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動揺

毎日1話ずつ、かなり短くまとめて連載します

第一話は【動揺】

ではまた明日

【動揺】

私に癌が見つかったのは先週のことだった

長年健康だけが取柄だった私にその一報はまさに晴天の霹靂であり、今まで味わったことのないドロっとした塊が心の奥に住み着いてしまっていた

命は永遠ではない。今日という日は明日に続かない。

そんな当たり前のことを齢47にして始めて肌で感じた日だった

その日を境に世話をする妻や薬を運ぶ看護婦、淡白な食事、テーブルの上の花、その全てが自分にとって明日とも知れぬモノになり、何だか自分だけ世界から仲間はずれにされたように感じる

体は自分の物でないかのように重く、鈍く、言うことを聞いてくれない

「一体、俺が何をしたのだろうか…」

ふとこんなことばかりを口がこぼす

誰にでも訪れるモノが自分に訪れる、そんな当たり前のことがこんなにも憎く、悔しいとは誰が予想しただろうか

俺は憎い… 医者が憎い、看護婦が憎い、妻が、花が、食事が、病魔が、自分が…

「憎い…」

 

はっとした時にはもう既に口からスルリと落ちていた

すぐさまこれは私の本心ではない、何かの間違いだと自分に言い聞かせる

病魔に怯える心が口を、思考を支配したに過ぎない

ただの気の迷いだ 気にすることはない 

薬をのみ、医者の指示に従い、看護婦に身を任せ、妻の手を握れば日常に戻る…

そう何度も自分に語りかける

しかし、そんな気休めは、私の体の震えを和らげてはくれなかった


「あぁ…怖い」


それを口にしたのは確かに、私だった。


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