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鍛治師スキルはチートの香り・8

「ふむ、なるほど。一つの大枠の中ならば複数の魔法陣を刻んでも魔力の流れに異常をきたさないというわけだね」


 灰色の髪をしたパッとしない感じの顔つきをしているのはローンティズさん。ロックラックさんの指示で俺の杖作りの補助をすることになった人だ。


「はい。おそらく魔法陣には自動で魔力の流れを調節する機能があるんでしょう。だから別々に刻んでいると魔力を食い合ってしまい、適切な調節ができないんじゃないでしょうか」


「一つの魔法陣として纏めてしまえば大枠の方が勝手に調節してくれるってことかい。なるほど、理にかなっているね」


 ローンティズさんには杖をくり抜く作業と杖の先端に魔法陣の外枠となる銀糸を通す作業をしてもらっている。


 彼は普段柄の部分を作る仕事をしていると言っていたが、なるほど確かに手際がいい。細かい作業はお手の物なのだろう。


「しかし杖の先端を彫って魔法陣を刻むというのはなかなか神経を使う作業だね。深さを均一にしなければならないし、わずかなミスが命取りだ」


「そうですね。魔法陣は形に対しては融通が利きませんから。立体的に魔法陣を組む際にも、一つ一つの魔法陣は必ず平面上に存在するようになってます」


「聞いた限りではなかなか信じがたいね。魔法石の内部をくり抜くのはまだしも、それを平面上に整えるなんて相当難しいんじゃないかな。なんらかの道具を使ってチェックできるわけではないだろう?」


「ええ。かなり練習しましたよ。それこそ日がな一日ひたすら削り続けたりなんかして」


「そうか。君は若いのにすごいね」


 魔力安定化の魔法陣を刻み、銀糸を円状に通してそれにカバーを付ける。後は杖の内部に成形した魔法石と魔法石から作った粘液を入れ、魔法陣の窪みまで粘液で満たす。そして刻印を済ませた魔法石をはめ込んで完成だ。


 見た目はいたってシンプルで面白みはないのだが、量産性だけは高いのでこれでいいだろう。重要なのは性能だ。


「これで最高級の杖に劣らない性能を発揮するのか。それほど等級の高い魔法石を使っているわけではないのに」


「単純に性能を高めるなら魔法石の量を増やせばいいんですけどね。あまり高くしても使い手が持て余すこともあるみたいですけど」


「これより性能を上げることが出来るのかい?

 なるほど親方が一ラインを融通するわけだ」


 国からの召し上げで忙しく作業をしている中で俺たちはスペースを与えられている。それはロックラックさんに認められていることの証だ。


 そのロックラックさんは一番炉で弟子たちと共に魔法剣を製作しているのだとか。聞けば有名な魔法剣の鍛治師なのだそう。鍛治師ギルド……良い人を紹介してくれるじゃないか。


 俺は延々と魔法陣を刻み、粘液を作り、組み立てる。


 どんな性能のものが受け入れられるのかわからないので、威力に特化したものだけではなく制御能力や範囲拡張などに秀でたものも用意しておく。


 途中から話を聞きつけた鍛治師ギルド長マインフォールさんの計らいでAランクやBランクモンスターの魔法石を回してもらえたので、性能では一般杖の三倍以上、現行最高級品の一・五倍以上の性能のものを量産する。


 こうして俺は図らずも泊まり込みで三日に渡って杖を作ったのであった。








 ここに二十年を超える経歴を持つ熟練のパーティーがいる。


 彼らはネアンストール東の森の奥地で探索に当たっていた。ネアンストールの中ではトップランカーの冒険者と言える。


 そんな彼らは普段とは違う空気を感じて目配せし、森を抜ける選択を取った。


 東南東の山地の見晴らしの良い場所を探し、周囲を観察する。


 そして明らかな異常、または明らかな前兆を発見するのである。


 魔王軍の軍勢。侵攻の前兆。


 彼らは目を皿のように巡らせ情報を搔き集める。


 そして一つの事実に気付き顔を青くした。



 そこには例年を遥かに超える軍勢が集っていたのだ。

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