7.本場の長崎ちゃんぽん
7.本場の長崎ちゃんぽん
事務所が移転したとき、駅からそこへ向かうのに色んな路地を通ってみる。
「へえー、こんなところにこんな店があるんだ…」
そんな中で出会ったのが長崎ちゃんぽんの店『長崎飯店』さん。九州出身のボクはちゃんぽんが大好きだ。長崎ちゃんぽんと言えばチェーン店の『リンガーハット』が有名だ。ここのちゃんぽんは九州出身のボクが食べても合格点といえるレベルのものを提供してくれる。ところがちゃんぽんとは名ばかりでまったく違うものを出す店もある。
上京したばかりの頃、とある中華料理店でメニューに“ちゃんぽん”があるのを見つけて注文したことがある。出て来たものを見てボクは愕然とした。それはボクが認識している“ちゃんぽん”とはあまりにもかけ離れたものだったからだ。どんな代物が出て来たのかというと、俗に言う、あんかけそばそのものだった。中華めんにあんかけの具材が掛けられたそれをこの店では“ちゃんぽん”と言うのだそうだった。「東京ではそうなのか…」とがっかりしたことがあった。
この『長崎飯店』さんは本物だ。ランチ時に食べられるのはちゃんぽんと皿うどんのみ。他にもチャーハンなどのメニューもあるのだけれど、ランチ時はちゃんぽんと皿うどんのみしか出していない。でも、それでいい。ちゃんぽんを食べに来たのだから。
ボクはちゃんぽんに関して言えば個人的なこだわりがある。その一つは具材が最低10種類入っているということだ。中でも必須なのは豚肉・さつま揚げ・かまぼこ(できれば紅白二色のかまぼこ)・キャベツ・もやし・人参の6種類のうち一つでも入っていないものがあれば、それはもうちゃんぽんではない。あとはエビや竹輪、ピーマン、玉ねぎ、コーン、きぬさや等店によってえらばれた具材が入ればいい。
それから大事なのが麺だ。ちゃんぽん麺は中華麺と違ってやや太い。そして、中華麺との一番の違いは、かん水が使われていないということだ。かん水の代わりに唐灰汁が使われているのだ。その唐灰汁は使用するのに許可が必要なため、長崎市内の一部の製麺所でしか使われていない。なので本物のちゃんぽん麺とはそう簡単には出会うことが出来ないのだ。
この『長崎飯店』さんはこれを満たす本場のちゃんぽんを食べさせてくれる。麺も長崎から取り寄せているのに違いない。聞いたわけではないので確信はないのだけれど。
メニューは先ほども言った通り、ちゃんぽんと皿うどんのみ。あとは普通か大盛りかだ。ボクは大盛りを選んで券売機のボタンを押す。大好きなちゃんぽんを大盛りで食べるのは、この上なく幸せだ。
そんな『長崎飯店』さん、ボクが見つけたのは秋葉原駅から少し歩いた路地を入ったところにあったのだけれど、いつの間にかなくなっていた。とても残念の想いをしていた。ところが、先日、神田で偶然その店を見つけたのだ。店名も同じなら長崎ちゃんぽんの店だというのも同じ。間違いはないと思いつつ恐る恐る入ってみる。間違いなかった!
店内の雰囲気も券売機で食券を買うところもメニューも、ランチ時はちゃんぽんと皿うどんしか出さないところも同じだった。
移転した『長崎飯店』さんは神田駅東口、神田平成通りを東へ進み、これまた路地に入ったとことにある。うちの事務所も秋葉原から神田に移転していた。今回もいつもの様の駅からいろんな路地を歩いていて偶然見つけた。美味しいものに巡り合うのには自分の足で歩くのが一番の近道なのかもしれない。