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プロローグ


 今日も慌ただしく、世界は回っている。

満員電車、歩行者天国、外に出るだけでノイズだらけだ。それでも、私は今日を歩く。

 私が歩く姿に誰かが希望を抱き、明日へと向かって歩いていく。

誰かに夢と希望を与える、そんな偶像に、私はなるんだ。

 黒の全身タイツにモーションキャプチャーを取り付けた状態で、カメラの前に立つ。

手足を伸ばし、その場でジャンプをする。うん、いい感じだ。

自分の器に「夢野笑夢」が憑依されるのを感じる。

「準備はいい?」

「うん、いいよ」

 彼女の声が耳に頷く。緊張して声が震える。足が痙攣する。あんなに練習したのに情けないな。

それでも、私は、前に進む。

 彼女がボタンを押して、配信が始まる。カメラが赤く光る。

まだ話していないのに、チャット欄のコメントが滝のように流れる。「来た!」「ユメユメ!」「この時の為に生きてきたんだー!」

「盛り上がってるね」

 思わず口角が上げる。私のために待ってくれている人がこんなにもたくさんいる。

ああ、幸せだな。私はちゃんと「私」になれているかな?

大丈夫、きっと明日は綺麗だ。


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