神竜バハムート
ばさり、ばさりと降りてくる漆黒のドラゴン
普通のドラゴンとは明らかに違うその姿
4枚の翼を持ちそれを羽ばたくように動かす
圧倒的な存在感で世界を歪めているようだ
「ふはははは!ついに、ついにやったぞ!」
ガンドルの願いはバハムートの召喚そのものであった
かつて魔法都市マグナシアにて魔法研究者達が禁魔法を調べあげていた
その最高であり、最強の魔法
だが当時はベヒモスを召喚することまでは成功した
あの時は都市を失ってしまったが
今回は成功した!やはり美しい!
ガンドルは世界の全てを手に入れた気分だった
バハムートは結界の上に降りたつ
ガンドルはくるりと振り向くと
「さてバハムートよ!アイツらを焼いてしまえ!」
ガンドルが俺達を指差しバハムートに命令する
その巨大な口を開けると
バハムートの目前に巨大な火球が生まれる!
「マズイ!」
カンザキはミタニを抱き抱えて直ぐにその場を離れる
すぐにバハムートから火球ば発射された!
「へ?」
足元に向かって放たれた火球はガンドルを焼き付くし結界に直撃する
ズズズズズ!!足元の結界にヒビが入る!
「マジか!結界がもたない!ガンドルが!」
燃えた?
「カンザキ!時間稼ぎする!」
ミタニが魔法を唱えようとするが魔力が持たない
カンザキは袋から一本の瓶を取り出すとミタニに渡す
ミタニはそれを受け取ると一気に飲み干した
ハイマジックポーション
魔力が全開し、さらに一時的に魔力が増大する
「汝歩みを、」
この魔法じゃ足りない!
ミタニはより強力な時間魔法に切り替える
「世界よ、その歩みを止めよ!クロノス!」
ミタニの全力である
打ち出された銃弾が時を止めようとバハムートに直撃する!
時が止まる
「ふぅ」
術者のミタニは時に縛られない
「とりあえず世界の時間止めたけどジリ貧よねー」
「そうだな」
え!?
「な、なんでカンザキ動けるの!?」
止まったハズの世界にカンザキは動き、喋っていた
「ああ、月の女神さんのネックレスがあるからな」
抗時間マジックアイテムだ
「うわええ!?そんなアイテムあるの!?」
「その話は後でなあいつには効き目薄いぞこれ。動き出すぞ」
ピキィン乾いた音がした
「ガアアアアアアア!!」
「まさかもう!?」
ミタニの魔法で止めるにはバハムートの力が大きすぎた
そしてバハムート自身も時には縛られない存在である
時間凍結を力だけで打ち砕いた
慌ててミタニは2丁の拳銃を乱射するがバハムートは擦り傷一つ負わない
「ボクの攻撃が全然効かない!!」
ミタニは唖然とする
うーんどうしようか
「詰んだなー」
カンザキは覚悟を決めた
その時だった
「はああああああ!風の精霊さん!お願い!」
光輝く一本の矢がバハムートの片目に突き刺さる
悲鳴をあげて仰け反るバハムート
「な、なんだあ」
矢の飛んできた方を見ると
「カンザキさーん!迎えに来ましたよー!」
美しい緑色のドラゴンに乗っていたのは
「キトラ!」
まさかあのドラゴンは
「ガアァ!」
「シルメリアか!」
キトラとシルメリアがバハムートに対して放つ矢は吸い込まれるように刺さる
「ちょ!誰あれカンザキ!バハムートに弓刺さってる!ダメージ与えてるよ!」
キトラはその背にある矢筒から一本の矢を取り出し構える
うさ耳がぴくぴくしている!
「シルメリア!風の精霊さんお願い!」
シルメリアの前に赤い巨大な魔法陣が現れる
竜魔法か!
そしてさらにキトラが叫び矢を放つと幾重にも重なる魔法陣が現れその中心を矢が駆ける
魔法によって加速される矢はその都度輝きを放つ
「ま、何枚魔法陣敷いてるのあれ!」
ミタニが目を輝かす
「10枚はあるなあ」
呆れてしまった。キトラは魔法陣を10枚重ねで矢を放てる様になっていた
うさ耳がぴくんと立って
「シルメリア左ぃー!」
バハムートがキトラに反撃しようと火球を放つがシルメリアはキレイにそれをかわす
「カンザキ!」
またさらに後ろから声がする。
振り向けばそこにいるのはキャサリンとシア
「なんか楽しそうなやつ相手にしてるじゃない」
その顔は・・・ワクワクするんじゃない!!
白いマントをはためかせながらキャサリンがニコニコしている
「カンザキさま今からお護り致します!」
シアはそう言って前にでると盾を構える
「映せ!アイギスの盾!」
ヴンと音がしてシアの前に光の盾が展開
さらにカンザキとミタニ、キャサリン、キトラとシルメリアの前にも光の盾が出現する!
バハムートが放つ火球を全てその盾が受け止める
盾の強度を火球は破れない
「私にはこれしか出来ません!火球はこれで防ぎます!」
ふよふよと光の盾を操作するシア
「お姉さま!お願いします!」
「任された!」
キャサリンの目が輝く
「へんっしんっ!」
その赤色の目が
金色に変わる
キャサリンのその美しい白と赤の鎧も金色に輝く
「金ピカだよ!?」
ミタニがぴょんぴょんと跳ねている
「いくよぉ!ドラゴン!」
キャサリンはそう言って、弦も矢もない弓を構えると
「ひ、光の矢!?」
ミタニが驚く
ガオンッ
風をきる音が弓の音じゃないな
キャサリンの周りに3つの魔法陣が輝くとその全てから光の矢が出現!
6枚・・9枚・・・そして12枚の多段魔方陣
バハムートの周りに合計21枚の光の魔法陣が輝き全てから矢が降り注ぐ!
「必殺の!アルテミスアロー!」
キャサリン・・なんかテキトーなのに・・強い
「いやあ、まさかこの技を使う日がくるとはねー」
キャサリンはニヤニヤ笑いながら言った
「さあカンザキ、もう止めだよ。足止めにしかなっていないけど」
いや、矢が当たった部分が貫通して穴が空いてるんですけど!
だけど弱っているからアレで行けるか?
カンザキはフライの魔法で浮かび上がりバハムートの前に立った
カリカリと魔石を齧る
「カンザキさぁん!」
チラリとみるとキトラが手を振っている
気楽なもんだなぁ
バハムートの前には複数の巨大な火球が浮かび上がっていた
力を貯めている
「まあ、後で謝るから許してくれよな!バハムート!」
「召しませ!剣よ!」
「天之尾羽張、天叢雲剣、布都御霊」
カンザキの周りに浮かび上がる3本の剣
そしてもう1本
「倶利伽羅剣」
その四本の剣を
全て持って切りつける!
バハムートが火球を放つ瞬間
カンザキが力を込めてバハムートを切りつけた
ズズッ
バハムートが真横にズレる
「ガアアアアアアアァ!」
自ら産んだ火球の爆煙と共に神竜バハムートは
消えたのだった
これはレベルが違いすぎるなぁ
楽勝じゃない。
ミタニはそう思った
一段落かな?次はエピローグ




