表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

第0章:神か悪魔か!?現世に生まれた怪物

ヲタ芸、それは神から賜りし至高の芸術


ヲタ芸、それは人間が辿り着く極地


ヲタ芸、それは世界を救う最高の――











 『七宝 建慈郎』(しちほう けんじろう) 26歳 冬


 その人生の全てをヲタ芸へと捧げてきた。


 小さな頃に初めて映像でヲタ芸を目にしたときに、夢中になった。遊び道具として与えられたサイリウムを愚直に振り続けた。


 学業も、運動も、恋愛も。そのどれもに眼も向けず、ただただ一心不乱に、自分の技術を高めるためにサイリウムを振るい続ける。


 ヲタ芸に没頭した結果、雨にも負けず、風にも負けず。雪にも、夏の暑さにも負けぬ。

 丈夫な体を持ち、欲もなく、決して怒らず、いつも静かに笑っている。そんな人間へ成長した。



 しかし、26歳の頃に己のヲタ芸に対する技術の限界を感じる。


 悩みに悩みぬいた結果、ケンジロウが辿り着いた結果さき




 【感謝】、であった




 自分自身を育ててくれたヲタ芸への限りなく、大きな恩


 自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが


 一日一万回、感謝の【OAD】(オーバーアクションドルフィン)!!



 ヲタ芸の最も基礎となる技で、ヲタ芸の礎ともなる技。


 両手に光る『サイリウム』を持ち、足を肩幅に広げた立ち姿勢。

 下げた両の腕を大きく弧を描くように半回転させ、顔の側頭部にサイリウムを引き付けて交叉させる。


 そこからまた左右へ同じ動作を繰り返す。光の残像を伴いサイリウムが宙を走るその姿は、さながらイルカが海上へ鮮やかに舞い上がる姿を髣髴させる。



故に 【OAD】



 単純な動作ながら、技術力・表現力が顕著に現れる技である。


 

 気を整え、拝み、祈り、構えて左右へOAD。


 一連の動作を一回こなすのに、当初は5~6秒。一万回を終えるまでに初日は18時間以上、サイリウムも10本程費やした。



 演じ終えれば倒れるように寝る。起きてまたOADを繰り返す日々。



 2年が過ぎた頃、異変に気づく。



 一万回OADをし終えても、一本目のサイリウムの光が消えていない――ッ!!!


 弱い30を前にして、完全に羽化する。


 感謝のOAD一万回、1時間を切る!!



 かわりに、新しい技を考える時間が増えた。





 山を降り、ケンジロウは人前で自身の修行の成果を披露する。


 培った修行の結果、彼のOADはサイリウムの光を置き去りにしていた!!



 その光景を目にした者たちは、それぞれこう口にする。



「単純に見づらい」


「凄いんだろうけど、意味無くない?」


「観音様が………!!」





――怪物が、誕生した……







七宝 建慈郎。彼が異世界へ転移する前日まで、この日課は継続して行われることになる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ