第1章:勝ったッ!第1章完!――To be continue……
「短い間だったが世話になった。村の皆にはよろしく伝えておいてくれ」
あれから数日が経過した。この世界についての基本的な情報収集、旅に出るための身支度、村人の怪我の治療に思ったより時間を食ってしまった。
ちなみに怪我の治療は、怪我人へ軽く力を込めた白いサイリウムを渡してやるとみるみる良くなっていった。ヲタ芸ってすごい、改めてそう思った。
「ケンジロウ様にはどれだけ言葉を尽くしても足りないほどです。こちらこそ、ありがとうございました」
村長の代理としてタキが深々と頭を下げる。相変わらず義に厚いやつだ。
「だけど、いいのか?こんなものを貰ってしまって。剣王軍にほとんど徴収されて、貴重なんだろ?」
親指で後方をピッと指す。そこには村から餞別として渡された大型のバイクが鎮座している。なぜかサイドカーまで着いているが。
「構いません。あなたにこそ必要になる物です。打算的な考えではありますが、剣王を倒していただくことはひいては私たちのためにもなりますし」
珍しく表情を崩すタキ。そう言ってもらえると、俺としても遠慮なくいただける物だ、ありがたい。
ちなみに、元の世界でもバイクの大型免許は持っていた。このバイクも型は古いが運転には支障なさそうだった。
「それで、まずはどこを目指されますか?」
サイドカーへ食料や飲み物、地図などを放り込んでいる際に、タキから尋ねられる。目的地はこの数日で決めていた。
「剣王の本拠地は『トゥーキョ』だったよな。とりあえずは『イチア』に向かい、海沿いにトゥーキョを目指すよ」
ヒノモトの地図によれば、このフーギは『岐阜県』とほぼ同じく位置していた。そして剣王の本拠地はトゥーキョ改め『東京都』。山を越えるのは億劫なため、まずはイチア――『愛知県』を経由して向かおうと考えていた。
「イチアはある程度大きな集落があります。そこで情報収集や、仲間を募ってみるのも良いかもですね」
タキの言葉にふと手を止める。仲間か、確かに考えていなかった。こんな時代だ、剣王打倒を志す者も少なくないだろう。
「私としてはケンジロウ様の旅に同行させていただきたいところではありますが……この村のこともあるので、そうもいかず……」
「わかっている。タキはこの村を守ってくれ。この村は、俺の帰ることの出来る場所でもあるからな」
俺はそういいながら軽く拳をあげる。タキもそれを見やり、同じように拳を上げる。二人の間で、ゴッと固い音が響いた。やっぱり男はどの世界でもこういうの好きだよな。
荷物にバイクの点検も終わり、いよいよ出発かと言ったときに幼い声が耳に届いた。
「ケーーン!ケーーン!!待ってくれよォ~~!」
バタバタと二人分の足音とともに、小年――バトウとリンコが姿を現した。なにやら二人とも身の丈ほどの背嚢を背負っている。
「見送り……ってわけじゃなさそうだな」
荒い息を吐く二人の姿に、思わず嘆息してしまう。なんとなく次の言葉は想像ついていた。
「ヘヘッ、ケン!俺たちも剣王軍打倒に連れて行ってくれ!絶対足手まといにはならないからよ!」
「ケン、私もお願い……!必ず力になるから!」
「おいおい二人とも……何を考えてるんだ。いくらお前たちが『魔法』を使えるからって危険すぎる」
タキが頭を抱えながら二人を諌める。しかし二人とも、頑としてついていくと譲ろうとしない。
……魔法?
「魔法、って言ったか?魔法ってあれか、火とか出したりするやつか?」
「そうだぜ!俺は火の魔法が得意だ!リンコは水の魔法だぜ!この村でも魔法が使えるのは数えるほどしかいないんだ!まあ、ケンの魔法には敵わないけどな!」
バトウが掌を空へ向けながら、俺の方へ突き出した。ボウッとくぐもった音とともに、小さな火柱がその掌から迸った。……え、マジか。
「……まあ、この世界についての知識も必要だしな。それに子ども二人くらい、ヲタ芸で守るのは容易い」
「やったぜ!さっすがケン!」
言うが速いか、二人ともサイドカーへ飛び込むように乗り込んでいった。
「まったく……申し訳ありません。ですが、ケンジロウ様なら安心です。どうか、二人をよろしくお願いします」
「任せろ。それと、俺からの餞別だ」
そういいながら、軽く腕を振るいサイリウムを装填する。それをタキへ放る。クルクルと2回転宙を踊って、抱きとめるようにタキがソレを受け取った。
「タキ、覚えておけ。ヲタ芸の力は無限だ」
受け取ったサイリウムと俺を見比べ、力強く頷く。
「胸に刻みます。ケンジロウ様、村民一同無事をお祈りします」
「救世主様ぁぁぁぁぁ!ワシにも、ワシにも餞別を恵んでくだしゃいぃぃぃぃいぃ!!餞別ほしいのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ところでケン。まずはイチアへ向かうって言ってたっけ?」
想像以上に荒れ果てた道中をバイクで走らせる中、リンコがサイドカーから声をかける。ろくにスピードも出せないため、運転中も会話は容易だ。
「ああ、そこで物資の補給や情報の収集をしようかと思っている。あと、剣王打倒の同士についても、一応当たってみようかとは思う」
正直、戦力については俺一人いれば余裕だと思うのであまり仲間については重要視していない。ただ、資金の支援や物資の援助などをしてくれる、スポンサーのような団体がいれば、という考えはあった。
「イチアか!それならまずはイチアの街にある『冒険者ギルド』へ行くといいぜ!」
「……そんなものもあるのか」
さっきから世界観変わりすぎだろ。
第一章――完
第二章――冒険者ギルド編
To be continue――




