牢屋
ブンッ!
ドサッ!
「ゴホッ、ゴホッゴホッ!確か俺は殴られて・・・ここは!?」
「おい、ガキ!大人しくしとけよ!」
フードを被った者が言い放ち、カギを閉め立ち去った。
「ちょ、ちょっと待てよ!」
俺の言葉は暗闇に飲み込まれていった。
「はぁー。どうすんだよこれ・・・」
クラマは途方に暮れていた。
魔法もやっと初心者を越えた辺り、脱出する術などない。
ましてや、三歳の筋力では戦闘になったら大人には敵わないだろう。
「はぁー」
もう何度目か分からない溜め息ついたとき後ろから物音がした。
ガサッ
「誰だ!」
「ヒッ!ごめんなさい!ごめんなさい!何でもしますから!」
「俺はアイツらじゃないよ。安心してくれ。」
牢屋の片隅に体育座りで縮こまっている子と目が合った。
「ごめんなさい!」
その子は背中にある羽で身を隠すように守ったが、顔は暗くよく見えなかったが声は可愛らしい女の子の声で特有の目なのか光って見えた。
「君は鳥人族なのかい?」
「はい、鳥人族でごめんなさい!」
「いや、謝らないでくれよ。」
「あ、謝ってごめんなさい!」
「もう、いいや・・・」
「ごめんなさい!」
「それよりも、ここは何処だか分かるかな?」
「分からないんです、ごめんなさい!」
「そ、そうか。君以外は捕まってないのかい?」
「私以外の人は、みんな何処かへあの人達に連れてかれちゃったんです。」
鳥人族の女の子は泣き始めた。
「大丈夫かい?」
近くへ寄り添い頭を撫でようとした瞬間ビクッっと反応があったが、安心したのか徐々に涙と呻き声は収まってきた。
「じゃあ、カレンは湖に遊びに来た時に捕まったのか。」
彼女はカレンと言い、俺よりも二歳年上の五歳らしい。
カレンは親と一緒にアルベニアの近くにある湖に水浴びをしに来たらしく、その時に親とはぐれて誘拐犯に捕まったそうだ。
袋詰めにされてちょっとして此処に入れられたらしいから、湖に近いだろうという情報は得られた。
「私は珍しいから貴族に売り払うから時間がかかるんだって。」
「奴隷制度はアルベニアは撤廃したはずだぞ!」
アルベニアはルドルフの祖父の時代は奴隷制度があったが、ルドルフが国王になってからは撤廃された筈だった。
アルベニアと隣接した国、バールーン王国は昔から犬猿の仲の国であった。
人間達が住まう国で未だに奴隷制度があり、人間だけではなく魔族をも奴隷にしているとマリアに聞いた事があった。
「多分今回の犯人は人間もしくは、バールーン王国と通じている魔族だろうな。」
「ヒッ!に、人間!?」
「多分だけどね。でも貴族に売り払うとしてもアルベニアでは出来ないはずだ。だとしたらバールーン王国だと思うんだ。」
「や、やだよぉー」
カレンはまた、目に涙を浮かべ羽で身を守るように丸まった。
「大丈夫!きっと何とかなるから、泣くなよ。」
「ホントに?」
「ああ!」
「なら泣かないように頑張る!」
カレンは、涙を手で拭きこちらを見てぎこちないながらも笑顔を向けてくれた。
近くで見たその笑顔は儚いながらも、とても可愛らしかった。
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