勇者の恋
本日3話目!
「なっ!」
巨大な亀の下からその冒険者は剣を振り上げた。
そして亀が足を振り上げた瞬間、ズズズと音を立てて
真っ二つに割れた
ルシータがあれだけ苦労した敵を、あの冒険者はわずか一振りで倒した
どういう事なの?こんな階層に冒険者がいるだなんて
それに、彼は一体何をしたの?
ただ剣を振り上げた様にしか見えなかったし。
冒険者はこちらに気付き、駆け寄ってきた
剣を収めてから言った
「いやぁ、こんな所で人に会うとは。凄い偶然だねー」
にこりと笑った
「で、君は誰?なんでこんなとこいんの?」
いやいやいや、こっちのセリフだ!
何でいるのどころじゃあない場所でしょうに!
でも助かったし久々に人に会えた
その安堵感からルシータは、泣いてしまった。
「ちょ、どうした、なんか怪我でもしたのか!」
ゴソゴソと袋をあさって、彼はいくつか小瓶を取り出してルシータに差し出す
「ええっと、エリクサーに万能薬!どっちだ!」
ぶはっ
ルシータは数ヶ月ぶりに、久々に笑ってしまった
エリクサーに万能薬だって?そんな伝説上のマジックアイテムあるわけがないじゃない!しかもそれを人にあげようとするの?
男の目を見るとかなり真剣だ。
ドキリとした。
え?ちょっと待って、本気なの?
エリクサーに万能薬を持ってるって言うの?
そう言えばここは500層あたりだ
伝説上でしかいないと思っていたモンスターなんかも途中に出会ってる
男は頭をバリバリと掻きながら
「なんだよ、違うのか?」
照れくさそうにした
「俺の名前はカンザキ見ての通りの冒険者やってる。そっちは?」
私の目を見ずに聞いてきた
「私の名前はルシ・・・いいえ、キャサリンよ!」
右手を出す
カンザキがその右手を握り握手をして
「よろしく」
お互いに挨拶をした
カンザキとキャサリンは広めの場所に移り、テントを張って食事をとる
その際カンザキから語られた話は、もう笑うしかない話
カンザキはここよりかなりの深層から帰ってきた所らしい。
最下層まで行ってきたとか。
その帰り道、美味しそうなモンスターを見つけてはメモをとりながら帰ってきたと
魔王はいなかった?
と、聞いたら
三年前にダンジョンに初めて入り、200層のあたりでそれらしき奴を見かけたと
倒したの?
いや、襲われたがクソ弱い奴だったのでボコボコにしてから鍛え直してやると
そのまま深層へと連れ去って行ってやった
どうなったの?
仲良くなった。
かなり気の良いヤツだぞ?弱いけどな。
魔王がどんな奴だったのか、気にはなったがそれ以上にカンザキが気になった。
キャサリンは何でこんなとこに?
と、聞かれたので王族だとは隠してありのままを話した。
すると彼は
そうか、悪い事しちまったな
なんて言うものだから
今までの決意だとか辛い事だとかそんなものが溢れてきてまた泣いてしまった
彼の前でもう2度も泣いてしまっている
泣き虫だと思われていないだろうか?
そんな捨て去った筈の女心が彼の前では蘇ってくる
勇者として孤独に戦う筈だった自分を
彼は、カンザキは救ってくれたのだ
そう言えばなぜ彼はそんなに強いのか聞きそびれてしまったな
その時言われた一言が私を彼に縛り付けた
「勇者って美人なんだな。すげー可愛いじゃん」
これはもう色々と惚れてしまうよね
今まで強くて美しいとか美しいのに強いとか言われてきた。王族だったしお世辞にしか思えなかったけど
彼のその一言は私を
ただ一人の女性として扱ってくれていたから
カンザキはこの辺りにいる鳥のモンスターを探していたらしい。
その鳥の肉がうまいんだ!
力説された
そして、街に戻ったら店をやりたいんだとか
変わってるなあ
それだけ強ければ冒険者だけでやっていけるのに
「キャサリンはこれからどうすんだ?目標、とっちまったから」
カンザキはまた頭を掻きながら話す
なぜ私の目を見ないのか
私は彼の目を見たいのに。
「そうね、誰かさんが魔王を更生させちゃったみたいだしすること無くなっちゃったな」
しらじらしく言ってやる
「なら、キャサリンも戻って店でもやればいいんだよ」
あっけらかんと道を指し示す
「この世界は面白いぞ?ダンジョンやモンスターもそうだが、一番は人間が面白い。頑張ってるやつを見ると応援したくなるだろ?そんな頑張ってる奴らをさ、癒してやると言うか・・・」
うまく言葉が出ないのかカンザキはまた頭を掻く
「わかった、私も店でもやってみるよ。カンザキの店の隣でね」
そうしたら、そばにいられるかな?
「そりゃあいいや」
カンザキは笑った
何て楽しそうに笑う人だろうか
「その前に俺はこの食材メモを完成させなきゃなんねえ」
「そうね」
「この層にいる鳥なんだが、良かったらキャサリンも一緒に狩りに行かないか?うまいんだぞ」
「分かったお腹すいたしね」
そう言うとカンザキはまた笑ったのだった
思ったよりラブ要素が入ってしまいました
次回うまい鳥とバトルです!
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誤字脱字多量かと思いますので、ご指定頂きましたら頑張って直していきたいと思っております!
ではまた次で!