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助けたのは

作者: いさまた

高校の帰り道、自転車を止め立ち往生している同じ高校の制服を着ている女子をみかけた。どうやらチェーンが外れて直そうとしているがうまくいってないようだ。僕は困っている人を見るとほっとけない性格で今回も助けることにした。

「大丈夫ですか。」

急に話しかけられ、びくりと女子が驚き、振り返り僕の顔を見る。

「ちょっと自転車がね……。」

そう言い外れている自転車のチェーンに目線を向けた。僕も屈み外れているチェーンをじっくり見ていじりだした。女子はそんな僕を不安そうな目で見つめていた。その視線を背に作業すること5分。

「どうかな。」

スタンドを立てた状態で女子は漕いでみた。

違和感なく自転車のタイヤが回り女子は安心したのか硬かった表情が緩み笑顔をみせた。

その笑顔を見て僕は修理できて良かったと感じた。

「じゃあね。」

そう言い立ち去ろうと自転車のスタンドを蹴りまたがった。

「あ、待ってください。」

女子も慌ててスタンドを蹴り、またがった。

「私もこっちの方面なんですよ、一緒に帰りませんか。」

帰り道で会ったら同じ方向なのは当然だった。しかも田舎だったためしばらく一本道が続くのだ。そのため自転車を直している途中何回も同じ高校の生徒を見かけた。その中に同じクラスの友達もいた。おそらくこのまま一緒に帰ったら、また同じ高校の生徒とすれ違うことは容易に想像できた。しかし女子の誘いを断れない僕は一緒に帰ることにした。

「私、2年6組の中咲 美花です。」

僕はその名前を聞き、驚いた。中咲さんの噂をよく聞いていたからだ。クラブでは持ち前の俊敏性とリーダーシップを生かしバレーボール部を関東大会に連れていった。クラスでも委員長を務め生徒だけではなく先生からも好かれているという。実際見ると確かに優等生のオーラがあり、行動一つ一つに無駄がない。また噂のタネになる納得のいく可愛いさで、クラスの男子は気になって仕方ないんだろうなと思った。

「僕は2年5組の御影 優です。」

「隣のクラスなんだ。」

「そうみたいですね。」

同い年だが中咲さんの噂を聞いていたためか敬語になってしまった。

「タメで全然いいよ、同い年なんだから。」

「りょーかい、ところでいつもこの坂を自転車で登ってるのか。」

坂を登りながら言ったため言葉に力が入る。

「そーだね、体力つけるためにも」

坂が急すぎて先の道が見えない。自然と体力のある中咲が前になり僕が後ろからついていく形になる。体力のある中咲さんでも途中から辛くなったのか立ち漕ぎをしだした。そのためどうしても、ちらちらと布切れが僕の視線に入る。横に避けてもやはり目に入ってくる。いろんな意味で疲れた坂を僕は降りて登り終えた。

「体力なさすぎでしょ」

「僕は運動部じゃないんだから仕方ないでしょ。」

息を切らしながらそう言った。

「いくら何でもなさすぎだよ」

そんな他愛のない言葉を中咲さんと話すことができ、僕は人生で一番の幸せを感じていた。そんな幸せの時間は10分で終わってしまった。惜しい気持ちを胸に秘め僕たちは別れた。それ以来は別クラスということもあり何もなかった。

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