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10/18

10:一日の終わり

 普段はあるはずの〈ログアウト〉項目がないことに、リーフは首を傾げる。思い返せば、先ほど〈システムメニュー〉を確認したときにも見当たらなかった。

 これは由々しき事態である。と、普通ならば考えるだろう。そして、強制終了の手順はどうだったかと思い出そうとする。以前リーフが使っていた機器は、全身に力を入れると現実(リアル)に戻ることができた。

 しかし今回は新しいフルダイブマシンでログインしているため、強制終了の方法も違うだろう。


「…………あれ?」


 説明の書かれた冊子は、隅から隅まで読んだ。しかし、そのどこにも強制終了に関わる項目は――なかった。つまり、〈ログアウト〉しないかぎり、現実に戻ることができないわけだ。もしくは、家にいる誰かが外部からマシンに触らない限り無理だろう。


「まあ、正式オープンしたばっかりだもんね。そんな不具合もあるか」


 よくよく確認してみると、運営へ連絡することもできないようだ。外部との接続関係全般の不具合かもしれない。


(規模が大きいと、数時間……もっとかかるかもしれない)


 ちょうど休みの日でよかったと、リーフはのんきに考える。別に急いでログアウトしなければいけない理由はないのだから、普通に遊んで待てばいい。

 ああでも、フレンドリストが〇なのはこういうときにちょっと不便だなと思う。クローズドβテスト時代のフレンドリストには、何人かの仲間や情報交換する人がいたからだ。とはいえ、ゲームをしていればすぐに会うことはできるだろう。




 ひとまず〈マイホーム〉にはベッドもあるので、今日は一度休むことにした。

 リーフはベッドにダイブしようとして、はたと止まる。ついさっきまでモンスター相手に戦闘をしていたけれど、自分は汚れていないだろうか……。ひとまず匂いを嗅いでみると、汗臭いような……気がしなくもない。

 しかし、初期の〈マイホーム〉にはお風呂なんてない。仕方がないので、水道でタオルを濡らして体を拭くことにした。


(なるほど、ログアウトできないとこういう弊害もあるのか……)



 体を拭いてさっぱりしたので、今度こそベッドにダイブする。思いのほかふかふかで、心地よく眠ることができそうだ。


 しかし、リーフには先にすべきことがある。

 レベルが上がったので、現在〈スキルポイント〉が14溜まっている。ちなみに、レベル2に上がったときの1ポイントでは〈調理〉スキルを覚えた。


「〈システムメニュー〉、からの〈スキル〉っと」


 ベッドへ寝転んだリーフの前に、〈スキル〉一覧のウィンドウが現れた。その数は軽く一〇〇を超えているので、数えるだけで骨が折れそうだ。しかも、習得条件を満たしていない〈スキル〉や、クエストなどで習得する〈スキル〉は載っていないのだから驚きだ。


 今までであれば戦闘スキルを覚えていたが、力を入れるのは生産だ。レベルはまだ上がるので、ひとまず必要なものとすぐに使える〈スキル〉を選んでいく。

 あると便利な〈鑑定〉、ポーションなどを作るときに使う〈調合〉、道具類を作る〈工作〉を取る。それからパッシブスキルの〈採取〉〈畑作業〉や、そのほかいくつか。


「明日はポーションも作れるし、楽しい一日になりそう」


 習得した〈スキル〉を見て、リーフは満足そうに微笑む。そのまま目を閉じると、ゲームの中だというのにすんなり眠ることができた。



 リーフ〈ケットシー〉 レベル:16

 HP 232/232 マナ 110/110

 ギルド:未所属

 ◆スキル 残りスキルポイント:5

 〈猫化〉〈調理〉〈鑑定〉〈調合〉〈乾燥〉〈工作〉〈採取〉〈伐採〉〈畑作業〉〈発見〉

 ◆装備

 〈お魚印のハンマー〉〈お魚印の胸当て〉〈お魚印のブーツ〉〈お魚印のチャーム〉



 ***



 翌朝になると、リーフはパッチリと目覚めた。

 ぐぐっと伸びをしてベッドから出て、体の調子を見る。疲れは一切残っていないようで、かなり快適だ。ただ、お腹は空いているけれど。


「ご飯は、昨日ドロップした焼き魚でいっか」


 〈鞄〉から焼き魚を取り出し、〈調理〉スキルで〈空き瓶〉と〈林檎〉を使って〈林檎ジュース〉を作って飲む。林檎の甘さがさっぱりしていて、気分が上がる。


 今日は近くの村を目指し、必要物資を手に入れるのが目標だ。そのあとは、ポーションなどの生産作業も行おうと思っている。

 念のために〈システムメニュー〉を確認してはみたが、〈ログアウト〉や運営への連絡に関するメニューはないままだった。リーフはそのうち修正されるだろうと、元気に家の外へ飛び出した。



「おおっ! 芽が出てる!!」


 真っ先に視線を向けたのは、昨日植えておいた種たちだ。

 〈ポポコロの種〉を植えたところからは、薄ピンクの葉が二枚ついた芽が顔をだしている。薬草、ジャガイモ、レタス、コスモスも緑色の芽が出ている。

『シュピルアーツ』では、現実世界と比べ植物の成長速度がかなり早い。見たように、ほとんど翌日に芽が出て、早ければ数日で収穫することができるだろう。逆に、数年単位で育てなければならない植物もあるらしいが、リーフはお目にかかったことはない。いつか手に入れて、育てたいと思っている。


 リーフはすぐ家の中に戻り、水道で〈ジョウロ〉に水を入れて水やりをする。これで、明日になったらまた成長しているだろう。

 毎日の成長が楽しみだ。


「よし、今度こそ出発だ! まずはダントさんが暮らしてる漁村を見つけて、〈マップ〉登録して買い物だ」


 〈ケットシー〉ゆえに、猫耳や尻尾をブラッシングするブラシもほしい。リーフは日常生活用品に飢えていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 色々なことが出来そうで楽しそうーっていうわくわくした感じが楽しみです。 [一言] 個人的には元のタイトルのほうがかわいくてよかったなーって思います^^;
[一言] ログアウト不可になっているならログアウト不可のタグを付けた方がいいですよ。
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