熊
「グルルルゥゥゥ!!!」
出てきたのは三メートルを超える大きな迷彩色の熊だった。
クラマとは倍以上の体格差があり、非常に興奮しているように見える。
「や、やぁ。元気してる?」
「グヴゥゥゥゥゥ!!!」
クラマは生きている魔物を見るのは初めてで、もしや魔族かと思い一応話かけるが全く通じる様子もなく冷や汗が出始める。
ダッダッダッダッダ!
「ガァアアアアアアア!!!」
「くっ・・・!」
クラマに向かい雄叫びをあげ凄い勢いで襲いかかってくる。
ビュンッ!!!
「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
熊の鋭い爪はクラマを捉えること無く空を切り裂いた。
熊の目は今だにクラマを捉え続け、再び襲いかかろうと体制を整えているように見える。
パサッパサッ
少し離れた場所から、その様子を一匹のコウモリが伺うように見ていた。
「フフフッ、まさかミリタリーベアの寝床に置いてくるなんてアルバは酷い事するわね。」
「ピー!!!」
ネリベルはコウモリの目から水晶越しにクラマの様子を見て、隣にいるアルバと呼ばれた1m程の大きな鳥を一撫でした。
「ミリタリーベアはこの森の主みたいな魔物だからねぇ。ランクにすればSランクが妥当だけど坊やも今は同じぐらいの強さのはずよ。」
ネリベルは、グラスに酒を注ぎ一口飲み。
「フフッ、坊やは生き死にがかかったこの状況でどうするかしらね。」
弟子の生死を賭けた戦いをショーを見るかのように楽しんで見ていた。
ミリタリーベアとクラマは一進一退の攻防を繰り返していた。
魔法の耐性があるのか離れた所から打つ魔法は効いてるように見えず、近付き剣での攻撃を仕掛けようとするがミリタリーベアも接近戦が得意なのか近付こうとすると鋭い爪で牽制し、一撃をクラマに入れようとしてくる。
「はぁ、はぁ・・・くっそ!これじゃあ、埒があかないぞ・・・」
ブンッ!ピッ!
「あぶねぇ!」
ミリタリーベアの爪がクラマの服を掠め切れていた。
「グアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
ミリタリーベアはクラマと距離をとり一吠えした。
そうするとミリタリーベアの体がどんどんと薄くなり、見えなくなっていく。
「嘘だろ!迷彩はその為かよ!」
透過したミリタリーベアは見えなくなるが、逃げた様子はなく今だに殺気を感じる。
ブンッ!ガギンッ!
「くぅううううう!!!」
ドンッ!
爪の空気を切り裂く音に反応し、剣でガードしたがミリタリーベアの力は圧倒的で吹き飛ばされ後ろの木に体を打ち付けられた。
「ゴホッ、ゴホッ!いっつううぅぅぅ!!!」
ダッダッダッダッダ
走ってこちらに向かって来る音だけ聞こえてくる。
剣は先程の衝撃で弾かれ、身を守るすべは血技しかなくなったクラマは急いで腕を噛みちぎった。
「血技!!!」
クラマには見えないがミリタリーベアの爪はもうすでに目の前まで迫っていた。
お読み頂きありがとうございます!