王女様の、初めて
満天の夜空を進む2人。
まるでこの世界に、2人しか居ない様な、そんな錯覚を覚える。
数刻、歩き続けてついたそこは突如として大きなクレーターが空いている。
底は暗く、明かりはない。
星の光さえ届かないそこは不気味な雰囲気を醸し出している。
ゾクリ
シアは何とも言えない悪寒に襲われる。
何がいるの・・・
カンザキを見ると、剣を抜き放つ。
そして魔石を取り出す。
ちいさな、氷の魔石
魔石は魔力を通す事により効果を発揮する。
氷の魔石であれば、周りに氷を生み出す程度の力。
魔法と違いその効果はかなり小さなものだ。
冒険者ならば、魔法が使える者も多い。
シアも当然使える。第一級までの強力な魔法だ。
そう言えば、カンザキは魔法を使えるのだろうか?
「下がっていろ」
カンザキが言った。
カンザキはその取り出した魔石を口に放り込むと
カリッ!
噛み砕いた。
カンザキを中心にあたりがひんやりとしてくる。
シアは混乱する。カンザキが何をしたのか分からない。
だが事象として、カンザキが魔石を食べたように見えた瞬間から冷気が迸る。
「さあて、やりますか。」
そう言うとカンザキは剣を握っていない方の手を前に出し、
「アイスランス」
初級魔法を唱える。
次々と巨大な氷の槍が生まれていく。
おかしい、通常は一本生み出し投擲するだけの初級魔法のはずだ。
今シアの目の前には数十本の巨大な氷の槍が浮かんでいる
カンザキが合図をするとその槍の群れは、一気にクレーターの中央へと飛んでいく!
「ガアアアアアアアアア!」
耳を突き破る様な巨大な、吠えている!?
ガガガガッ
巨大な何かが駆け上がってきた。
それは体長が軽く10メートルを超えるような四足の獣
頭には捻れた角が2本
そして全身を黒い毛が覆っている。
綺麗な体毛で、まるで闇を纏っているかのようだ。
だが、カンザキの魔法で全身に氷の槍を突き刺されている
「気をつけろよー、雷使ってくるからな」
カンザキは慣れた様子で言った。
その通り、獣の体は帯電し、そして弾けた。
辺りを白く埋めていく光。昼間よりも、明るく眩しい。
まるで・・・そう、神の雷・・・
かつて読んだおとぎ話。その物語の神々が操るとされた・・・そんな事をシアは思い出す。
体が震え、恐怖に支配される。
そしてカンザキは盾を前にかざす。
それだけなのに、その迸る落雷は2人には届かない。
その光が収まる瞬間、カンザキが翔ける!
「次はまた俺のターンだ」
カンザキのもつ剣がら光が放たれる!いや、集まっていく!?
「そらよぉ!」
カンザキが叫んだ瞬間、その振り下ろした剣から一直線に光の衝撃波が獣を両断するように弾ける!
凄まじい轟音と共に獣に着弾する!
しかし、吠え叫びながら獣はカンザキに向かって動いた瞬間・・・
やっぱつえーな、奥の手を使うか。
そう、シアには聞こえて
カンザキは、また、魔石をカリカリと口に含んだ。
瞬間、周りを冷気が覆う。
かつてダンジョンで見た、1層まるまるが氷の層があった。
真っ白になり、そして
「コキュートス」
カンザキが唱えた。
あたり一面は氷河。
その中心に氷漬けとなった、2本角の獣。
絶命のその瞬間で時を止めている。
カンザキはテントを組み立てると、焚き火を起こした。
そして解体してくると言って氷漬けの獣をその剣で切り刻んで行く。
戦闘時間はわずか五分足らず。終わってみれば、楽勝だと言える。
解体には10時間を要したソレはー
「カンザキさま、このモンスターはなんという名前で?」
シアは知りたい。このモンスターが何だったのか。
「あー、デカい牛なあ。何だったかな・・・」
両腕を組み、考える
「ああ、そうだ。確か、ベヒモスだったかベヒーモスだったか、そんな名前だった」
ん?聞いたことあるような
「はい?」
シアは聞き返す
「だからベヒーモス?」
あっけらかんと、カンザキは言った
「ええええええええ!」
シアは生まれてきて初めてとも言える程の、
大きな声で叫んでいた。
天災と呼ばれる獣がいた、神獣ベヒモス
いにしえの文献にわずかばかり登場するかの獣は、
闇を引き連れ、万の落雷と共に現れると言う。
かつてマグナシアと言う魔法大国があった。
進み過ぎた魔法を用いて、他の国々を支配下において非道の限りを尽くしたと言う。
見かねた神が、神獣ベヒモスを遣わして、わずか一夜のうちにマグナシアは滅んだと言われる。
魔法が通じす、剣も槍も全て弾く毛に覆われていたと言う。
そんな伝承をもつ、幻の神獣ベヒモスだと、カンザキは言った。
もう、色々と驚く事しかありません。
カンザキ様は、私などが、いえ、王族など比べものにならない程お強く、住んでいる世界は広い。
やはりこの方しかいません。
シアの瞳は潤み、安堵なのか嬉しいのか分からない感動をしている。
やはり、カンザキ様が大好きです。
「おっと、焼けたぞ。一番旨い部位だ。食べてみろ」
焼かれた、ステーキが差し出される。
シアはそれをぱくりと食べてみると、良い歯ごたえ、なのに固くなく、溶けるように消えていく。
その匂いはまるでフルーツの様に芳醇。
夢中で全てを食べていた。
「うまいだろ?」
「はいっ!」
いつの間にか解体したはずのベヒモスが消えていた。
聞くとカンザキのもつ魔法の袋とやらに全て収納したらしい。
それでもシアは驚いた。
魔法の袋は王宮の博物館にあり、ただ破れているために使用はできないとか。
それを当たり前の様に雑に扱うカンザキ。
まあ、怒るよね。
そして腕輪やピアスなど、確実に伝説級のマジックアイテムをほいほい渡す事にも怒られたりした。
良かれと思ってやったのになあ。
カンザキは既に尻に敷かれかけていたのだった。
わずか二日目にして。
\( •̀ω•́ )/ハイペースすぎる投稿!←働け
とりあえず、なんとか終わりました。
次回よりカンザキとシアのラブラブな日常、、は来ません!
少しまた番外ぽいのをを挟んで、次の話をやりたいと思います!
ご覧頂きありがとうございます。
ブクマありがとうございます\( •̀ω•́ )/
誤字脱字ありましたら御指摘お願いします!
評価下さると泣いて喜びます\( •̀ω•́ )/
ではまた!