飲み込んだ言葉でお腹いっぱい
「言う通りにしておけば良いんだ。わかったな」
「……はい」
またひとつ言葉を飲み込んだ。
喉を通り抜けた言葉は、たぷんとお腹に溜まって消化不良。
いつまでたってもそのままで、食事が入る隙間はない。
無理やり食べようとしても、どうしても飲み込めない。
言葉は飲み込めるのに。
だんだん味が分からなくなってきた。
この舌は、"はい"と"イエス"を言うだけのモノだ。
味を感じる機能はない。
食事をとれなくなって随分たった。
飲み込んだ言葉でお腹はいっぱい。けれども言葉には栄養はない。
体重が落ちていくにつれて、私の存在も薄くなっていく。
だれからも気にされなくなって、もう言葉を飲み込むこともない。
それでもお腹には、消化不良の言葉がいっぱい。
喉は声の出し方を忘れて、からからに乾いている。
体もやせ細って枯れ木の様。
でもお腹はいっぱいでぽっこり膨らんでいる。
「――――……」
何か言おうとした。
何を言おうとしたかは自分でもわからない。
声は音にならなかった。
消化不良の言葉が少しだけ減った気がした。