002 ファンタズム
本日、二本目です!
「だれですか(だ)!?」
2人は、声の主を探し、ハモってしまった事に顔を見合わせて少し顔を赤らめた。
「私じゃ。」
2人が声の方を見ると、そこには銀髪の少女がいた。
「この魔力・・・
普通ではありません。
闇魔術ですか?」
「ま〜あ、そう考えるのが普通だな。
だが、それは違う。
私の力は単純にマスターの魔力が強すぎる故の力。
闇魔術などという外道の技ではないのじゃ。」
謎の少女とリーゼが会話を進める。
「では、あなたは魔術によるホムンクルスという事ですか?」
「その質問の答えは、否じゃ。」
「では、使い魔に身を堕としたと言うのですか!?」
「それも否だ。
ここまで答えればわかるだろう?
ホムンクルスでも使い魔でもなく主を定め、魔法を操る存在。」
「っ!?
まさか、レリック・グリモワール!?」
「ご明察。
なら、ここで自己紹介と行こうか。
私は、グランド・レリック・グリモワール、ファンタズムじゃ。
悠人の婚約者じゃ。」
「はぁ!?」「こ、婚約者!?」
「冗談に決まっているだろう。
悠人の契約魔導書、いや、その、最有力候補と言うべきか。」
「ちょっと待て、俺にも分かるように説明してくれ!!」
悠人は、訳のわからない2人の会話に待ったをかけた。
「お、おぉ。
すまんな。出てきてそうそう話が出来る奴がいたもんでつい。
で、悠人。
どうだ?私と契約してくれるか?」
「契約?」
「そうだ。私の主になるのじゃ。」
「いや、でも、まだ何も知らないし・・・」
すると、ファンタズムが泣き出した。
「・・・うぅ。
そ、そんなぁ。
そしたら、私・・・
消えちゃう・・・」
この事に焦ってた悠人は、ファンタズムのキャラが変わった事に気が付かなかった。
「わ、わかった、主でもなんでもなってやるから、な?
だから、とりあえず泣くな!」
「・・・うぅ、私のマスターになってくれますか?」
「ああ、なる。なってやるから。」
すると、ファンタズムはニヤリと笑った。
ファンタズムの頭上から魔法陣が展開される。
そして、ファンタズムが発光しだした。
「マスターの契約受諾を承認。
条件、オールクリア。
プロセス実行中。
全プロセスを完了。
オーダーを実行。
契約を承認。マスターを我が主と認めます。
以降、契約に従いマスターと行動を共にし、守護します。」
辺りが静寂に包まれる。
この静寂を最初に破ったのはファンタズム本人だった。
「悠人、一つだけ忠告しておく。
人をあんまり信じすぎるものじゃないぞ?」
この時、初めて気がついた。
「あっ!
お前、嘘泣きだったろ!」
「今更もう遅い。
私は、悠人の契約魔導書になったからな。
まあ、今までと何ら変わるまい。」
「いや、少なくとも普通の高校生じゃなくなるよね!?」
「まあ、こっちで魔法師の高校生はいないだろうなぁ、ほとんど。」
すると、今度はファンタズムと悠人に放置されていたリーゼが口を開く。
「悠人さん。
残念ながら、あなたはたった今その魔導書と契約した事で、正式に魔法師となりました。
来るなとは言いませんが、この世界で生活させる事は出来ません。」
「おい、ファンタズム。
さっき、この事を言ったか?」
「うっ、い、言ったんじゃないか?」
「はぁ、で、どうなっちまうんだ?俺は。」
「ここで死んでいただきます。」
「リーゼといったか?
私は、悠人の契約魔導書だ。
殺させると思うか?」
「そうですね。
少なくとも、私1人でグランド・レリック・グリモワールを相手には出来ません。
そこで、もう一つの選択肢です。
ビッスラーン大魔導学園への入学です。」
「・・・はぁ、もう、それしか選択肢がないな。
わかった。ここよりは面白そうだ。
案内しろよ。
その、ビッスラーン大魔導学園へ。」
「いいでしょう。
そこの魔導書もいいですね?」
「ああ。
私が、悠人を止める時は、そこに明確な危険がある時と、その結果が望まれない時だ。」
「おう。
何が何だかさっぱりわからないが、よろしくな、ファンタズム。」
「いいだろう。正直、悠人の理解力には驚いた。」
「では、ビッスラーン大魔導学園へワープします!!」
リーゼが手を上に伸ばすと、そこに魔法陣が出来た。
「目標、ビッスラーン大魔導学園、次元転送室、座標固定、時空間の安定を確認。
ワープ!」
一瞬、3人の視界がグラッと歪み、再び焦点があった時には、林の中ではなく、古代遺跡の様な場所にいた。
「え〜と。
申し訳ありません。」
「ん?」
「座標、間違えちゃいました・・・」
リーゼの言葉に、絶句する悠人とファンタズムだった。
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