007 資料の山
「あ、リーゼちゃんおかえり〜。」
金剛に入ってすぐ、悠人とリーゼは歩いている2人の女子に会った。
「ルリ、ただいま。」
「で、これが噂の新人君?」
「そうです。
明日の演習から副長として仕事をしてもらうので、困っていたら助けてあげてね。」
「ほーい。
よろしく!
私は、砲術長のルリだ。
リーゼちゃんや君と同じで艦橋にいる事が多いからなんでも教えてやるぞ。」
「俺は悠人だ。
なんにもわかんないから、いろいろ聞くと思うからよろしく。」
悠人の自己紹介をきいて、ルリはちょっと苦い顔をした。
「なあ、リーゼちゃん。
コイツ、ほんとに大丈夫なのか?」
「え、えぇと。
大丈夫。
・・・
だと思います。」
「何も知らない人が副長ねぇ。
ま、私的には面白くなりそうでいいけど。
それじゃ、まだ弾薬の点検途中なんで、またね!」
「はい。お願いします。」
ルリとわかれた後、悠人はリーゼに疑問をぶつけた。
「リーゼ、なんでみんな日本名じゃないんだ?
それに、苗字も言わないし。」
「ああ、みんな、こっちに来てからの名前ですよ。
まあ、大体の人は昔の名前をそのまま使ってるんですけどね。」
「なるほど。
じゃあ、俺は悠人でいいのか?」
「はい。大丈夫だと思いますよ。」
「それと、もう一ついいか?」
「はい、何でしょう。」
「さっきから女子しかいなくね?」
「それは、魔法適性が高いのが女子の方が高いからです。
もちろん、男子もいますよ。
でも、元々数が少ない上に、多くが整備の方に回っているのでうちの船にも悠人を入れて5人しかいません。」
「5人!?
えっと、この船には何人乗ってるんだ?」
「悠人をいれて30人ですね。
最低20人で運用できるように設計されてますから。」
「こんなでかい船が20人で動くのか?」
「はい。
かなり自動化されていますから。」
悠人は、また少し不安になった。
船の中に5人しか男子がいないという事は、その5人と仲良くなれなければ男子のなかで孤立するというのだから仕方ないが。
2人が艦橋につくと、ルリを含めて男子1人と女子2人がいた。
「皆さん、点検は順調ですか?」
「もちろん!水雷科は問題ないよ。」
「こっちも大丈夫だ。」
「砲術科、問題ないよ〜。」
「それと、機関科と主計科、衛生科も大丈夫だって。」
「ありがとうございます。
じゃあ、新しい副長を紹介するので、全員を集めてください。」
「りょーかい。
私、やっとくよー。」
ルリが館内放送を始めたあと、悠人に艦橋の男子が話しかけてきた。
「俺はリューヤだ。航海長をやってる。
艦橋の仲間になるからお互い仲良くしようぜ!」
「よろしく、リューヤ。
声かけてくれて嬉しいよ。
正直、友達になれるか不安だったからさ。」
「じゃ、その心配は無駄だったな。」
5分後、全員が甲板の一番砲塔の前に集合していた。
「えー、皆さん、明日から副長になる悠人です。
皆さん、よろしくお願いします。」
「ちょっ、リーゼ、それ俺のセリフ!
という事で、悠人だ。
まだ何も知らないけど、頑張るのでよろしく!」
ほかの人同様、悠人の状況と役職にざわついたが、次の瞬間にはざわつきはなくなっていた。
「ま、うちの艦長は天然入ってるとこあるけど、いざという時にはしっかりしてるから大丈夫でしょ。」
「リーゼちゃんだもんねぇ〜。」
結局、リーゼに天然が入っているということと、リーゼへの信頼から認められた悠人だった。
「という事で、明日の朝まで自由時間にします!」
「よっしゃー!」
「やったー!」
「なにしよっかなー。」
甲板上は色々な会話が飛び交っていた。
「じゃあ、俺も1通り見て回ろうかな。」
何気ない発言だった。
しかし、悠人が自由時間を迎える事はなく、リーゼに艦橋に連れてこられていた。
「えーと、リーゼ、何をするんだ?」
「それはですね、これが全員の名簿と役職、それから、この船に関することの資料です。」
「はぁ。」
「前の方から重要度の高いことがのってますから、できるだけ読んで覚えてください。」
「はぁ。
・・・
はぁ!?」
確かに、普通に考えれば大事な事だ。
悠人もそれは理解していた。
しかし、問題はその資料の厚さだ。
普通に辞書より厚い。
「いや、無理だよ。」
「大丈夫です。できる所まででいいですから。
でも、意外とあっさり終わりますよ。
私だってすぐ終わったんですから。」
「どんな速さだよ!?」
「これくらいです。」
リーゼが資料を手に取る。
そして、資料をめくり始めた。
「何してんの?」
「読んでます。」
「いや、世間ではそれめくるって言うんだよ。
少なくとも、俺のとこはそうだった。
内容理解しなきゃ意味ないだろ!」
「いえ、ちゃんと全部理解してますよ?」
「あ〜〜。
なんでもないわ。
もういい。うん。」
「では、頑張ってください。
船の武装に関しては、今回の演習でわかると思いますから、全員の名前や艦内地図、役職の分担、副長の仕事を覚えてください。」
「わかった。」
悠人は、リーゼが、立ち去った艦橋で1人膨大な資料を読むのであった。
ご意見、ご感想お待ちしております!
次回、資料会になります。
そして・・・
次次回、遂に金剛出航!
そして、物語が大きく動き、本格的に話が始まります!