5. 〇〇系
女の子に「会いたくなった」と言われて会わない男っているんだろうか?
僕は行くよ。
興味もあるし、下心もちょっとはある。いやいや、変なことをするつもりはない。ただ会ってみたいんだ。僕を虜にさせた、あの声の主に。
日曜日。
美羽ちゃんが住む町の、大きな公園にある噴水の前。
ここが待ち合わせ場所。
普通なら、事前に写真を見せ合ってから会うものじゃない? 待ち合わせ場所で探さなくてもいいように。
この方が楽しみだから、って美羽ちゃんは写真も送らず、場所だけ指定してきた。だから、着ていく服を教えておいた。ブルーのサマーニットにチノパン。割と普通?
近くに似たような格好の人がいなければいいんだけど……。
10分前には噴水前に到着して、付近を通る人を眺めていた。白いワンピース姿のかわいい感じの子が公園に入ってくる。ああいう子だったらいいな。
え、ちょっと待って。ワンピースの子がこっちに向かって来る。
前髪ぱっつんの黒髪ロングヘア―。タレ目がちな大きな目や、柔らかそうな頬は幼げでかわいく見える。
かわいい……けど。
よくよく見れば、顔色が陶器のように白くて、泣き腫らしたみたいに目元が赤いメイク。まるで、精巧に作られた人形のよう……。
これって地雷系ってやつ? 地雷系ってヤバい人じゃないの?
硬直してたら話しかけられた。
「えっと……。拓海くん?」
「は、はいっ」
思わず敬語が出た。
いつも聞いている美羽ちゃんの声なのに、イメージと違うので言葉が続かない。
「どうしたの? 緊張してる? それともガッカリした?」
「あ……いや、ガッカリだなんて思ってないよ。緊張はしてる。その……かわいくて……」
かわいいは嘘じゃない。
僕とは縁遠いメイクにビビっただけ。
「よかった。拓海くんもジャ〇ーズ系で格好いいよ」
「そんなの、言われたことないよ」
「じゃあ、あたしがいっぱい言ってあげる。拓海くん格好いい!」
「や、やめて。恥ずかしいから。それより早く遊びに行こう」
「あー待ってよ、格好いい拓海くん」
歩きだした僕の横に並び、顔を覗き込む美羽ちゃん。悪戯っぽく笑う姿はやっぱりかわいい。
そして女の子らしく、ほのかな甘い香りが漂ってきて、媚薬のように僕の心をくすぐる。
(⸝⸝•ᴗ•⸝⸝) まだつづく