12. 誘惑
手紙を渡した後、この前の映画デートの続きをしたんだ。前回は愛美の割り込みがあって途中で終わってしまったからね。実は映画ってあまり詳しくない。だから映画館に行ってから、美羽ちゃんに観たいのを選んでもらったんだ。
選んだのはアニメ映画だと思って観はじめたら、実写とCGが混ざったようなファンタジーな物語。どこかメタバースに似た不思議な世界観で、すっかり見入ってしまった。美羽ちゃん、いいセンスしているんだな。
美羽ちゃんと付き合うことができたのは愛美のアドバイスのおかげ。だからいちおう、お礼くらいはしておこうと思った。それなのに――
「えっ、本気で付き合うの? いつまでもつかねぇ……」
なんて言ってニヤニヤ笑う。
なんだよ、応援してくれていたんじゃないのか? よく分からないやつだなぁ。
「で? なにか進展はあった?」
「進展って?」
「キスしたとか」
「美羽ちゃんと? し、してないよ。そんなこと」
「そんなことって……。恋人なんだから、してもいいじゃない」
「付き合うってそういうことなのか?」
「小学生か! いや、今時の小学生だってキスくらいするんじゃないの?」
「時代は変わった……」
「拓海が遅れすぎなんだよ。いつの時代の人間だ?」
そうかぁ、キスしてもよかったのか。だけどどのタイミングですればよかったんだ? 映画館の暗い中で? 急にそんなことしたら嫌われないか? そもそも美羽ちゃんはキスしたいと思っていたのかな? 女の子はどういう時にキスしたくなるんだろう?
「どうした拓海。疑問符いっぱい浮かべたような顔して」
「愛美はキスしたことある?」
「小さい頃、拓海としたじゃん」
「えっ、嘘だろ? 覚えてないけど……」
「うわ、覚えてないの? サイテー」
そう言われても……。小さい頃って何歳くらいの話だよ。
あ、もしかしたらいつもの嘘だな。愛美ならやりかねない。
「その手には引っかからないぞ。どうせ嘘なんだろ」
「嘘? じゃあ、もう一回したら思い出すんじゃない?」
「もう一回って、愛美と? 今?」
「美羽ちゃんとの練習だと思って」
練習かぁ……。
(๑ᵒ ᗜ ᵒ)و ̑✧ つづくのだ




