5:〈初心者バッグ:戦闘〉の中身
インベントリ――〈鞄〉に入っているアイテム部分に指で触れると、それは実物となってリーフの前に現れた。ずしりとした重みを感じたので、これも脳に信号がいってそう思えるようになっているのだろう。
〈初心者バッグ:戦闘〉は鮮やかな赤色の肩下げバッグになっていて、お魚のキーホルダーがついている。外側にはポケットもあり、使い勝手もよさそうだ。
「さて、中身はなにかな……っと」
リーフの種族は〈ケットシー〉なので、それに合わせた装備類やアイテムが入っているはずだ。バッグの中を覗き込んで、中身を取り出していく。
「まずは武器だね」
このバッグの中もインベントリの無限収納に似たような感じになっており、中身とバッグのサイズは関係ないようだ。
リーフが最初に取り出したのは、〈ケットシー〉定番の武器。
〈お魚印のハンマー〉
装備可能種族:〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉〈ケットシー〉
両手ハンマー/攻撃力+15
お魚のマークが入ったハンマー。敵を倒すと一定確率で食料の〈魚〉をドロップすることがある。
通常のハンマーより一回り小さく作られているタイプで、身長の低い〈ケットシー〉と〈ドワーフ〉が重宝する武器の一つだ。〈ヒューマン〉も装備することはできるが、子どもでもなければ身長が高いので扱いにくい。
次に出てきたのは、〈お魚印の短剣〉と〈お魚印の盾〉の二つ。
〈お魚印の短剣〉
装備可能種族:〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉〈ケットシー〉
片手剣/攻撃力+10
お魚のマークが入った短剣。敵を倒すと一定確率で食料の〈刺身〉をドロップすることがある。
〈お魚印の盾〉
装備可能種族:〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉〈ケットシー〉
片手盾/防御力+10
魚類系のダメージ耐性+10%
お魚のマークが入った盾。
武器には追加ドロップがあり、盾は耐性がついている。これは海や川のダンジョンやフィールドで重宝するだろう。
「食料がドロップするんだ」
これはクローズドβテスト時代にはなかった追加効果なので、試してみるのが楽しみだ。きっと未知なるファンタジーの味が体験できるのだろう。
リーフはちょっとだけ悩みつつもハンマーを装備し、短剣と盾は〈鞄〉へしまう。
防御面を考えると〈お魚印の短剣〉と〈お魚印の盾〉の二つを装備するのがいいのだけれど、攻撃力を考えると〈お魚印のハンマー〉が魅力的だ。
リーフは生産を極めようと考えているので、攻撃力や防御力を成長させていくつもりはないのだ。そのため、序盤は攻撃力を上げ、減ったHPはポーションで回復するのがいいだろうと考えたのだ。
(とはいえ、厳しそうだったらすぐに短剣と盾にチェンジだ)
臨機応変に対応すればいい。
「それから、あとは……」
バッグの中身を見て、入っているものすべてを取り出し地面へ並べる。
基本的な装備と、ポーション類が入っていた。
〈お魚印の胸当て〉
装備可能種族:〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉〈ケットシー〉
胴/防御力+15
魚類系のダメージ耐性+5%
お魚のマークが入った胸当て。
〈お魚印のブーツ〉
装備可能種族:〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉〈ケットシー〉
靴/防御力+5
お魚のマークが入ったブーツ。ぐっと力を入れると水の上を歩くことができるが、油断すると沈む。
〈お魚印のチャーム〉
装備可能種族:〈ケットシー〉
装飾/防御力+5
物理攻撃耐性+3%
魚類系のダメージ耐性+3%
お魚のマークが入ったチャーム。敵を倒すと一定確率で食料の〈焼き魚〉をドロップすることがある。
〈初級ポーション〉×100
HPを100回復することができる。
〈中級ポーション〉×30
HPを500回復することができる。
〈上級ポーション〉×10
HPを1000回復することができる。
〈解毒ポーション〉×5
毒状態を治すことができる。
「わ、たくさん入ってる」
これがあれば、しばらくは戦闘面で困ることもなさそうだ。
生産をメインにしていくので、無理に急いでレベルを上げる必要もなければ、攻略組に入るつもりもない。
これらはすべて〈鞄〉にしまっておく。
別途、ポーションはショートカット設定をする。これは手の動作などにより、瞬時にアイテムを手元に取り出すことができる機能だ。右手を振ると手の中に〈初級ポーション〉が出るよう設定した。
これで戦闘面の準備は完了だ。
そう思ったからだろうか……リーフの〈マイホーム〉を囲う柵のすぐ近くに、〈花スライム〉が現れた。
花が咲いている可愛らしいスライムで、花の咲く場所であればどこにでも生息している。草原や森などに多く見られ、弱いため初心者にはうってつけのモンスターだ。
さっそく戦闘のチャンスがやってきた。
リーフは〈システムメニュー〉から自分の〈ステータス〉を確認する。HPは30、マナは15あるが――まだスキルは〈猫化〉しか使えない。
つまり、リーフの攻撃手段は〈お魚印のハンマー〉か〈お魚印の短剣〉のどちらかになる。
(記憶が確かなら、〈花スライム〉はHPがだいたい30くらいで、攻撃力も低かったはず)
となれば、こちらにはポーションがたくさんあるので〈お魚印のハンマー〉を使うのがいいだろう。多少のダメージであれば、すぐに自然治癒で回復するはずだ。
リーフが戦闘態勢を取ると、装備している〈お魚印のハンマー〉が装備される。手でぎゅっとにぎりしめて、ハンマーの感触を確かめる。
クローズドβテスト時代、リーフの武器は両手ハンマーだった。そのため、とてもしっくりきている。上手く動くことができそうな、そんな気がする。
ということで初めての戦闘、スタート。
感想や誤字脱字報告、ありがとうございます!(嬉)
いい感じのタイトルがここまで出かかってて出てきません…!
閃いたらタイトル変更すると思います。