置き去りの少女
最近寒すぎて風邪気味な私です。
皆さんも風邪やインフルエンザにはお気をつけ下さい。
「だ、大丈夫かな・・・」
「どうだろうなー、そろそろ俺が居なくて騒いで探しててもおかしくはないと思うんだけどな。そんなことよりも、姉ちゃんがここに居なくて安心したよ。」
「お姉さん?」
「うん、アリスって言うんだけどお転婆でね。いつも、俺のこと殴ってくるんだよ。」
「フフッ、そうなの?」
二人になって落ち着いたのか少しづつ笑顔を見せてくれるようになってくれた。
「私は一人っ子だから、あなたが羨ましい。そう言えば、お名前聞いてなかった。」
「俺はクラマっていうんだ。」
「クラマくんだね。最初は慌てちゃってごめんなさい。私直ぐに慌てちゃって、よくお母さんに怒られるの。」
「そうなんだ、俺の姉ちゃんもよくおしとやかにしなさいって怒られてるんだよ。」
「クラマくんのお姉さんと似てるのかな?」
「いやいや!カレンに比べたら姉ちゃんなんて・・・」
「クラマくんは家に戻れるといいね。でも私はたとえ助かったとしても、お母さんとお父さんの所には帰れないと思うの。」
鳥人族は渡り鳥みたいなもので、固定の家は持たない。
一つの場所に留まるのは約三日間、水浴びをしたのは飛び立つ前だったらしく捕まってから既に一週間が経ったそうだ。
群れとして移動するので、例え一人が居なくても移動する。
それは親と子が離れ離れになるのを意味し、例え再会できるとしてもまた戻ってくるかもしれないのは一年以上後で移動ルートが変わるのもしばしばらしい。
下手したら、もう二度と会うことはないかもしれないとカレンは涙を流さなかったが声を震わしながらに教えてくれた。
もしも、脱出出来たとしても5歳の少女に何ができようか。
また拐われるか、道端で生き絶えてしまうのは目に見えている。
最初に会ったときに「何でもします」と言うのは売られずに出来る限り誘拐犯達に媚びを売り続けようとしたのだろう、彼女なりの生きるための処世術として。
それを考えるとクラマは腹ただしい気持ちになるが、それと同時に自分の力の無さに嫌気が差した。
(力を貰っておいて何も助けられないなんて。)
チートなんて自分が楽に生きるためのものだと考えていた。
しかし、目の前で泣いている女の子を助けられないなんて無様でしょうがなかった。
「なんとかなるなんて言ってごめん。絶対になんとするからな!」
カレンは呆気に取られたように頷き微笑んだ。
「チュー、チュー」
「ほら、これ今日の飯だぞー」
「クラマくん最近ネズミにご飯与えてるけどなんでなの?」
クラマが誘拐されて三日が経ったがまだ売られずにいた。
毎日一食と水分が与えられる。
あまり痩せすぎると見た目が悪く売れないそうで、質素だが食事にありつけるのはせめてもの救いだった。
そして俺は三日間ネズミに食事を分け与え続けている。
「ねぇ、どうしてなの?」
「これは、作戦だよ。」
「作戦?」
「うん、これが今俺が出来る唯一の作戦だよ。」
カレンは胡散臭げな顔で俺を見て「ふーん」と一つ言っていた。
夜
見張りの巡回の連中も子ども相手ということで三時間に一回位しか回ってこない。
その隙を見てクラマはネズミに話かけていた。
「シロ、このにおい覚えたか?」
「チュー!」
シロと呼ばれたネズミは任せろと言わんばかりに一鳴きする。
「そうか、そうか!後はこの布を首に巻いてっと・・・よし!シロ!お前が頼りだ!頼んだぞ!」
「チュー!!!」
シロは勢いよく走り出し牢屋を抜け外へと向かっていった。
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本格的に繁忙期に入りまして更新が遅れます申し訳無いです。