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第33話 繋がる過去


 シェリアータはルディアに伴われ、会場外の廊下へ出た。


「お話とは……」


 振り向いたルディアの顔はやはり、青ざめている。


 何かまずいことがあっただろうか。

 他家の当主に手伝わせたことに問題が?

 伯爵らの娘もアートデュエルに参加してはいるが、本人が審査に関わっていなければ制限はないはず……


 以前ルディアに問題を指摘されたのもこの場所だ。シェリアータの背を嫌な汗が伝う。

 不安になりながらぐるぐる考えていると、ようやくルディアが口を開いた。


「あのパフォーマンスは、貴女のプロデュースで間違いないのですよね」


「は、はい」


「歌の技術、演技力、エンターテイメント性、素晴らしかったと思います……が、」


 来る。

 シェリアータは緊張で身構えた。


「あのダンスは、何ですか」


 ダンス……!


 お兄様のセクシーポーズがまずかったのか??


「やはり、ふしだらと思われましたか……」


「そういうことではなく」


 ルディアはしばらく言い淀んで、顔を上げた。


「ジャズダンス……応援うちわ……」


 ルディアの口から飛び出した単語があり得ないということを、咄嗟に理解できなかった。


「別の世界の文化ではないですか」


「えっ?」


「貴女は、知っているのではないですか?」


 ルディアの唇が震えたように感じた。


「イケメンが天下を取っていた世界を」


  ジャズダンス

  応援うちわ

  イケメン


 ようやく、思考が繋がる。


「なぜ、ルディア様がその言葉を知って……」


「やはり、貴女にもあの世界に生きた記憶があるのですね」


 目の前がぐらぐらした。


 つまり、ルディア様にも前世の記憶があって、あの世界を知っていて……


「そして貴女は、この世界の価値観を変えようとしている」


「はい」


 だって、私はイケメンが好きで、

 お兄様が好きだから。


 フトメンに恨みはないけど、

 こんな差別的な世界はおかしいから。


「やめてください」


 真っ青な顔でルディアが訴えた。


「え」


「お願いですから、やめて」


 ちょっと、何を言っているのかわからない。


「私から平穏を奪うのはやめてください」


「でも!」


 公明正大な勝負のために、厳しくも優しく、未熟者を導いたルディア様。


 芸術への横やりに抵抗し、一介のアートデュエラーのために騎士隊長の元へ乗り込んだルディア様。


 自分の好みを二の次に、真摯に芸術を守ってきた姿とあまりにも一致しない。


「一体、どうして」


 ルディアは辛そうに頭を抱えた。


「私は、イケメンに騙されて、病気の恋人を見殺しにして、別れの言葉さえ言えなかった」


 頭を抑えた腕がブルブルと震えている。


「誰より心がきれいなのに、見た目を理由にバカにされてたあの人が、この世界では肯定されている気がしていたのに……」


 ギュッと目を閉じ、悲痛な声を漏らす。


「もう、乱されたくない」


 ルディアの前世に、何か大変なことがあったのはわかる。


 でも……


「心がきれいなのに、見た目を理由に?」


 シェリアータも黙っているわけにはいかない。


「それこそ私のお兄様です!」


 ルディアの恋人と同じ目に遭っているのだ。

 イケメンというだけで。


 価値観が逆転したこの世界。

 ルディアが怖れているのは、その再逆転なのだろう。


 でも違う。


「私はフトメン文化を排除しようなんて思っていません!」


 確かに、フトメンは好みではない。でもそれとこれとは話が別だ。


「人には好みがあり、それを楽しむ権利があります。私は両方が虐げられず、輝く世界にしたいんです!」


 求める先は同じはずなのだ。


 しかし、ルディアはだだをこねるように首を横に振った。


「……わかってるんです、ごめんなさい。私は自己中心的で、ひどいことを言っている。でも、耐えられない」


 もはや、理屈ではないのだろう。


 前世のイケメン文化というだけで、拒否反応が出てしまっているのだ。


 ルディアの頬をボロボロと涙が伝い、壊れるものを押さえるように自分の体を抱き締めた。


「助けて……」


 ルディアは喘ぎながらその名を呟いた。


「太一くん」


 ……太一?


 シェリアータの頭の中で、何かが音を立ててハマった。


 『病気の恋人を見殺しに』


 さっき、ルディアはそう言った。


「…………るき」


 記憶の中から、ひとつの名前が甦る。


「ルディア様は……瑠妃?」


 ルディアの瞳が大きく見開かれた。


「どうして私の、前世の名前を?」


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