4. あいたい
今夜はめずらしく、いつもの時間に美羽ちゃんからのメッセージが来ない。朝は『おはよう』のやり取りをしたんだけどな。僕から送ってみても返事は帰ってこない。どうしたんだろう?
仕方なくメタバースにログインして時間をつぶすことにした。ここに来ている様子はないのに、なんとなくウロウロと歩き回ってみる。夢中になってやっていたゲームの部屋も、今日はなんだか楽しくない。
「やめた」
ヘッドセットを放り投げた。部屋がしんと静まり返った。
ピロロン♪
静寂を覆すように美羽ちゃんからのメッセージ音が鳴る。
<ただいま>
<遅くなっちゃった>
すぐに返信した。
<おかえり>
<めずらしいね なにかあった?>
<彼ぴ♡と会ってた>
え? 彼ぴ?
僕は一瞬、息が止まった。
美羽ちゃん、彼氏がいたんだ……。
<そうなんだ>
<楽しかった?>
精いっぱいの強がりだ。
送ってから少し間が開いて、電話がかかってきた。
「冗談だよ~」
美羽ちゃんのおどけた声が聞こえる。
「なんだ冗談か。びっくりした」
「ちょっと色々あってね。拓海くんに連絡するの遅くなっちゃった」
「そうなんだ。よかった」
「安心した?」
「うん」
うん、と言ってから気付いた。
美羽ちゃんに彼氏がいなくてホッとしたと、告白したようなもんだな。
電話の向こうで、美羽ちゃんが『ふふっ』と笑うのが聞こえた。
「ねぇ拓海くん……」
「ん、なに?」
「会いたくなっちゃった」
( ⸝⸝⸝•_•⸝⸝⸝ ) つづくって