庶民
「クーくんと学校ー♪クーくんと学校ー♪」
陽気なリズムを奏でながらフレデリカはステップをしている。
「お、おい!フレデリカあんまりはしゃいでると誰かにぶつかっ・・・って!!!」
ヒヒーン!!!キィイィィィ!!!
「キャァ!?」
フレデリカはステップした勢いのまま道路に出た瞬間馬車に引かれそうになった。
だが、寸前で手綱を持った運転手が気づきなんとか引かれずに済んだ。
「急に出てきたら危ないだろうがっ!!!」
「あ、あう・・・」
フレデリカは急な事に驚き戸惑って、狼狽えていた。
「ご、ごめんなさい!ほ、ほらフレデリカも謝って!?」
「ご・・・ごめん・・・う、うえーん!!!」
クラマは間に入り謝り、フレデリカにも謝らそうとするがフレデリカは座り込み泣きはじめてしまった。
「ちっ・・・これだからガキは嫌なんだよ・・・」
運転手は機嫌悪そうに舌打ちをし頭を掻いていたとき馬車のドアが開いた。
「急に止まってどうしたの?早く行かないと試験に遅れるでしょうが。それともクビになりたいのかしら?」
「い、いえ!お嬢様!ですがこいつらが道に急に飛び出してきて・・・」
出てきたのはこれぞ貴族という出で立ちの女の子だった。
金髪ツインテールの女の子は路傍の石を見るような目で俺とフレデリカを見ていた。
「ここは馬車が走る道なのです早く退いてくださるかしら?それとも、庶民のような貴方達は言葉さえ分からないのかしら?」
(やっぱり、こういうお約束みたいなやつはいるんだな・・・)
「なに?そんなにじろじろと見られては気持ち悪くてしょうがないですわ!それとも、何か言いたいことでもあるんですの庶民の分際で!?」
確かクラマが着てきた服はお世辞にも王子が着るような服ではなく、そこら辺の子供が着るのと同じような服だ。これは悪目立ちしないようにとマリアが見繕ってくれた物で、庶民に見られても全くおかしくない。
「い、いえ・・・ほら、フレデリカ立って?道に飛び出して本当にごめんなさい。」
「フンッ!」
ツインテールは鼻息を荒く一つ吐くと馬車の中に戻っていき、馬車はその場を去っていった。
「う、うう・・・」
「ほら、フレデリカ大丈夫か?あー、膝から血が出てるな痛かったろ。今治してやるからな、回復!これで大丈夫だろフレデリカ?」
「うん・・・クーくん、ごめんね・・・」
「ハハハ、俺は大丈夫だよ。」
「だって、クーくんは本当は王子様なのにクーくんが謝るなんて・・・」
「そんなの関係ないよ。悪いことしたら謝らないとな。」
「クーくん・・・ありがとう!!!」
フレデリカは笑顔になりクラマに抱きついた。
カーンカーンカーン
「フレデリカ!まずい!試験が始まっちゃうぞ!」
朝の鐘が鳴りクラマはフレデリカをそっと引き離し、フレデリカを急かした。
「待ってよ!クーくん!!!」
「試験会場はこちらでーす!!!」
学院に着くと案内係の人がボードを掲げ試験を受ける人を集めている最中だった。
「ハハハ、クーくん間に合って良かったね!」
「はぁ、はぁ、危なかったな・・・」
やばいと思い全力で走ろうとしたが鍛えているクラマとフレデリカでは速さが余りにも違い、しょうがなくフレデリカを背負いながら走った。
フレデリカも女の子だからか最初は抵抗があったものの、俺の走りの速さがジェットコースターに乗ってるようで面白かったのか後ろでキャッキャッ笑っていた。
なんとか間に合って良かったが、試験を始める前からぐったりだ。
「ほら、クーくん!早く行こうよ!?」
「おう・・・」
疲れた体に鞭を打ちながらクラマはフレデリカに手を引かれ試験会場に向かった。
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