【IOF_115.log】兼職上申
お疲れさまです。
警視庁警務部人事第一課監察担当管理官警視綿岡伸彦だ。
勤務中異常なし。
もう俺やだ……
異世界から立て続けの兼業と兼職の上申だ。
処理する方の身になってくれ。
あの署長は、どれだけの職を兼ねれば気が済むんだろう。
今だって臨時代理大使に警察庁長官官房付だ。
代理臨時大使だけだって普通なりたくてなれるもんじゃない。
外交官ぞ? 治外法権だぞ?
普通、一介の警察官が兼職できる身分ではない。
それがなんだ。今度は天界だ?
ついにこの世からも飛び出したぞ。
天界で兼職するってことは、あれか? 神様にでもなろうってのか?
この上申を審査しろと言われる俺の身になってくれ。
何を審査できるっていうんだ?
天界の位相管理院管理官(院長)という職について調べろ?
は? どうやって? お前、調べ方教えろよ。クソ首席監察官様よ。
天界に聞き取り? できるわけないだろ。
こんなもの、ネットで検索したってチャットAIに聞いたって答えなんてないぞ。
そもそも、我々は、天界なんていう世界の存在を知らない。
どこにあるのかも、本当にあるのかも知らないんだ。
ところがだ。上申に添えられていた非公式のメモによると、福原署長は天界に行って冥魂府の上席管理官という神に会い、その神の提案で位相管理院管理官に就くことになったという。その地位は、空間大臣という、天界で一番大きな役所の大臣と同等らしい。
大使の次は大臣かよ。
その次は総理大臣だな、これは。
ていうか、なにしれっと「神に会って」とか書いてんの?
神の中の大臣クラスに抜擢ってこと?
福原署長は、神になるということか。
もう分からない……
人間の理解の範疇を超えている。天界だから当たり前か。
ちょい待ち。
神になるということは、人間ではなくなる?
神と人間、どちらの存在も保有し続けることは可能なのか?
それは無理だ。
神が人間の姿かたちをとる現人神なら考えられる。しかし、それとて存在自体は神であって人間ではない。
神が人間の上位存在であるならば、人間のまま神になるのは理屈に合わない。
やはり、神になったら人間としての存在はなくなると考えるのが妥当だ。
そう考えた場合、人間でなくなると警察官としての身分はどうなる?
警察官採用の基準に「人間であること」とは書いてない。
しかし、採用後、その警察官が人間でなくなった場合はどうなるんだろう?
首席に聞いてみた。
「知るかボケ。そんなことあるわけないだろ」
まったく話にならなかった。
戸籍はどうなる?
人間でなくなったら戸籍は抹消される?
戸籍がなくなったら、もはや日本人とは言えない。
そうしたら、採用基準である「日本国籍を有していること」に該当しなくなって失職の可能性もあるか……
これは法務省に疑義照会する必要がありそうだ。




