24.天ぷらは別腹
24.天ぷらは別腹
無性に天ぷらが食べたくなった。
休日出勤の代休で友達とランチの約束をした。2話で紹介した秋葉原の『八べゑ』で待ち合わせをして握りの12貫盛りを食べた。相変わらず美味い。
実は年明け早々に一度訪ねたのだけれど、その時は行った時間が遅かったのと、場所柄、仕事始めの最初のランチは寿司を食べようというサラリーマンで店は大盛況で、ボクたちが訪ねた時にはシャリが無くなっていて、美味い寿司にありつくことが出来なかった。
代わりに入った別の店で食べたランチもそれなりに美味かったのだけれど『八べゑ』の寿司が食べられなかったのにはがっかりした。
今回はそのリベンジということで開店時間の11時半に待ち合わせをした。
食べ終わってからも、顔なじみの店長と世間話などしながら1時前に店を出た。
「さて、この後は何か用事がありますか?」
「特にないけど…。浅草の角打ちにでも行きますか?」
「いいですね。でも、角打ちは2時からですよね」
「だったら、ぶらぶら歩いて行きましょう」
こうして、秋葉原から浅草まで歩くことになった。途中、あちこち寄り道をしながら浅草にたどり着いたのがちょうど2時だった。
目当ての角打ちはリッチモンドホテルの1階にある『まるごとにっぽん』。その一角に角打ちコーナーがある。そこで純米酒の三種のみ比べセットとおつまみの三種盛りを注文。純米酒のセットの中に“真野鶴”の+20辛口が含まれていた。辛口が好きなボクにしてみれば何ともラッキーなことだ。連れは純米大吟醸の飲み比べセットを。甘い日本酒が好きな連れにぴったりの三種がチョイスされていた。
美味い酒とつまみで話も弾んで、あっという間に二時間が経った。ほろ酔いでいい気分になったところで、連れと別れてバス停に向かった。
雷門通り沿いに東大島駅前行きのバス停がある。そして、そのバス停の目の前にあるのが老舗天ぷら店『葵丸進』さんだ。店頭で揚げたての天ぷらを販売している。油の香りが何とも言えない。無性に天ぷらが食べたくなった。
「うん! 天ぷらは別腹だ」
迷わず店のドアを開ける。案内された席に着いてメニューを見る。“冬の味覚定食”を頂くことにした。もちろん、ビールも。瓶のビールを手に取りグラスに注ぐ。先に出て来た前菜と漬物をつまみに先ずは一口。続いて天ぷらの盛り合わせ、ご飯、お椀も出て来た。天ぷらは種類も多くてボリュームもあったので野菜系のものからビールのつまみにして塩で食べる。サクサクの食感がたまらない。
ビールを飲み終えると残った天ぷらで飯を食う。今度は天つゆで頂く。つゆに浸けてもサクサク感は変わらない。海老、キス、イカ、そして、牡蠣の天ぷらまで。冬の味覚万歳だ。腹も心も大満足だ。




