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008 始まり


 悠人が自室である程度資料を読み終わり、気がつくと夜になっていた。   

 

「はぁ、寝るか。

 明日は・・・7時食堂集合か。

 起きれなかったら・・・」


 ふと、明日遅れたらリーゼになにをされるか考えてみた。

 今までのリーゼの行動から考えると、何をされてもおかしくない。


「いや、起きないとな。」



 そして、悠人が目覚めると時計の針は6時40分をさそうとしていた。


「ふぅ。よかった。」


 すると、艦内放送が流れる。

 

『えー、皆さん、6時40分でーす。

 今日から演習なので遅れないよーに。

 ではでは、食堂にしゅーごー。』


 そこはかとなく二度寝したくなりそうな艦内放送を聞きながら支度をすまし、食堂へと向かった。

 悠人の荷物がどこから出てきたかというと、実は悠人のものでは無い。

 すべて、学園が用意した備品と制服だ。

 演習が終わってから買いに行けとのことだった。


 しかし、悠人の私物が無い訳では無い。

 それでは不便だろうとサラが魔法でどうにかしたと言って、悠人の部屋にあったものをあらかた差し出してきたからだ。


 そして、食堂で改めてみんなに自己紹介した悠人は特に何事もなく艦橋に入った。


 時計の針が8時を指した時、全員がそれぞれの持ち場についていた。

 そして、リーゼは腕時計を見つめ、8時になった事を確認してから少し真面目な顔になった。


「ドック注水開始!」


 リーゼの言葉に従うかのように、金剛が入渠していたドックの扉が開放され、海水が流れ込む。

 十分に海水が満ちたことを確認して、リーゼは出航命令をだした。


「船体固定具解除、魔導エンジン指導、両舷前進微速!」


 ドックに金剛の船体を固定していたものがはずれ、自由になった金剛は穏やかな海を滑るようにゆっくりと力強く進み始めた。

 周りのドックや港にいた船も動き出した。


「目標、ハワイ諸島西2500km、操艦を航海長に一任します。」

「了解。

 任せとけ!」

「各艦に通達、第二艦隊、艦隊行動を維持しつつ20ノットで航行する。

 陣形は輪形陣とせよ。

 以上。以降、通常体制とする。」


 普段と口調が変わり、顔から笑顔をが消えていたリーゼの顔が少しホッとしたようになる。

 悠人は、リューヤにそっと聞いた。


「なあ、リーゼって多重人格?」

「おう。」

「えっ!?マジ!?」

「え?うそ。」

「なんだよ、でも、人変わりすぎじゃね?」

「まあ、出航時は艦隊の指揮権があるあいつに責任があるからな、あいつなりに指揮官っぽくしたいんじゃね?

 まあ、一番指揮官らしさが求められる戦闘時は素に戻るけど。」 

「マジか。」

「まじだ。

 あいつ、真面目な優等生に見えてアホだから。」


 すると、2人の会話を聞いていたルリが少し企むような顔でリーゼをよぶ。


「ねぇ、リーゼちゃん、ここの男子共がマジマジうるさいんだけど。」

「まあ、悠人は初めてですし。」

「それがさぁ、どうもリーゼちゃんが多重人格だとかアホだとかサディストだと・・・か・・・・・・」

「あ、おいっ!

 ちょっと待て、最後のは言ってないだろ!」

「そうだ!」


 しかし、悠人とリューヤの訴えが聞き届けられる事は無かった。

 リーゼは、目が笑っていない笑顔で2人に歩み寄る。


「で、設楽竜也君、誰かに操艦変わってもらってね?」

「いや、でも。」

「いい?」

「は、はい。」



 そして、数30分後、2人は30人でが生活して管理するには大きすぎる甲板の掃除をしていた。


「なあ、掃除30人で出来るのか?」

「いや、普段はホムンクルスが勝手にやってくれるんだが、さっきリーゼに聞いたら機関科の奴らを脅s・・・お願いして掃除用のホムンクルスの生成を一旦止めているらしい。」

「その、ホムンクルスは誰が使うんだ?」

「強いていえばこの船自体だな。  

 魔導機関の術式の一つになってる。」

「なるほど、で、俺達いつまでやるんだ?」

「さあな、リーゼの気が済むまでじゃないか?」


 2時間ほどたったとき、ふと見上げると明らかに見たことがない人たちが掃除しに来た。


「おい!リューヤ!

 この人たちなんだ!?」

「おっ、ホムンクルスだな。

 って事は・・・・」


 ホムンクルス達に続いて、リーゼが甲板に降りてきた。

 

「二人とも、反省しましたか?」

「「はい」」

「では、艦橋に来てください。」


 そう言うと、リーゼは戻っていった。


 そして、2人が艦橋に戻ってから特に何事もなく1日が経過していた。

 その時、艦橋の通信機がなる。

 ランプは艦内通信をさす緑だ。

 通信員のユウキがスピーカーに繋ぐ。


『こちら、アメ_______________トーン号、現在、襲撃を受け転覆、至急救援を!

 繰りか_____リカ客________ストーン号、__________撃を受け_____________援を!』

 しかし、この後、リーゼは何も言わなかった。

 

「位置はどのへんなんだ?」


 悠人の質問に、リーゼではなく記録員のシズクが答える。


「ハワイ諸島西南西1600kmですね。」

「じゃあ助けに」

「無理です。」

 

 悠人が言い終わらないうちに却下される。


「なんでだよ!

 学園は本土から東に2000km離れてるんだろ?

 で、ハワイ諸島西2500kmまで行くならハワイから行くより早く着けるだろ」

「はい。」

「なら!」

「・・・」

「悠人、やめろ。」


 悠人を止めたのはリューヤだった。


「リーゼもやりたくてやってるんじゃないんだよ。

 多分、リーゼだって救助に行きたいはずだ。

 でもな、俺達は表の舞台に立てないんだよ。

 それは、理解してくれ。

 きっと、ハワイから向かってるはずだ。」

「・・・・・進路そのまま、目的地へ向かう。」


 リューヤが話終ったとみたリーゼは、そう言った。

 悠人には、その声に後悔が感じられた。

 しかし、悠人はあることに気がつく。


「ちょっとまて、行ったほうがいいんじゃないか?」

「だから、悠人。」

「違う、さっきの通信、もう一回流せるか?」

「え、うん。」


 再び通信の録音が流れる。


『こちら、アメ_______________トーン号、現在、襲撃を受け転覆、至急救援を!

 繰りか_____リカ客________ストーン号、__________撃を受け_____________援を!』


「何か気が付かないか?」

「いえ、特には。」


 リーゼは気がつかなかったが、ルリは気がついた。

 

「あっ、襲撃ってもしかして・・・」

「そうだ、確認する価値はあるんじゃないか?」

「なるほど。

 リーゼ、どうする?」

「わかりました。進路変更、確認に向かいます。

 ほかの船にも伝えてください。」

「わかりました。」


 ユウキが通信をしようとしたとき、また通信が入った。


「また通信です。

 オープンチャンネルに繋ぎます。」


 すると、いくつかの通信が入ってきていた。


『こちらハワイ基地、こちらハワイ基地、未確認勢力の攻撃を受けている!

 至急、増援を!

 こちらハワイ基地、こちらハワイ基地、至急増援を!』

『未確認勢力の攻撃を受け大破!救援を!』


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