焼肉ゴッド
この世界に召喚された時、とても腹を空かせていたのを覚えている
どんなものでもいいから食べたかった
牛や豚はいない
だが、ミノタウロスやオークはいる
奴らはどんな味がするのか興味は尽きなかった
他にも、ドラゴンやハーピーなど様々なモンスターはいて
俺の目には奴らはみんな
「肉」
に見えたんだ
巨大都市ウルグイン
人口は数百万とされる。
治安は良好、街の中心部には地下バベルと呼ばれるダンジョンがあった
そのダンジョンでは様々なモンスターが出現するし、鉱石や薬草なども取れる
故に地母神信仰の街でもあった。
その街の一画にとある食堂を構えた
俺の店だ
店名は、「焼肉ゴッド」
その名の通り焼肉の店だ。
かつて10席程度だった店内は今は30席にまで増えた
日本ならばなんら珍しい事はない、ただの焼肉屋
しかしこの街では未だに珍しい
まぁ珍しいなんてものじゃないな。未だに俺の店一店舗しかない
そして日本の焼肉屋と大きく違うところがあるとすればそれはー
肉は100%モンスターと言うところだ
既に日は暮れ始めていて周りの店もぼちぼち営業を始める
うちも開けるか
「シア、ユキ、店開けてくれるか」
「はい、わかりました」
2人は店内の掃除をささっと済ませると店の表にでる。
立て掛けてあったのれんを掛ける
1日の始まりだ
ちなみに昼間はミナリが開けていて、夜は俺の担当になっている
「シアちゃん、今日も後で寄らせてもらうよ」
馴染みの冒険者達だ
今ではシアやユキ、ミナリ目当てに来る客は少なくない
「はい、お待ちしております」
実は王女だったシアだが、すっかり下町に馴染んでくれている
「えー!私もいますよー?」
「ああ、ユキちゃんも後でな!」
元勇者ユキはその威厳もなく親しみやすい店員さんだ
「お、シアちゃん今からか。後で酒持っていくわ」
このポケットに手を突っ込んで歩いている男は酒屋のガルバ
こう見えて愛妻家の子持ちだ
今やウルグインで一番の酒屋になっちまったが、相変わらずうちには安くて美味い酒を下ろしてくれる
「もー!だからユキもいますよ!」
そして店内では、俺が昼間のうちに仕込んでいた料理を用意する
料理と言ってもうちは焼肉屋だから
メニュー品目は少ない
最近はミナリが別メニューで色々提供してるのが好評で複雑な気分だが
そうこうしていると四人組の冒険者が入ってきた。
「やってるかい?」
「いらっしゃいませー空いてるお席にどうぞ」
ユキの案内で店のど真ん中のテーブルに座る4人
テーブルには鉄板を仕込んである。
記憶を頼りに作らせた焼肉用だ。
この世界はガスなんてものはないから火は100%炭火だ
「何にしますか?」
ユキが注文を聞く
「ああ、酒と肉盛り合わせ8人前な」
「先に酒だぞー」
「はい、かしこまりました」
ガルバから仕入れた安酒を先に持っていかせる
コイツらは酒が大好きだ。酒が届いたとたんに乾杯と宴会を始める
俺は厨房に入って肉を切り始める
今日はミノタウロスの肉だ
「ひさしぶりの焼肉だなぁ!」
「1週間くれえかね、ダンジョンにもぐってたの」
「ああ、焼肉が恋しくて朝から腹の鳴き声が止まんねぇよ」
「ただ肉を焼いて、タレに付けて食う。それだけなんだが、最高に旨いんだよなあ」
「ああたまらんな!シアちゃん!肉早く持ってきてくれ!」
なんだろう?デジャヴみたいな気がするな
皿に肉を盛りつけた俺はシアに渡して彼らのテーブルに肉の盛り合わせを持っていかせる
「おまちどうさま」
肉盛り合わせ。定番メニューである
肉の内容、部位はその時その時で違うが、不味い物はだしちゃいない
俺がうまいと認めた肉だけを使用している
ジュウジュウと肉を焼く冒険者たち
彼らは肉を良く焼くと、タレにつけて食う
タレは醤油ベースの俺のオリジナルだ
「かぁ、うめぇなぁ」
「何泣いてんだおめぇ」
「いやよ、今回は死に掛けただろ、だからよ。またここで飯が食えると思うとよぉ」
「もう酔ってやがるのかよ。だが、100階層までは行けたんだ。今日は祝おうぜ。」
そうか、100階層か
冒険者のレベルも随分と上がってきてるな
ミナリのやっている冒険者教室のおかげで冒険者自体が大幅にレベルアップしている
店を開いた当初なら10層でもなかなかのもんだった
俺は祝いに、特別な肉を振舞ってやる
「ほら、祝いだよ。コレはおごりだから遠慮するな」
「おお、親父すまねぇな!早速頂くよ」
焼くと素晴らしく鼻腔をくすぐる良い臭いが充満する
ゴクリ、と四人は喉を鳴らす
そして、一口ぱくりと食べて・・・ゴクリ
「おい・・・・」
「ああ・・・・」
「こりゃ・・・」
「親父、何の肉だこれは」
四人が驚いた顔をする。
「さて、何の肉だろうな」
ちょっといじわるをしてやったりする
「まさか。。。これは・・・」
「ド、ドラゴンの肉・・・・・」
「いいや、ハズレだ」
「はい!?でもマジか!?うめぇ、うめぇよ!すげぇ、すげぇ!」
泣きながら焼肉を食べる四人
かなり不思議な光景だ
だが自然とにやけてくる
「さっきからお前うまいとすげぇしか言ってねえぞ!」
「ああ、だけど、だけどさ!」
「お前も泣いてるじゃねぇか!」
「ってか何の肉なんだよ!」
「100層まで行けたんならあとはきっとすぐさ。だがコイツは強いぞ?」
四人はその後もしこたま食べて、飲んで
そしてお会計
「やっぱ、うめぇもん食って、生きてるって噛み締める。それが幸せだよなぁ」
「ああ、これが楽しみで生きてんだよ俺たちは」
「ありがとうございます。また来てくれよ」
店員一同で一礼をする
「ああ。また美味い肉が食えるようがんばってくるさ」
「その意気だ。頑張れよ!」
俺はまだ若いそいつらが好きだ
頑張って、生きて、前に進んでいる
こっちまで、元気をもらっちまうような
さて、今日の営業はまだまだこれからだ
鉄板を片付けて、新しいものに取り替えて、
次の客を待つとするか
その店の名前は焼肉ゴッド
巨大都市ウルグイン唯一の焼肉屋だ
最後までご覧になって頂きありがとうございます
ブクマして下さった方々、ありがとうございます
当初の目標は10話、さらに10万字。
その頃でしたか10万PV
最終目標は100話と定め、見て下さった方々が居てくれたお陰で書ききりました。
最終話が手抜きくさいのは仕様です
プロットもなにもなく思いつきで書き始めたので、色々と難解な部分も出来てしまいましたが…
終わらない物語として書いたので、終わりはありません。
このまま焼肉GODは続きは書きませんが次にこの作品を書く時は1話目より全て書き直し、設定をまとめプロットを作りキチンとしたいと思います
スペシャルサンクス
カイン、クナト、鹿さん
キトラさん、シルメリアさん、みにゅうさん
ねこさん、まさ、モコ、しょへたん、姉ちゃん
ありがとうございました