今日見た夢
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ここは、テーマパーク竜宮ノ城
島の中に旅館やレジャー施設がひとまとめに置かれ、退屈することのない時間を過ごせるともっぱらの評判である
特色として真っ先に挙げられるのはその見た目であろう
巨大な城を模したドームが島の上に立ち、遠目に見れば城が海の上に浮いているかのようである
内部の様子を外から伺い知ることはできず、詳細な事は実際に城の中へ入るか、入城した事のあるものへ経験談を聞くのみに限られる
パンフレットによれば内部は縦に三つの層で分けられているようで、下から順に、一層目が宿、二層目がレジャー施設、三層目が従業員用となっている
なので、位置を考えればバスやトラックなどを渡す大きな橋は一層目に繋がっているのだろう
しかしながら、パンフレットにこそ書かれてはいないが城にはもう一つ、地下の一層があるという
地下へ向かう手段は限られているようで、普通であれば客はその存在も知る由はない
地下の層にはいろいろな憶測が立ってはいるが実際のところは全くの不明である
そしてもう一つ、この城には大きな特徴がある
「じぶんは初めて会うな……アンドロイドなんて」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「あ、そうだ、あんたもここの人なんだろ?コイン渡したら何かしてくれるの?」
「はい。追いかけっこができます」
「追いかけっこ……他には?」
「すみません、それしか私にはできません」
「そうなんだ」
「……じゃあさ、はい」
「え」
「やろう、追いかけっこ。鬼ごっこ、えーとだから逃げたりはできる?」
「そのような機能は私に搭載されていません」
「そっか、作った奴ももうちょっと機能増やしてあげれば良かったのにね」
「……」
「あー、よし、やろう。ルールとかは?」
「私が目を瞑り10秒を数えます。その間あなたはこのフロアのどこかへ隠れて下さい。私があなたを探し、見つけて触れたら私の勝ちです」
「なるほど」
「(……こんなに複雑な場所であたしを見つける……しかも触れるなんて)」
「分かった、じゃああたし隠れるからね」
「はい。では数えます。10、9、8――」
――――
「(もう10分は経ってる気がする)」
「(薄暗いし肌寒いし、そういえば時間切れとかあったっけ)」
バキッガラガラ
「(何か崩れてる。あの子かな)」
――――
「(……待つばっかりも飽きてきたな)」
「(さっき音がしたのはあっちか)」
――――
「おーい、いないの?」
「(随分崩れたんだな……天井の一部も落ちてきてる)」
「(それにしても静か……。本当に、あの子以外誰もいないんだ)」
ミ……ィ………キリ…ミ……
「!……ちょっと!」
――――
「ありがとうございます」
「助けを呼ぶぐらいしたらどうなのよ」
「そのような機能は私に搭載されていません」
「あたしがいなかったら一生瓦礫に埋もれてたんじゃない?」
「私が転倒した際には信号を発するためスタッフであればすぐ気づいたと思います」
「はぁ」
「……現在この層に常駐しているスタッフは0人です」
「…………いつも起こしてもらってたの?」
「はい」
「変えてもらったりとかできないの?その……脚とか」
「この層の運用当初からお客様に同じ意見を頂いてきました」
「後のモデルでは二足歩行ができるタイプへと変わりました」
「あんたは?」
「過去のモデルに対応している余裕が無いという事で、現状維持となりました」
「うーん…………皆はまずあんたを何とかしてあげてほしかったんだと思うけどな」
「ご期待に添えられず申し訳ありません」
「……そろそろ行かなきゃ。……ずっとここにいるの?」
「それが私の仕事です」
「……うん、じゃあね」
「またのご来場、お待ちしております」
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「ね、あなたもこれ渡したら何かしてくれるの?」
「はい。追いかけっこができます」
「追いかけっこ!」
「私が目を瞑り10秒を数えます。その間あなたはこのフロアのどこかへ隠れて下さい。私があなたを探し、見つけて触れたら私の勝ちです」
「捕まらなかったら?」
「…………」
「……どうしたの?」
「……すみません、負けの条件について調べられませんでした」
「え、じゃあずっと追いかけ続けるつもりなの?」
「午前2時時点で一度それまでの指示をリセットするため、探し続けることはありません」
「また、随時状況に応じて指示の中断と再開、破棄が行えます」
「そうなんだ、よし、とりあえずやろうよ」
「はい。では数えます。10、9、8――」
――――
「0。追いかけっこを始め……あの……」
「?」
「隠れて頂かないと」
「隠れてるよ?それより追いかけてくれないと」
「……見つけました、逃げられませんよ」
「きゃー♪」
ウィンウィン
とてとて
「ねえ」
とてとて
「はい」
ウィンウィン
「どれぐらい早く動けるの?」
「今のあなたと同じ速度では動けます」
「私せいぜい早歩きなんだけど」
「はい」
「ねぇ」
「はい」
「ずっとここで一人なの?」
「いえ、姉妹とやりとりは行います」
「ここに他の子がいるんだ」
「いえ、上層との繋がりです。私のIDはこの城内で流れる姉妹のネットワークと今もまだ繋がっています」
「なるほど、じゃあ寂しくはないね」
「はい、でも空しくはあります」
「例えば?」
「ここにはもう何年も人は来ていません。少なくとも、私は出会ったことがないです」
「だから、悲しい?」
「悲しいかは分かりません。でも、空しくはあります」
「だけど今はあなたがいる」
「そうだね」
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――――
「はい、ここまで」
「?」
「もう一時間ぐらいいろんなところ歩いたし、休憩しよう?」
「中断しますか?」
「そうしよ」
「分かりました、中断します。午前2時までに再開されない場合指示は破棄されるためご注意ください」
「はいはい」
「……歩くのやめたら汗かいてきちゃった、シャワーとか――」
「このちかくに温泉宿跡地があります」
「え、ほんとに?どこどこ?」
「あなたの後ろです」
――――
「へー!凄い!」
「一部はボイラーが動かないようですが、湯気がでているところは入って頂いて問題ありません」
「照明等もこちらで管理しておくため、お好きにして下さい」
「よし、じゃあ早速……あ!」
「どうされました?」
「あなたも結構汚れてる、今まで薄暗くてよく分からなかったけど」
「長らく掃除されていませんので」
「女の子なんだから、綺麗にしておかないと、ほら!」
「あ……」
――――
「勢いで温泉一緒に入れちゃったけど、水とかは……」
「問題ありません、事前のテストがありますので」
「ならいいんだけど……」
ジー
「?」
「もうちょっと大きくしてもらえば良かったのにね」
「……一定以上の大きさは業務に支障が出るため、認識される程度のサイズで調整されています」
「サイズは変えられないの?」
「A〜Eまでであれば自由に調節可能です」
「便利だね……」
「現在のサイズはAです。必要であれば変えますが」
「いいよ、このままで。合ってるのはこれだと思う」
――――
「サウナは入れる?」
「問題ありません」
――――
「のぼせてきたかも……そっちは……あ」
「…………」
「やばいやばい」
――――
「……んん」
「気づいた?」
「ここは……?」
「寝る場所にお湯が流れてるみたいな……、そんな場所」
「寝湯ですね。すみません運んでいただいて」
「それはいいのだけど、大丈夫?」
「大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
「……あの」
「近い?」
「距離もそうですが、手が」
「女の子同士だし、別にいいんじゃない」
「それとも、恥ずかしいとか?」
「分かりません、でもこのような状況は初めてなので……」
「じゃあ、これから慣れよう?」
「あ、ちょっと、ん」
ちゅ
「まだ、ここ、ン!?――」
ちゅる、にゅろ
「ンク、あ、はぁぁ……」
「これも初めて?」
「……はい……あっ」
「こっちもちゃんと感じるんだ。小さい方が感度高いらしいよ」
※
――――
「お城の外には出れないの?」
「活動自体はできますが、技術の持ち出しをここの人間は許さないでしょう」
「例えそれが既に使われていないようなガラクタだったとしても」
※
――――
「あなたと出会った今日を私は忘れません」
「私も、絶対忘れない」
「姉妹にも自慢しようと思います」
「それは……まぁいっか」
「お見送りします」
「うん」
――――
「じゃあね!」
「またのご来場、おまちしております」
プシュン
ガー
「早速姉妹にも自慢しないと」
「…………」
「…………?」
「…………繋がらない」
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