祭りが誰も彼もが好きだとおもうな
ダイダロスを出発して二日
カンザキ達一行は大急ぎで帰ってきた
そして焼肉ゴッドに着いたときに目についたものは・・・
なんということでしょう
以前ボロボロだった店舗の入り口がまるで新築のようにきれいになっているではないですか
店舗内に入ると、以前のレイアウトとは全く違っておしゃれな雰囲気
ワンポイントになる小さな白い花が明るい雰囲気を醸し出しています
その奥の薄暗かった厨房も光の魔石を使った明るい厨房に変わっています
さらには焼き肉用の鉄板がすべて新品になっているではありませんか
「な・・なにがあったんだ?」
カンザキは本当にここが自分の店舗かと一度店の外に出て看板を確かめたくらいだ
二階はそのまま変化はしていないし、キャサリンの店内も変わっていない
カンザキが店内をよく見て調べていると
「お、カンザキ帰ったのか。無事で良かったよ」
「ガルバ!お前も無事に帰れてたんだな」
「一週間牢に入ってたけどな」
「自業自得だろ」
いない間に何があったのか、ガルバは簡潔に教えてくれた
謎の男と女性騎士については正体不明のままだがカンザキにはなんとなく想像はついている
王が訪ねてきたか・・・
そしてもう一つ変わったことといえば
「鹿が結婚した」
ガルバがニヤニヤしながら言った
「はぁ!?急になんでだ!?あいつそんな相手いたか?」
「いやまぁそこはほれ、色々あったんだ。結婚式に行ったけどすごいもんだったぜ。この街のお偉方が一堂に集まっていたしなー」
「いったい誰と結婚したんだアイツは・・・」
その後鹿は新居だなんだと忙しく会えていないらしいから謎のままだそうだ
一度会ってみたいもんだなー
そんなことを考えていると
「カンザキさま、私と結婚しませんか!?」
シアが来て言った第一声がそれだ
すぱーん!
その真後ろからキャサリンが来てシアの頭をはたいてズルズルと引きずられて店内に連れ去られた
そしてすさまじい怒鳴り声が・・・
「お前さんも大変そうだなじゃあ今配達中だからよ、また夜に寄るわ。あとオークションで買った酒もちゃんとあるから安心しろ」
そう言ってガルバは馬車に乗って走り去る
そうか、この街は馬車なんだな・・ダイダロスで乗っていた魔導車と魔導列車は懐かしかったと共に、一気にあの頃へと感覚を押し戻してしまった
空を見上げ、雲を数える。
地面を見て、石畳の街道をゆっくり歩く。
カンザキはこの街を気に入っている
でなければここで焼肉屋など始めなかっただろう
あの日本のように効率的な移動手段に人間関係も悪くはないと今なら思えるが
この人情溢れる街が今まで自分になかったものを補充してくれているような気がしている
今店内から漏れているキャサリンの声も、シアの謝っている声もすべてがカンザキには新鮮に思えていた
その夜
久々に店をあけた
思っていたよりも固定ファンがついていた様で、どこから開店の話をきいたのか久しぶりといった感じで大勢の人が来てくれた
シア目当ての客も増えている
ていうか忙しいから店員を増やしたのにその店員のせいで客が増えている
なんだか本末転倒だと思う
でもそのおかげで退屈しない毎日を送れるのだから感謝だな
「やーおやじさん。聞いてくれよーこの間ついに81層に行っちゃってさ」
「そうそうカインが突っ込みすぎてなぁ」
しばらく来ていなかった冒険者たちだ
見ないうちに装備などが良くなっている気がする
それに81層か
ってあれ?冒険者だと65層くらいが今の限界じゃなかったか?
そう聞くと
「いやね、俺らが更新し続けてるんですよ。それでもまだいけそうな気がしてるし、他の冒険者達も結構、75から78層くらいまでは当たり前に進めてるんですよ。なんか今は百年に一度の当たり年らしいです」
「へぇ」
カンザキは感心した。
冒険者の人々が65層当たりまでしか行かなかったのはベテラン勢がその日の暮らしを優先させていたためだともいわれている。そこまでで得られる素材などでも十分暮らしていけたし、危険を冒して奥に進むものは少なかったからだと言われている
「百年前にもあったらしいんですよ。当時は30層が限界だったらしいんですけど、一気にその数年で60層まで進んだらしいです」
その計算でいけば90層くらいまでは余裕で進めるのかな?
「で、今は新しい素材なんかがどんどん増えてますから武器屋とか防具屋に道具屋なんかも忙しいみたいですね」
でも今まで数百年かけてじっくり進んでいたのがこの数か月で一気に進んだことになる
これはなんかあったんじゃないか・・・
ダイダロスの文明化が一気に進んだように
カンザキは考えるが思いつかない
まさか自分の始めた焼肉屋が原因だとは思わなかった
店の提供している肉とか料理に特殊効果が含まれているなどまったくもって気づいていなかったのだった
まあ、時代が進むのを見るのは面白くていいな!
気にしないでおくか
簡単に済ませてしまうあたりはやはり性格なのだろう
「そういやおやじさん、知ってるかい?来週あたりに貼り出されるらしい、国をあげてどでかい祭りがあること」
「ん?なんだいそりゃ。ちょっとしばらく居なかったから情報は入ってないんだ」
「数日前にでかい結婚式があったんだけどな、その時あたりから噂になってんだよ。知り合いの王宮の兵士に聞いたんだがどうやら本当らしくてな」
「祭りかー出店とかできるかな」
国をあげてならば賑やかになりそうだな
「できるんじゃないですかね、商店街の連中も色々やろうとしているみたいですよ」
「で、なんの祭なんだ?」
「ウルグイン建国祭とかじゃないかって話ですよ」
そうか、祭か。
屋台メニューなんか考えないとな!




