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焼肉GOD  作者: ちょせ
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飲食店主人の帰還願望

しばらくの間、ショウヘイは焼肉ゴッドに通い詰めていた


目的はミナリだと、周囲どころか本人も勘違いしていたが、そのショウヘイは恋心というよりも、望郷の念を募らせていただけに過ぎない


この世界にショウヘイが来て4年目になる


当時24歳だった彼ももう28歳になる


焼肉ゴッドでの何気ない会話


「ミナリさんは教師をされていたんですね」


「そーよ。でも田舎の体育教師だけどね。ショウヘイさんは何をしていたの?」


「僕はただのサラリーマンですよ。三流、いや四流企業の小さな会社でサラリーマンしてました」


「へーショウヘイさんサラリーマンだったんですか。」


「あ、ユキちゃん。そうさ、サラリーマンしてたんだ。この世界に来るまではね」


そんな何でもない日本の会話がショウヘイの心にユキやミナリとの会話からどんどんと望郷の念が募っていった






そしてショウヘイが焼肉ゴッドから足が遠のいていったある日



「なぁナート、俺・・・日本に帰りたいんだって言ったらどうする?」


それはなんの気ない会話だった


「え?ショウヘイさんどこです?にほん?」


「ああ、実は俺・・この世界の人間じゃないんだ。別の世界、そう地球という惑星の日本と言う国から来たんだ」


ショウヘイは打ち明けるー

今まで誰にも、そう、誰一人として話したことのない秘密を


「え!?そうなんですかー。どんなとこだったんですか?」


ナートは思わず、そう切り返した

自身は元の世界で勇者をしていたから、ショウヘイはどうだったのか気になったのだ


「ナート、信じるのか?」


「いや、だってまぁ・・・」


私も異世界から来ているのだから・・・


「まぁいい。それでだ、最近俺は日本に帰りたいと思うようになってきた。だけれども、帰る方法が分からない・・・やはり帰るための手がかりはダンジョンにあるのだろうかと思ってね」


答えはそこにある・・

だが正解は一つではないとショウヘイは考える


「でも・・・無理だよなぁ・・・120層到達までの冒険者の話ではそんな異世界に行ける方法なんてないし」


机の上に置かれたコップには、最近流行り始めたコーヒーがある

ある冒険者がダンジョン内でみつけ、そして飲み始めたらしいということはショウヘイは知っている


そして


そんな豆を、ちゃんと飲めるように挽いたり焙煎などをしているという点からこの世界にない知識の持ち主であるとおおよその予想も出来ていた


つまり、冒険者の中には異世界(日本)から来たものが多数いると言うことだ


ダイダロスにはプリンやケーキもあったしな


およそこの世界に似つかわしくないスイーツは彼に少なくない動揺を与えた

思えばそのころから帰ることを、無意識に考えていたのかもしれない


でもー


帰ってどうするんだ?


確かに・・・・向こうにいる家族は気にならないといえば嘘になる


ただ・・・仕事はどうする?

あれから4年だ、もしも時間の流れが違うとしても少なくない時間は経っているだろうし

ショウヘイ自身も年を重ねている


今現状、こちらでの立場は責任のあるものだ

飲食店だけではない。商人ギルドの長でもある居なくなればそれこそ混乱を招くだろう


「ショウヘイさん、考えても仕方ないよー。帰る方法なんて、それこそ大魔法とかの類か、奇跡ーしかないんじゃないかなぁ」


ナートは、ショウヘイが今にも居なくなりそうな気がして思わず、帰れない理由の念押しの様な事を言ってしまう


「・・・ッ!」


ショウヘイは、考えてはいたが現実的でないその言葉を言われてほんの少し、イラっとしてしまう

その表情を見て慌ててナートはさらに言葉を重ねる


「ええっと、いやダンジョン120層の冒険者にも聞いたんでしょ?でも、可能性がその先にないとは限らないし・・・」



「いや、いいよナート。すまないが一人にしてくれないか」



ナートにくるりと背を向け、ショウヘイはそう言った

後味の悪い、空気がそこに残ったままナートは事務所から出ていった


----------


はぁ、とため息をついてからソシアは言った


「ばかね、あんた・・・そんな事言ったの?」



「だってソシア・・・ショウヘイさんが苦しそうだったから・・・」



はぁ、とまたため息をついてソシアは考える


確かに、ここ数日のショウヘイの様子はおかしい

気づいてはいた。その理由まではわからなかったのだけれど今のナートの話でわかった


帰りたいと・・願い始めている


ナートとソシアの封印をもう一度解けば、送り返せるだけの力はあるだろう。

これでも神に縁のある者だ間違いなく世界を渡れる



だけどそれは下手をすれば永遠の別れになってしまう


でも、それでももしショウヘイに懇願されればソシアはきっと願いを聞き入れてしまうだろう


ナートには申し訳ないけど、それこそが彼の願いであれば・・・



「あのね、ソシア・・・私、ショウヘイを送り返してあげたいんだ。私たちの力ならそれができると思うし」


「ナート!あんた!!」



「ご、ごめんソシア。でもショウヘイさんがソレを望むなら私はー」


涙を流しながらナートは・・ソシアに訴える

ナートを、そっと・・ソシアは抱きしめて


「そうね、私もそう思ってた。ふふ・・・やっぱり私たちは似ているのよね。同じこと考えているなんて」


「ソシア・・・じゃあ・・」


「ええ、でもまだ駄目よ。彼が、本当に帰りたいと願ったなら・・でしょう?まだショウヘイさんは悩んでいるのだから、結論はでていないわ。出たのは、私たちは彼の願いを叶える力があるし想いも同じってことだけ」


「そうだよね、いきなり帰れますって言われてももっと悩んじゃうだけだよね」


「そう言うことね」


二人はギュっとお互いを抱きしめながら、お互いの想いをそっと胸にしまい込んだ



そして事件は起こる


二人の想いとは裏腹に



翌朝、ナートとソシアがいつもの様に事務所に入っていく

いつもなら先にショウヘイがいて、二人におはようと投げかけてくれるのだが


「おっはよぉございまーす」

「おはようございます」


いつものように、二人は挨拶をするがそこに帰ってくる言葉はない


「あれ?ショウヘイさんいない?トイレかなー」


そういってナートはトイレに探しに向かう

トイレにまで押しかける気だ


だが落ち着いていつソシアはゆっくりとショウヘイの事務机に向かうとそこに一枚の書置きがあった




「国に帰る」




そう書いてあった




ショウヘイはいずこともなく、ナートとソシアにも一言もなく



消えた






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