【IOF_09.log】通信途絶
お疲れさまです。
警視庁奥多摩警察署公安係巡査部長須田太基です。
僕は、暴対の南畝主任と二人で、無線や電話、110番システム、それとけいしWANが使えるかどうかの確認を任されたよ。
南畝主任は、見上げるほどの巨体にいかつい顔で、とても怖い人なんだ。
あれ、子供が見たらひきつけを起こすレベルで凶悪な顔だからね。
だから暴力団対策にはもってこいってわけだ。毒を以て毒を制すだね。
あ、南畝主任に睨まれちゃった。ごめんて。
でも僕は知っているんだ。
南畝主任は、すごーく優しくて子供が大好きな人だってこと。
だから、本当は暴対じゃなくて少年係を希望していたらしいけど、満場一致で却下されたそうだよ。お気の毒に。
いや、これは一緒に仕事をしている人ならみんな知っていることだから自慢にもならないかな。
だから、みんなが知らない情報を教えちゃおう。
南畝主任、実は有名な同人絵師。「シンジ先生」の名前で、結構人気があるらしいよ。ジャンルとしては美少女イラストが中心なのかな。
もちろん、夏と冬の大規模同人誌頒布会には欠かさずサークル参加しているらしい。さすがに顔が割れると仕事に差し障りがあるから、ていうか、顔を出したら誰も寄ってこなくなるっていうのが本当の理由らしいけど、売り子は他の人にお願いしているって。賢明だと思う。
なんでそんなことを知っているかって? ふふふ、公安なめんな。
さてさて、下命の課題を実施しましょうかね。
突然の停電からの非常用電源に切り替わったことが通信にどんな影響があったかということだったね。
まずは電話。
使えない。
発信音も聞こえない。
おかしいなあ、非常用の電話回線は停電でも使えるはずなんだけど。
隣で南畝主任が受話器を握り締めて「しもしもーっ?!」とか騒いでます。バブル世代でしたっけ?
念のためいくつかの課を回ってみたけど、どこも電話は通じない状況になっていた。
次は、110番システムと地図端末かな。
この二つは、厳密には別々のシステムだけど、ほぼ一体といっていいくらい連動している。110番の通報場所やパトカーの現在位置まで地図で確認できてしまうんだ。リアルタイムにパトカーのアイコンが動くのは、なかなか面白い光景なんだ。
110番システムはどうかな。
うん、更新できないね。通信が途絶えているみたいだ。
地図端末はどうだ!
ざんねーん。やっぱり更新できない。
いや、だから南畝主任、モニターを叩かないで。昔のテレビじゃないんだから。叩けば直るとかそういうものじゃないからね。
最後は、けいしWANだよ。「けいしWAN」ていうのは、警視庁の庁内イントラネットの愛称。インターネットには繋がっていない閉域網で安心安全。
というわけでもなくて、ちょっと前に、マルウェアが入ったUSBメモリーをけいしWANの端末に挿した大バカ者がいて、警視庁中に感染が拡大したことがあったらしい。閉域網だって外から持ち込んだら感染するよね。
結論から言おう。けいしWANも使えなかった。
パソコンとしての機能はもちろん有効だったけど、通信がダメだったね。
どうやら完全に外部との通信や情報が遮断されてしまったらしい。
あんまり気が進まないけど、結果を報告しなきゃだね。




