっちゃ。でも私には聞こえたわよ。

 もちろん、幽霊にもスキルを付与しておいたから感謝して欲しいものだわ。

「はい! ありがとうございます!」

 ちょろっ、天界の規程で転移者にはスキルを付与することになってから私の恩恵じゃないのに。


「あ、リリヤさんに訊きたいことがあります。異世界に転移するとき、不衛生な物は転移できなくするような対応をなさっていますか?」

 ジュリちゃんが唐突に異世界転移システムの深いところ突いてきた。こやつ、できるっ。

「もちろんしてるわよ。生態系が異なる世界間で生物や物体を行き来させるわけでしょ、行った先に未知のウィルスや細菌なんかを持ち込まれたらパンデミックなんてことになりかねないじゃない。管理してる側としては大迷惑なわけよ。だから、システム側で自動的にフィルタリングしてるわね」

「そうでしたか。署員がそのような予測は立てていましたが、その予測が正しかったようです。ここにいる幽霊さんも不衛生な状態にあった肉体がフィルタリングされて魂だけが転移してきたようです」

 肉体と魂が分離するという仕様ではなかったような気がするんだけどなあ……難しいことはわかんないや。

「あ、そうだ、スキル付与の他にも異世界で生きていくのに不自由しないように、ちょいちょい細かい補正をかけてるから、その都度説明して差し上げますわ。神様補正ってやつよ。私を崇めなさい」

「なんか、一瞬お嬢様にならなかったか?」

 そこのマイルドヤンキー、シャラップ! ちょっと言い間違えただけだから!


「ところで宿責、共捜本部の部屋の冷蔵庫に缶ビールがぎっちり詰まってます。電気が切れたいま、このままだとぬるくなってしまいます」

 何事もなかったかのように次の話題に移ったわね。顔が怖いわ。神様の扱い雑じゃない?

「まだそれやっていたんですね」

「そうなんですよ。本部からはやめるように指示されてるんですけど、やっぱり署長としては本部から人に来てもらうんだから歓待しなきゃと考えるらしくてですね」

 顔が怖い男、ナイス情報よ! さあ、酒盛りしましょう!

「リリヤさん、私たち警察官は、勤務中みだりに飲酒してはならないという決まりがあって、特に理由もなくお酒を飲むわけにはいかないんです」

 なに堅いこと言ってるのよ。そんなの天界だって同じよ。飲み会と聞いたらコスプレなんてしてられないわ。ちょっと着替えてくるから待っててよね! ごきげんよう。

「あ、神様が消えました。本当に着替えに行ったみたいですね。しかし、あれですよね、せっかく冷えたビールがぬるくなるのは冷やすのに使った電力が無駄になりますから、ここは皆さんで飲んでしまいましょうか。ちょっと強引な理由ですけど」

 天界に戻る道すがらジュリちゃんの声が聞こえてきた。よしよし、酒が飲めるぞ。


 ジュリちゃんの本音は、異世界転移で不安や緊張で押し潰されそう部下が少しでも楽になるようにっていう配慮だって知ってるよ。そういう人だからイザナミちゃんもスキルを盛ってくれたんでしょう。あの子もなんだかんだで面倒見がいいから。

「ところでリリヤさん、写真はNGですか? 可能なら上司や本部に異世界でのことを報告したいのですが」

 あー、写真NGで。天界って世界をまたいだ顔出しにはうるさいのよ。部長承認があればいいらしいけど、前例がないからたぶん通らないわよ。空間省先例集にも載ってないし。

「ザ・役所という感じですね」

 リアル役所だからね。顔出しはNGだけど、イザナミちゃんあたりに頼んであっちの世界に神託でも降ろさせようか?

「リリヤさんの顔出し以上に混乱しそうなのでやめてください。あ、報告書に神との接触事実を記載するのはどうですか?」

 それは大丈夫。こっちはそういう世界線なんだってことで通せば万事OK。先例集にもあるから特に承認も必要ないと思う。

「分かりました。じゃあ、そのあたりは淡々と事実を記載する感じで」

 そうね、眉目秀麗で威厳がある万能神だとでも書いといて。

「いま私は、『事実を淡々と』と言いました」

 ちっ

「今度は舌打ちしやがったぞ」

 男! あんたの顔ほどは凶悪じゃないわよ!


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