潜入
「ね、ねぇ!ホントにこんな方法で行けるの?」
「行けると思うけど、姉ちゃん声でかいよ。静かにしないとばれちゃうよ。」
「ちょっと!お尻触らないでよ!」
「狭いからしょうがないじゃん!大体姉ちゃんみたいな子どもの体触っても嬉しくないよ!」
ボコッ!
「子どもってあんたに言われたくないわよ!」
「痛いって!だから静かにしてって!」
「なんか音がしたか?」
「いや、気のせいだろ。」
「あぶねぇ・・・姉ちゃん気をつけてよ・・・」
「悪かったわよ・・・」
「城を出るまでの辛抱だから我慢してくれよ?」
「分かったわ・・・」
俺の作戦はこうだ!
城には毎日決まった時間に食糧などを業者によって搬入される。
その際には入る時には厳重な荷物検査と身体検査が行われるが、出るときには簡易的な検査で出られるのだ。
その際に荷物に紛れて城下へと抜け出そうという作戦だ。
そして俺達は、現在馬車に積まれている木箱の中に潜んでいる。
一番大きかった木箱は魚臭くてとてもじゃなく入ってられないと判断した。今入っている木箱は二人で入るには窮屈だが、果物が入っていた木箱だったのか甘ったるい臭いが充満していた。
「身体検査させて下さいね。」
外から声が聞こえてきた。
「そろそろ出るのかしら?」
「たぶんね。動きだしたら、15分ぐらいしたら降りよう。」
「15分って何よ?」
「あー、ちょっとしたら降りよう。」
「分かったわ!」
この世界は時間に対してとてもルーズなのだ。
朝昼夕不確定に鳴る鐘を目安に人々は動いているらしい。
この地域だけなのか分からないが春夏秋冬があり、日の出入りの時間も変わり鐘が鳴るのも曖昧なのだが誰も疑問には思っていないみたいだ。
「大丈夫ですね。じゃあ開門しますね。」
外から開門の声が聞こえドキドキしている中、思いもよらない声が聞こえた。
「ちょっとその馬車お待ち下さい!!!」
「この声はマナ!?もしかして気付かれたのかしら・・・」
「姉ちゃん!いいから静かにしてろって!」
アリスは頷き口を手でふさいだ。
「ちょっと荷物検査させて頂きますね。」
「ええ、どうぞ。」
コツコツ
コツコツコツコツ
足音がだんだんと近付いてくる。
コツコツコツコツコツコツ
コツ!
足音が俺達のいる木箱の前で止まる。俺達の心臓も一緒に止まってしまいそうだ!
「あれー?何故かアリス様が居ると思ったんですけど、気のせいだったんですかねー?」
コツコツコツコツコツコツ
コツコツコツコツ
コツコツ
「「ふぅー」」
二人で溜め息をついているところで外から「行ってよーし!」という声が聞こえてきた。
マナの勘といい、この世界の女性の第六感はヤバいと思ったクラマだった。
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