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第1章:悪党どもに鎮魂歌はない!!

「抵抗をやめろーーっ!さもなくばこの小娘の首をひきちぎるぞーーっ!!!」


 薄暗い廊下を駆け抜け、三段飛ばしで階段を駆け上がる。音を頼りに目の前に現れたドアを蹴飛ばすように開けると、不意に差し込んだ光に思わず眼がくらんだ。


「うわっ……やっぱり剣王軍だぜ」


 肩で息をしながら小年が呟く。眼を細めながら周囲に視線を配る。どうやら地下室から外に出てこれたようだ。


 乾いた土の地面に粗末な建物が点在している。そして眼前――円形に広場が広がるその中心で、身の丈3メートルはあろうかという巨人と、似たような姿の取り巻きがいた。


 皆一様に筋骨粒々に金のモヒカンヘッド、前腕にはトゲのついた篭手のようなものを巻いている。なんだこいつら。



「お、おい兄ちゃん!あれ!」


「わかってる」


 俺たちの周囲には傷つき倒れている人々が居る。おそらくここの集落の一員か。そして一番目を引いたのが、小年も指差しているモヒカン巨人の掌中だ。



 先ほどの少女、『リンコ』が頭部を掴まれ人形のようにぶら下げられていた。


「食料だ!ありったけの食料をもってこい!!」


 小年の助言など必要もない。見るからに、あいつらが敵だった。


「長老!構うことない、戦いましょう!」


 俺たちの右方では角材を構えた、見るからに血気盛んな青年が。隣にいる老人に声を荒げていた。


 青年の言葉を受けたからか、モヒカン巨人の腕がリンコの頭部と体をねじ切らんと動く。


――それよりも早く、俺の脚は前に出ていた。


 カラカラにひび割れた地面を踏みしめ、一歩ずつモヒカン巨人へ歩を進める。


「誰だテメェ!この辺じゃみ見ねぇ顔だなァッ」


「俺か、そうだな名乗っていなかった。俺はケンジロウ」



 軽く腕を振るう。今の気分にあわせて、両の手に真紅のサイリウムを装填する。



「お前たちを、成敗するものだ」


 そのとき、俺の言葉に揺り起こされたかのように――リンコの眼が見開いた。そのまなざしで俺をしかと捉え、さらに叫ぶ。


「ケ、ケーーーーーーン!!来ちゃだめ~~~っ!!!」



 その心の叫びに、集落の人々が、小年が、モヒカン巨人までもが思わず眼を見張った。



「しゃ、しゃべった!リンコが!それに眼も……!!」


 当然だ。俺の『アマテラス』を前にして、目を閉じたままでいれるわけがない。しかし、声を出せるようになったのは彼女の力だ。

 歩みが、自然と力を増していくのを感じた。


「ハン、人形みてぇに黙っているかと思ったら驚かせやがって……おい、お前ら、あいつをやっちまえ!」


「ヒャッハー!」


 モヒカン巨人の号令を皮切りに、見るからに雑兵らしいやつらが躍り出てきた。


 数は四人。それぞれ手には無骨な鉤爪、大振りのナイフなど、殺意を滾らせているのが一目で分かる。それならば、こちらも手加減する必要はない。


 サイリウム同士を打ち鳴らす。赤い光が灯るのとほぼ同時、右手を弓引くように大きく後方へ引く。間断いれず、流れるように対側へ斬り降ろし、さらに〆字に斬るように続ける。


サビ技――【ムラマサ】。


 4×8の技だが、最初のほんの8拍子の時点で向かってきた4人のモヒカンはサイリウムによりずたずたのなますにしていた。

 しかし技の途中で止めるほど俺も野暮ではない。


 技単体で言えば最後の8拍子は伸ばした左腕で左上方を指し、右腕を胸の前で回す『ロマンス警報』で締める技だ。

 ロマンス警報を鳴らし、再び歩を進めようとした際に、俺の呟きとほぼ同時に奇声が響く。


「……馬鹿が」


「ヒャハッ!死にやがれェェェェツ!」


 斬り捨てた4人のモヒカンの影から、1人のモヒカンが俺の頭頂目掛けナイフを構えて飛び掛ってきていた。


 正面を囮とし、死角の頭上から襲い掛かる。策として理にかなっているかもしれないが、この状況では非常に愚かな一手だ。



「そこは『ロマンス』の位置だ」



 回される右腕――鳴らされる『ロマンス警報』の次には、当然『ロマンス』の出番だ。


 右腕の回転の勢いのまま、ぐるりと今度は大きく弧を描き動く。伸ばしていた左腕もそれに追従する。


 サイリウムの先までピンと延ばした腕は、そのまま空へと昇り、体がねじ切らんばかりに腕を振るった。その道中で頭上のモヒカンと眼が合う。

 その眼は、眼前の鮮やかさに見初められているようだった。


 対側へ振るう過程で、空の男を斬り崩す。さらに返すサイリウムで斬る。宙の男はお手玉のように地に落ちることなく、たっぷり4×8拍子分のロマンスを身に受け地に落ちた。







「は……?」


 眼前の光景を理解できなかったのか、モヒカン巨人がほうけたような声を上げる。


 そして俺の背後、長老と呼ばれていた男が、独り言のように言葉をこぼしたのが聞こえた。





「救世主様じゃ……!!」

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