三ヶ月
「師匠!短い間でしたが約三ヶ月お世話になりました!」
クラマは師匠であるネリベルに深々と御辞儀をする。
ネリベルのお陰で技術的にも精神的にも大きく成長できた。
城に引き込もっているだけでは決してここまで成長出来なかっただろう。
「坊やが居なくなるのは寂しいわね。やっぱり、女性がこんな森に一人なんてよくないかしら?」
「まさかですけどそんなこと言って、酒のあて目当てで言ってるんじゃ無いですよね師匠?」
ネリベルの顔をジッと見つめると露骨に目をそらして。
「そ、そんなことわよ?坊やは何を言ってるのかしらね。」
「師匠、目が泳いでますよ?」
「うるさいわね!弟子なんだからしょうがないでしょ!師匠の言うことは絶対なんですから!」
「わかってますよ。それよりもあんまり、お酒飲み過ぎないでくださいよ?体壊しますからね。」
「あーもう!うるさいわね!早く行っちゃいなさいよ馬鹿弟子が!早く行かないと凍らせるわよ!」
「す、すいません!じゃあ、師匠ありがとうございました。」
ペコリと御辞儀をしてクラマは扉に手を掛けた時。
「待ちなさいクラマ!」
「えっ!はい?」
初めてネリベルに名前を呼ばれ、驚き待っていると。
「クラマにこれをあげるわ。」
ネリベルはそう言うと大きな胸元からペンダントを取りだし、クラマを抱き締めるように前からペンダントをかけてくれた。
ペンダントの中心には親指大の蒼く輝く石があり、それを中心にして金で装飾されている。
「師匠これは?」
「御守りみたいな物よ。要らなかったら返しなさい。」
「い、要ります!ありがとうございます!」
ネリベルは先程までの顔と異なり、急に真剣な顔になった。
「クラマ貴方は私が想像してた以上に強くなったわ。きっと、貴方が望む事が実現出来るぐらいわね。でもね、その力は守るだけの力ではないの。貴方の守りたいと言うのは貴方の一つのエゴなのかもしれない。守られている女の子は実は一緒に頑張り、未来を切り開きたいのかもね。フフフ、こんな難しい事言っても10歳の坊やには分からないかしらね。」
「一緒に・・・」
「言っていることが年寄りくさくなっちゃったわね。忘れなさい。」
「い、いえ。それよりも師匠なんで女の子だってわかったんですか?」
「そんなの分かるに決まってるじゃない。私も、女・の・子・だからよ!」
ネリベルは慣れない感じでウィンクをしようとしたせいか両目をパチッと閉じた。
「ププッ!師匠できてない・・・ププッ!!!」
必死で笑いを堪えようとしているが、室内は徐々に温度が下がってきている。
「坊や、もう言い残す事はないかしらね?」
「あ、ありますから!冷気を出すのは止めてください!」
「はぁ、もう行きなさい。どうせまた直ぐに会えるんだろうし、ちゃっちゃと帰りなさい。」
「そうですね、また会えるでしょうし帰ります。師匠ありがとうございました!」
師匠は鬱陶しそうに手を降り送り出してくれた。
森を出ると馬車が止まっており、中にはリリスがのっていた。
リリスはとても心配していたのか体をペタペタと触り「大丈夫?大丈夫?」としきりに聞いてきいたが、大丈夫と答えると安心したのか少し涙目になっていた。
実の姉に預けただけなのにそんなに大袈裟になるものなのか母親とは分からないものだ。
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