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新たなランクと取り組み

 その日、冒険者ギルドから重大発表が齎された。


 全世界で冒険者が、そして全ての人間が興奮と驚愕を持って迎える。


 場所はネアンストール冒険者ギルド。


 いつぞやのずんぐりむっくりの達磨男とひょろりとした長身の優男が併設された酒場で顔を赤くして語り合っていた。


「おい、聞いたか。新しいランクの創設」


「ああ、驚いたよ。Sランクの上にSSランク、そしてSSSランクが創設されたなんて」


「しかもランクの定義まではっきりと説明があったぞ」


 達磨男がしたり顔で話すと優男が身を乗り出した。


「どんなのだ?」


「まずSランクだ。これはSランクとの戦闘経験があり、生還した者。これが明確に定義された」


「ということはお前の情報は正しかったってわけだな」


「ふん。これでも情報には気を遣ってるんだ。当然だな」


 以前、Sランクの到達条件を教わっていたことを思い出した優男。得意げに鼻を鳴らす達磨男に「さすが」と褒める。


「で、本題はここからだ」


「ああ。まずSSランク。これは冒険者のみでのSランクモンスターの討伐に成功した場合に与えられるそうだ」


「冒険者のみでの討伐……おい、それってまさか!」


「ああ。例の“赤撃”と“猛き土竜”の混成パーティー。その中でもSランクのマンティコアを討伐した四人が該当する」


「確か双剣士のツーヴァ、『首狩り姫』、ヒーラーのミーナ、そしてあの『氷雪の魔女』……」


「その通りだ。四人は間違いなくSSランクに昇格する」


 以前から“赤撃”と“猛き土竜”所属のミーナの五人は竜との戦いから生還したことでSランクへの昇格が噂されていた。


 それからしばらくの間は冒険者ギルドに音沙汰が無かったが、今回の大々的な発表を考えると相当な協議があったのだろう。


 そしてトドメとなったのはSランクモンスター、マンティコアの討伐。


 その史上類を見ない快挙を前に冒険者ギルドは何らかの動きを迫られ、今回の発表へと繋がったのだろう。


「ん? じゃあSSSランクはどんな定義なんだ?」


「ああ、それはな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だそうだ」


「……いや、待て待て。Sランクモンスターって軍が半壊になるほどの化け物なんだよな? それと同レベルの実力ってヤバすぎるんじゃないか?」


「それは俺も思った。だがここのところの技術の発展を考えると、近い将来SSSランクに到達する者が現れてもおかしくないと思う」


「いや、まさか……」


「まさかと思うか? だがな、考えてもみろ。先の戦争では英雄様たちは幾度も広域殲滅魔法を放って魔物を殲滅していたそうじゃないか。これまでそんなことが出来ていたか?」


「それは確かに……そうだが」


 優男が驚きを飲み込もうと眉を顰めている時だった。


 冒険者ギルドに入ってきた一団に大きなどよめきが上がる。


「お出ましだ」


 “赤撃”と“猛き土竜”の混成パーティーが現れた。ちなみに例の見習いはいないが、今やその面子は知らぬ者はいないほど有名だ。


「また色々と装備が変わってるな」


「分かるのか?」


「当然だ。他の面子も気付いているはず。おそらく奴らは最先端の装備を何らかの方法で入手しているんだろう」


「そんなことできるのか? 高性能の装備は全て軍に徴発されるだろう」


「そう思うよな。だがな、最近知ったんだが例の見習いがいるだろう」


「ああ、薬師の。それがどうかしたか?」


「軍属だそうだ。しかも肩書きは“技術顧問”」


「軍属……じゃあそのツテで入手していると」


 達磨男は首を振った。


「技術“顧問”だぞ。あの見習いが自ら作っている。そう俺は考えている」


「ばっ、…………マジか?」


 優男の声が小さくなる。達磨男は小さく頷いた。


「他の面子も薄々は感じているだろう。いくら軍属だからってまだ成人したばかりの子供だ。最新装備を流せるような立場になれるか?」


「…………」


「だが開発者であれば話は別だ。軍が“顧問”としてスカウトしたなら筋は通る。パーティーメンバーに装備を融通するのを見逃すのもな」


「……なるほど。信憑性はあるな」


「それにな。これは本当に気付いている者しか気付いていない話だが……あの見習いが街を出歩く時、軍人や衛兵が遠巻きに監視しているようだ」


「監視? 何でだ?」


「おそらく警護。それも本人に気付かれないようにな。つまり、あの見習いはそれだけ軍にとっても重要人物だということだ」


「おい、それってもう答えじゃないか!」


 優男が唾を飛ばしながら大声を上げた時だ。


 大歓声がギルド内に響き渡った。


「おわっ、なんだ!?」


「……見ろ。パーティーリーダーの重戦士ラインがSランクに昇格した」


「マジか!?」


「それだけじゃない。ヒーラーの美人もSランクだ」


 見るとライン、レイアーネの二人が脇に逸れてマンティコアを討伐した四人に場所を譲っている。


 そして新人受付嬢のケフィナが双剣士ツーヴァの名前を呼び、手元に並べてある封筒の一つを手に取った。


 なるほど、Sランク以上への昇格はああやって通達するのか。


 ケフィナが中の書類の文章を読み上げるのを眺めていると、周囲から「SSランクだ!!」と声が上がった。


「やはりSSランクに昇格か」


「それに見ろ。次はあの『氷雪の魔女』だ。………………やはりSSランクに昇格だ」


「ということは………………やはりヒーラーのミーナもSSランクに昇格か」


 予想通りだ、と酒を呷ろうとした達磨男はジョッキが空だったことに気付き、優男の分も注文しようかと腰を浮かしかける。


 その時、受付嬢のケフィナが甲高い悲鳴を上げた。


 全員の視線が彼女に向かう。


 彼女はガチガチに緊張しながら文章を読み上げていく。


 そして。


「せ、せ、セレスティーナさんは、ほほ、本日、付け、で、と、と、SSSランクにしょしょ、昇格となりまひゅう!」


 一瞬の静寂。


 そして歓声が爆発した。


「おい、おいおいおいおい! と、SSSランクだって!?」


「馬鹿な。『首狩り姫』はBランクに上がったばかりのはずだが」


「だがよ、マンティコアを倒してるんだ。それでも一、二、三……三ランクもすっ飛ばして昇格かよ!?」


「信じられん……そんな情報は知らなかった」


 優男と達磨男は口々に驚愕を言葉にしながら、意気揚々とギルドを出て行く二つのパーティーを見送る。


 そして優男はふと気付いたように目を見開き、震える声で呟いた。


「ってことは……『首狩り姫』の強さはSランクモンスターと同等ってことか……?」


 達磨男は大きく目を開け、掠れた声で「お、おう……」と返事した。

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