好感度はどんどん低くなる
両目が霞んできて、数十枚の芸術作品が完成した。僕にはすでに大金に見える。
R30、R18、R15と色んな種類の絵がそこにはあった。
「おにいちゃん、頑張って」
義妹よ、ケーキの分を稼いでいるのだよ。これ以上頑張りたくない。
「これ以上、頑張れない……これで僕のケーキも買ってきて」
「残念だけど、もう営業時間終わっているよ」
血、血の涙が……出ないけど……。
「栄養が足りない」
「お粥をつくりました」
「わー、胃に優しい。……あと、この芸術作品を変態カルエルに売って来てくれ」
カルエルは下の階にいる変態である。
エリンに渡すときに一番上のR30が居間へと飛んでいった。ティナがそれを拾って、芸術作品をみると、眼が点になり、赤くなり、白くなった。死体でも見たかのような反応だった。眼をそらして、エリンに紙を渡した。
「あちゃー、見せないようにしていたのに」
エリンがそそくさとカルエルのところへ行くと、僕は居間のおかゆを食べようとした。ティナが座布団を胸の前で盾にして、僕の視線を塞いだ。
……良い判断だ。
「あの画はダレンが描いていたのか。なんか高値で取引されていたけど」
放課後になりハルと一緒にその金でケーキを食べていた。便乗して、アラン、ティナ、エリンも一緒に食っているが、器が宇宙ぐらいでかいので全員分を奢ってやった。
「アランも五枚持っているぞ」
「ハル様……なぜそれを知っていて」
「いや、辞書を借りようと思って部屋へ行ったら、辞書に」
アランは無表情だが、絶望したような呻き声を挙げた。
「やだー。アラン君、変態」
愚妹はそう言ったが、変態のお陰で生活が成り立っている。そして、お前も流通に一役買っている。それを決して忘れてはいけない、我々は変態によって育てられているのだ。
僕が無言で凛々しくなっていると、ハルが僕の目の前で手を振った。
「大丈夫か」
「大丈夫だ」
五人で店の外にでて、しばらくするとハルが耳打ちしてきた。
「誰かついてくるぞ」
僕が振り向こうとすると、
「振り向くなよ」
アランが呆れて忠告してきた。
「何人?」
「三人だね。狙いが分からないな」
「……ティナでは? 姿を見るところ、冒険者みたいですよ。古代人と言うことがばれたのでは」
「その線が一番ありそうだね。どうする?」
「逃げますか」
僕はその場で駆け足になり、四人をおいて一目散に逃げた。
「なっ?」ハルとアランは面食らっていたが、それぞれエリンとティナの手を引いて、しばらく追いかけてきて左右に分かれて走り出した。僕は逃げてすぐに建物の中に入り、追って来ていた男たちの顔を確認していた。
「いきなり、逃げ出すなんて……あんまりじゃないか」
ハルが寮のホールにいる僕を見つけて、後ろに回って首を絞めてきた。ハルが連れてきたのは、ティナで彼女もむすっとしていた。僕は三枚の紙をハルに渡した。
「おっ、これは……追ってきたやつの似顔絵。どーだ、上手いだろ。これを冒険者ギルドにでも照会してもらえば相手の身元が分かるよ」
ハルが少し黙っていたが、「やるなー」
「まーね」
「ただ、急に逃げ出したから、女性人からの評価は低くなったぞ」
「ごめんね。ティナ」
ティナは昨日出来事で、海底より評価が下がっていた。
愚妹はどうでもいい。
「おにいちゃん! どういうことよ!」
「こういうこと」
絵を見せた。
「知るか! 怖かったじゃないの!」
「悪い悪い」
冒険者ギルドへの照会と不法行為についての抗議はハルが行った。
さすが伯爵家ということで、次の日から冒険者に追いかけられることは無くなった。
そして、数日が過ぎて、週末がやって来て、再び遺跡の発掘調査が行われることになった。