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クリスタル

 軟体生物スライムと接触した途端に銃弾で核を撃ちぬき、たちどころに三体を絶命させた。エリンの銃の腕は正確無比で、ハルもアランも構える前に事が済んでしまった。銃口にふっと息を吹きかけて、銃を回転させながらホルダーに閉まった。

「ふふふっ、私は無敵だ」

 エリンは得意満面で言っているが、実際に楽だった。

「と言うことで角材降ろしていいですか?」

「駄目だ。何があるか分からない」

 街から遺跡に行くまでの二時間近く、何の苦行だ。

 雑魚魔物を全てエリンが蹴散らして、遺跡に到着した。僕は角材を持ちながら入ろうとしたが、つっかえた。

「おにいちゃん……邪魔」

 角材をその場に放り投げて、僕たちは遺跡に侵入した。その後も、スライムや蝙蝠の化物に襲われたが、エリンの早撃ちと連射で次々と撃墜されていった。

 しばらくして、移動魔法があった部屋を見つけた。僕たちは入って、次の瞬間、宝石のあった部屋に移動していた。だが、そこには宝石が何も無かった。

「……無いぞ。油機はあるが」

「にゃもー!」誰が喋ったかと思ったらティナだった。鞄から辞書を出して、僕に見せてきた。

『逃げて』

 ティナが収納されていた油機がぐるりと回転させて歩いてきた。僕たちは蒼ざめただろう。油機とは古代人の作った文明の利器で、戦闘や工事現場などにも応用できる兵器だ。色々な武器が搭載されており、生身で戦うのは無謀だった。

 ティナが僕に抱きついてきて、一緒に床に転がってしまった。体の柔らかさを存分に味わったが、いまはそれ所の話ではなかった。

「エ、エリン! 守ってくれ!」

 愚妹ー! 守ってー!


 エリンは教授を押して、回転式銃を早抜きして、腰だめで六発全弾撃ち込んだ。

 油機は人間の全身を包むので、そのまま大きい人間と言える。両目が複眼でついており、エリンはそこに全弾叩き込んだ。左利き用の銃でも複眼を狙って、破壊した。

「あ、あぶなー」

 エリンはリロードをしながら退いた。油機の手がエリンがいたところを通り、床が弾けた。

「駄目だ。視覚を奪っても、アクティブソナーを使うよ」

「は? 何? アクティブソナーって」

 ハルがエリンに聞いた。エリンは前世の記憶があるせいか、たまに訳のわからないことを言う。

「音波を出して感知しているの。眼は死んでいないと思ったほうがいいよ」

 アランが大剣で油機の左腕を叩き潰そうとしたが、弾かれて守勢に回った。ハルは剣を抜き、関節を狙って攻撃しているが、びくともしなかった。

「す、凄いな。そこらへんの油機より頑丈だぞ」

 教授が喜んでいるので、腹が立ってきた。角材をもってきて、教授の頭をぶん殴った方がいい気がする。だが、確かにそこら辺の油機と違って珍しい構造をしていた。油機は人間の体をまねているために関節部が弱くなっており、戦う場合はそこを攻撃するようにと言われている。

 学校では優秀のハルとアランもさすがに苦戦していた。そして、エリンが何かを狙っていた。頭脳を駆使して、腕力も駆使したら、今度は足を動かす番だった。油機の死角をつきながら近づき、一気に油機の後ろへ回った。そこはティナが出て来た場所だ。普段は融着しているが、縦に裂けて出入口となるため、他の部分と比べたら装甲は弱い。

「フルメタルジャケットっ」

 同一箇所に12連続撃ち、最後の二発が油機を貫通した。

「おおー、勝ったよ」

 ハルが沈黙した油機の横を走って通り、エリンとハイタッチした。エリンはハルと接触できたので喜んでいた。さかっている妹であった。

「絶対に銃口向けるなよ」

 アランはハルの手を引いて、僕たちの元に戻ってきた。

「いやー、なかなか見ごたえがありま……」

 ハルが首に腕を巻きつけて、

「お前もなんかしろよな」

「だって、角材置いてきちゃったんだもん」僕はハルの腕から逃れるように暴れた。

「はにゃー」ティナが僕たちの下敷きになって暴れていた。

「ティナが潰れるだろ」

「ああ、ごめんごめん」

 何かが黒い影が横切り、部屋の中を舞った。

「アラン! 後ろ」

 アランの腹に黒い触手のようなものが生えた。

「うおっ……」

 油機の中からどんどん触手が溢れて、黒く輝く宝石のようなものが現れた。それは人型であり、全身から触手が生え揃っていた。理屈は分からないが、この前あった宝石が変化したものだろうか、宝石はアランを胸元まで運んで、耳元で囁いた。

「お前が……そうだ」

 その途端、黒い宝石は霧散して、アランは油機の上に倒れた。

「な、何だったんだ……」

 アランは自分の手を見て、握り締めると、驚愕の表情を浮かべた。

「大丈夫か!」

 ハルは従士にたいして見下してはいない、服を脱がせて傷も調べたが、やはり何も傷は無かった。

「あんな魔物は見たことが無いな」教授は言った。

「僕には宝石が変化したように見えましたが」

「……ダレン。その宝石の絵を描いてくれないか、調査してみるから」

「ええ、帰ったら……ただ、どうやって帰りましょう。この前は、宝石にふれた途端に、移動魔法が発動したんですが、今回はいませんね」

 僕と教授が話していると、ティナがユハタに乗り、操縦を試していた。弾は運よく操縦者だけを撃ち抜いていたようで、穴は開いているが十分に動くようだ。

「にゃもー!」


「ダレン。もしかしたら、俺が魔法を使えるかもしれない」

 アランが僕と教授の会話に入ってきた。

「移動魔法なんて使えるはずが無いだろ」

 最上級の魔法だ。学生が使えるはずが無かった。

「いや、大丈夫だ」アランが手をあげると掌が漆黒に輝いた。「僕たちを移動させろ」


 青空が広がっていた。

 遺跡の入口だった。

「……できた」

「だー! びっくりした!」

 アランは遺跡の宝石の力を手に入れた。

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