3. 同じ花火
「連絡先、教えて?」
意外と積極的な美羽ちゃんに連絡先を教えてから、毎日のようにメッセージのやり取りが続いている。「おはよう」に始まり、寝る前の「おやすみ」まで。女の子って連絡を取り合うのが好きなんだな。
ここ最近は、メタバースにログインすることなく、メッセージでのやり取りが多い。できれば僕は、美羽ちゃんの声が聞きたいのだけど。
電話、かけてみようかな?
スマホを手に迷っていたら、メッセージアプリに写真が送られてきた。花火の写真だった。そしてすぐに電話がかかってきた。もちろん相手は美羽ちゃんから。
「さっきね、家のベランダから撮ったの。きれいに撮れたから拓海くんにも見せたくて」
「ありがとう。本当だ、きれいに撮れてる」
そういえば近隣でも花火の音がしていたなあ……。
今日だったっけ? 夏祭りと同時に河川敷で行われる花火大会。昔、幼馴染と行ったことがある。この写真と同じアーチ橋があって、対岸沿いに高速道路が通っていて、後ろには茶色の高層ビルが見え……て……?
「おわーっ!?」
変な声が出た。
ここって、その花火大会の場所じゃん! 美羽ちゃんって隣町に住んでるの?
――メタバースは無限の広さだと思っていたのに、世の中って割と狭いんだ。
「へー、そうだったんだ。じゃあ今度は一緒に見に行けるかもね」
近所だってことに美羽ちゃんも驚いていた。それにしても、今度は一緒に見に行けるかもね?
これってフラグ?
それともただの社交辞令?
ぜひ、一緒に花火に行きたい。別の花火大会でもいいから……って、言えたらよかったのに。もし社交辞令だったなら、図々しいよね。
同じ花火が見える距離にいるんだ。そう思いながら、窓から花火が上がった方向を眺めてみた。
( ⸝⸝⸝•_•⸝⸝⸝ ) つづくかも