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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

苗字名前の生死録

作者: モキ

・・・・・




▼なまえを おしえてください。

▼なかえ。

▼なかえ ですね。

▼なかえは しとひきかえに 『しょうき』を うしなった!

▼なかえは せいとひきかえに 『とりっぷ』 した!





・・・・・





「オッスオッス。わいはプロのトリッパマンよろしくな! 現在急降下中のちょっぴりドジな高校二年生。ある日私の学校にミステリアス? やす? な転校生がやって来たの。なんやかんやあって転校生に呼び出されて、なんやかんやで肩パン食らわされて、逆に転校生の肩をクラッシュさせちゃった私は何と一千万の慰謝料を要求されちゃって!? それからなんやかんやあって家が火事になって、なんやかんやあって家から出れなくなって、気を失って、いつの間にか上空何メートルかわからないくらい上にいるの! そう! 私は空を可憐に飛ぶ鳥。とり。トリッパーだけにね。ハハッ! 実は下からの風をメチャクチャ受けてるのにどうして喋れてるのか不思議でならない。てか、これあれでしょ、異世界トリップってヤツでしょ。シチュエーション的に!あーし天才だから知ってる! んで、これこのままいくと地面で弾けてミンチ肉になっちゃう! 残り少ない余生を楽しもう地面までアーメン!」


そう言うと彼女は目をつぶって見よう見まねで十字を切り、両手を祈るように組んだ。


「……あれ? 何だか地面までだいぶ近づいた気がするけど、なんかいけそうな気がする。これはもしかして地面に着く前にふわっとなって何とか事無きを得るパティーンかな? それともイケッメーンがお姫様だっこキャッチしてくれる感じとか!? キャッ!! 仲江困っちゃうー、オッペケぺーーーーーー!!」


どぅだンぶびィー!


彼女の肉体は地面にぶち当たって、無残にも一瞬にしてピンク色のミンチ肉と化した。彼女の名前は未四時みよじ仲江なかえ。昨日女子高校生、今日そこいらに飛び散ったミンチ肉である。


・・・・・





▼なかえは しとひきかえに 『はな』と『みみ』を うしなった!

▼なかえは せいとひきかえに 『ふしLevel.1』を てにいれた!




・・・・・


仲江は考えた。


(あっれれぇ? あーしミンチ肉になっちゃったハズだけどめっちゃ思考出来る。ふっしぎー! ここどこかな? 森っぽい、原生林リン♪)


仲江は木っ端微塵の肉片になってしまったのに意識がある事を疑問に思いつつ、身体をどうにか寄せ集める事にした。


(よいしょこらせっと、どっこいしょ)


そこいらに飛び散ったミンチ肉はモゾモゾとゆっくりしたペースで集まり、大きな塊となり、やがて人型となり、生前の仲江の姿に近いものとなった。


「仲江・爆再誕……って、ピエー! 耳と鼻が無い、どっかいっちゃった。てか、服が無い。どうしよう」


今の仲江にはどうしてか耳と鼻が無かった。しかし、音と匂いを感じることは出来るので、それは仲江にとって些細な問題であった。本当の問題は服である。服がなければ誰かと遭遇した時大変だ。露出狂だ。せめて男ならまだマシだったかもしれないが、仲江は女である。恥ずかしいし、いやーんあはーんで色々と危ない。


「あーあ、こんなことならミンチ肉のまま、とりあえず服になるものを探せばよかった」


時すでに遅しだ。仲江はもう一度ミンチ肉になろうとしたが、ミンチ肉から人型になった時と違って、念じても人型からミンチ肉にはなれなかった。かといってもう一度高いところから落ちる勇気も無いし、次も生きてる保証はない。とりあえず出来るだけ大きい葉っぱとツルを使って、簡易的な下着を作って、それを着て人か服になりそうなものを探すことにした。


「気分はターザンね。あーしは森の王者よ」


仲江は適当な木の枝を杖にしてズンムズン森を進んで行った。意気揚々と進んでいたが、裸足故に足が痛くなり途中からはしとしとと歩いた。


ほとんど裸みたいなものだが、気候は初夏一歩手前といったところで、そんな姿でも暑くもなく寒くもないのが救いだった。


「かくして、未四時仲江は伝説の防具・アパレールを探してアマゾンの奥地へ進んだ」


そうナレーションをつけてた時。何やら上空からビョゴーと風をきる音が聞こえた。仲江が生まれてこのかた聞いたことが無いような何とも不思議な音だったが、上を見た途端にその正体が何か分かった。


「ドラゴンやん……」


車を縦に2台ほど並べたくらいの大きさの西洋風のドラゴンが上空を飛んでいる。そのドラゴンには兜とくらがついていて、背に人を乗せているようだった。その人物もまた、ドラゴンが装備しているものと同じような素材の甲冑を着ている。


ドラゴンに乗った人物は仲江を見るなり速度と高度を下げ、ぶわっと風を立て下り立った。


竜騎士と思しき人物はどうやら男性のようで、仲江は己の姿に、忘れかけていた羞恥心を思い出した。仲江は体を守るように腕を胸のあたりで交差させた。


「貴様、アマゾネスだな?」


先に口を開いたのは竜騎士の方だった。


「は、はあ? アマゾネス? 尼ぞネス? あーしはしがない女子高生ですけど……」


「嘘を吐くな! そのような格好をしているのはアマゾネスくらいのものだ! アマゾネスは討伐対象である。悪いが貴様にはここで死んでもらうぞ!」


「えーー!! やだーー!!」


竜騎士は鬼の形相で剣を構え仲江に斬りかかった。仲江も大人しく斬られるわけにはいかないので必死に逃げた。さらに竜騎士はそれを追いかける。


「待てーー!!」


「待てと言われて待つ馬鹿はおりませーん!」


竜騎士は重たそうな甲冑を着ているのにも関わらず、とんでもない速さで走って追いかけてきた。仲江も死に物狂いで竜騎士から逃げる。


「くっそー! なんでそんなに早いんだよー! かっちゅー着てるのにおかしいでしょ!? あ、さてはそのかっちゅーハリボテだな!?」


「ええい! ハリボテなんぞではない! 貴様この由緒正しき竜騎士団の軽甲冑を馬鹿にしたな! もう許さん! 『穿うがて、目に見えぬ刃』」


そう言うと竜騎士は剣を前に突き出した。勿論仲江にその刃は届かない。だが、刃先から何やら目に見えぬ透明な何か(・・)が発射された。


「途端に中二病発病すんオッペケペー!!」


その何かは仲江の胸元を貫き、仲江の胸に風穴を開けた。丁度心臓が丸々吹っ飛んだくらいの大きさの風穴は仲江の命を終わらせ、仲江はその場に倒れた。


「ふん、汚らわしいアマゾネスが。馬鹿にしよって……」


竜騎士は仲江の頭を一蹴りして、己のドラゴンの元へと戻っていった。





・・・・・





▼なかえは しとひきかえに 『いしき5じかん』を うしなった!

▼なかえは せいとひきかえに 『まほう』を おぼえた!





・・・・・

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