終わり
僕はガルムを描いた。
少女を助けて無実で牢獄に繋がれて、なんども脱獄しようとして、数年後とうとう脱獄した。離れ離れになった妻と子どもの元へ行き、最後は共に過ごした友人に殺されて死ぬ、そんな物語を絵で描いた。
事実は嘘になり、物語は真実となった。
「全部、思ったとおりになったのか」
ハルが屋上で絵を描いている僕に抱きついてきた。
「あの世でガルムも喜んでいるかも」
「どうかわからないな。ただ、悪い気分にはなっていないだろうな」
「嘘をついて気分は良い?」
「過去なんていくらでも改変可能だ。歴史は変わらないなんて空想だ。いつか誰かが真実を明らかにするかも知れないが、それまで物語の中で英雄にしてやろう。それで良いじゃないか」
ハルは僕の横に座り、足を伸ばした。
「アランが落ち込んでいたぞ。何か言ったのか?」
「知るか。僕はハルが樹が済むようにしろと言っただけだ。それ以外何も言っていない」
青空から太陽が降り注いだ。
「たまには女の絵じゃなくて、男の生き様もカッコイイな」
「私たちが友達になったきっかけをおぼえているか?」
私はダレンに最初に出会ったのは屋上だった。
太陽の日の下、ダレンは教会から依頼された天国を描いていた。
「素晴らしい絵だな」
本当に美しい絵だった。
「それは最高の誉め言葉だ。本当はね。これは地獄を表しているんだ」
私はそうには見えなかった。
「一切の悪を消した、善のみの絵。逆説的に世界が求める天国の虚飾を現している」
「そんなの作者が言わないとわからないよ」エリンが絵の具を持ってきながら言った。
その絵は天国の虚飾を表そうとして、本当に美しい絵だった。
「あれから、私はダレンの絵に夢中なんだよ。だから友達になりたいと思った」
「なら」僕はハルに絵を渡した。
「これ、私の裸の絵じゃないか。本当に描いたのか……やっぱり胸がないと可愛くないな」
「そんなことないさ。可愛くないが、美しいぞ」
「嬉しい事をいってくれるな。ありがとうこれは一生の宝物にするよ」
僕はガルムの物語のこれからを思いながら眠った。
ガルム書いたからもういいかな。
気が向いたら続きを書くと思います。