王宮
転送陣の先はダイダロスのど真ん中だった
「おっほー。中心部だよカンザキくん!ここには入れなかったんだよねぇ」
ミタニはきょろきょろと目に付くもの全てを調べていく
転送陣の先は王宮の中だった
魔法大国マグナシアの王宮
そこはダイダロスより地下およそ1kmの辺りだった
あの地下鉄の下らしい
「なるほど、内側からしか開かなかったんだね」
ミタニはドアを調べている
以前地下を探索していた時に見つけていたらしい
だが王の部屋や宝物庫には入れたのに入れない箇所がいくつかあった
そのうちの一か所
そしてダイダロスの研究者により調査されていた地下の遺物
王宮のほとんどは地中に埋まっており、発掘作業は難航していた
だがここの部分は発掘が済んでいたにも関わらずどうやっても扉を開けることができなかったのだ
ドアを開けて隣の広間に入る
そこには大きな竜の像がおいてあり、四方に光源があった
「へぇ、すごいね。数千年前の魔石がまだ力を失ってないなんて」
たしかにそうだ。この王宮は数千年たっているとは思えないほどきれいだ
まるで時がとまってしまっていたかのようだった
部屋から出るとそこからは階段だ。
登り切ったところで例の地下鉄の線路に出る。一同は王妃と姫を含めほんのわずか歩くと駅が見えてくる
その駅から地上にでるとそこはダイダロス王宮の庭にでる
ちょうど昼を過ぎていた頃だ
ずっと地下に居たから時間の感覚がおかしいな
「なんとか・・・帰ってきましたね」
王妃は言った
「ねえ、おとうさまはもう先に帰ってるんだよね?」
「ええ、そうよ。でも直ぐには会えないの」
「えー。おとうさまに会いたいよぉ」
まだ幼い姫には、王が死んだと伝えてないのか・・・
王の遺体はあの書斎の奥のクローゼットの中に安置されている
転送陣を直したら引き取りに向かって国葬を行うそうだ
そして王宮内に戻る
兵士達が大慌てで王妃と姫を出迎えたのだった
数時間後
「なあ、王なき今次の王はその弟なんだろ?」
俺はミタニに聞いた
「何言ってんのさ、王の弟は王家の血筋じゃないだろ。あの姫が成人するのを待ってから婿をとって次の王が決まるんだよ」
あ・・そうか。違和感はそれだ、勘違いしていたな
だから領主制を推進したのか
王がいなくなれば次の王は姫の夫だ
いいや待て、姫すら死んでいたらどうなっていたんだ
「その場合は近縁の王族が王位についていたかもね。ダイダロスの近縁はウルグインだ。ウルグインも娘しかいないが、その旦那が王になっていたはずだよ」
なるほど、どうあがいてもその弟はこの国の王にはなれなかったのか
ということはやはりその弟が偽領主では?
「その可能性はゼロだね」
はい?
「さっき見たよ、偽領主。あいつの名前はガドネルだったかな」
嫌な顔をする
「なんかあったのか?」
ミタニのこんな表情は見たことがない
「いいや、なんでもないさ」
無理矢理笑顔をつくる
ガンドルにはかなり金をむしり取られたからなあ
何に使うのか知らないけど
「さっき会ったってことはもうバレてんな。夜にでも襲撃にくるかもしれないな」
カンザキは腕を組んでめんどくさそうに言った
「来るだろうねーまぁアイツ弱いから来てもなんともならないんだけど」
「そうなのか」
「まぁ私兵に強いのがいるかもしれないねぇ」
そう言った時だった
昼過ぎの空に巨大な魔方陣が浮かび上がる
空は黒く染まりその魔方陣の輝きが街を紅く照らしていた
風は強風
何か巨大な力が空に渦巻き始めていた
「あれ何かくるねぇ・・凄い力だから危ないね、ちょっと時間稼ぎしてみるよ」
ミタニそう言ってベランダに出る
空に向かって銃を構えた
ミタニを中心に魔力が渦巻く
淡々と唱える
「汝は歩みを止めよ」
「クロノス」
それだけ言うとミタニは銃を撃った
空の魔方陣が止まる
ため息をつきながらミタニは倒れる
「今日撃ちすぎたわーもうだめ」
「何をやったんだ?」
召喚魔法ぽかったけど・・
「魔方陣の時間止めた・・・半日はもつはず・・寝る・・」
あ・・・寝てる
カンザキはミタニをベッドに寝かせると魔方陣を作り上げたと思われる者を探す
魔法陣を展開したまま時間凍結か
おそらくその魔法を使った者も時間が止まっているだろう
そして
あのレベルの魔法陣を空に映し出すにはかなり高い場所でないと無理だろう
例えば王宮
例えばあのホテル
まあ、ホテルだろう
カンザキは念のために王宮を調べたがやはり魔法を使ったまま時を止められた者はいない
王宮で魔導車を借りてホテルへ向かう
「おー。オートマか、一応変則ギアは使われているんだな」
ハンドルから微量な魔力が座れて走り出す
ギアは進むか戻るしかないシンプルなものだ
整備された道を進む
まだ信号機はないが、手旗の人が道を整理している
懐かしい感覚だなあ。
車を運転するとか
街中は空に浮かんだ魔法陣で騒然としている
魔法陣が読める人がいたのか、ベヒモスが来ると叫んでいる人もいるな
ホテルが見えてくる
ぼんやりと屋上に光が見える
時は少し遡る
王宮は王妃や姫の帰還に湧いていた
「やぁ、キミがボクの名前を語っているのかい?」
「ミ、ミタニ様」
脱出したとの話は本当だったか!
「よ、用があるので失礼する!」
ガンドルはスパイとなる兵士を1人送り込んで居た
王とミタニを毒殺する任務でもって
順調に王が死に、ミタニも風前の灯火だった
だがあのカンザキと言う男が皆を治してしまったと言う報告を最後に通信は出来なくなっていた
ガンドルにとって、最悪の事態が動き出したのだ
ガンドルの一族はマグナシア王族の生き残りであった
数千年に及んで受け継がれた魔法の力と記録
さらにはガンドル自身本物の王族である
当時の王族が転生魔法によりこの現代に蘇った
それがガンドルと言う男
彼は成長後記憶を取り戻す
かつてマグナシアがあった地はダイダロスとなっていた
落胆したと言うよりも呆れてしまった
あのうつくしき魔法大国であった国は魔法が衰退し、工業大国となっていた
さらにはミタニと言う天才発明家により近代化の歩みを始めている
明らかに自らの魔法の方が便利であったし
何よりも美しい
彼は当時失敗してしまった魔法に、召喚に再び取り掛かる
目的は、古の神の召喚である
そして神に力を給うこと
それには「神酒」を用いた特殊召喚魔法
神獣ベヒモスの召喚である
だがガンドルは知らない
つい先日ベヒモスは1度
いや、数度となくカンザキに狩られている事を
あと少し!続きます




