もう少し歩いておこうかな
俺の手から発生した謎の火の玉によって吹き飛んだ厳ついおじさんとお姉さん。
そのことについて俺は今猛烈に後悔している。
なぜ、なぜあの時、お姉さんと一言も会話しなかったんだろうか! こうなることが分かってたなら会話ぐらいしときたかったのに!
いや、後悔はこれくらいにしよう。俺は過去は振り返らない主義なのだ。
取り敢えず今回のことを反省しておくか。
まずいけなかったのは、恐らく突発的過ぎたんだろうな。俺だっていきなり変なやつに、仲間にしてくださいって言われても怪しく思うもん。
今回の敗北要因はそこだろう。今度から気を付けよう。はい、反省終了。
さてと、次は一番の問題だ。
さっき俺の手から出た火の玉のことだが、あれはなんだったんだろうか。つっても俺にはそんな能力はなかったし……。
まあ感覚は覚えてるから、危機に陥ったときにだけ使おう。
下手に使うとさっきみたいになりかねない。
てかそろそろお腹が減ってきたな。どこかに村とか無いんだろうか? いや、そもそも今時村とかあるのか?
悩む。それよりも色々あって特に疑問も持たなかったけどここって何処なんだろう。
もしかして小説とかでよくある異世界ってやつだろうか? 友達のマーガレットJr.君がしつこく俺に進めてきて読み始めたのだ。そうか、じゃあこれが転生ってやつか。あれ転移だっけ? まあいいや。
ならさっきの火の玉は魔法だろう。そしてあのおじさん達は盗賊でお姉さんは……盗賊でいいや。
ってことはこれから俺の異世界ハーレム生活が始まるってことだろうか? そうにちがいない。
じゃあまずは町で冒険者ギルドに登録しなければ。
そうやって現実逃避をしながら歩いていると後ろにナニカの気配が。不味い、背中をとられた!
この気配、間違いなく熊だ。何故か直感で分かる。
くそっ、このままじゃ殺される!
やられる前にやるしかない!
だが。
殺れるのか?
俺に。
例え動物だとしても生きているんだ。
もし殺したら、俺は一生後悔していきなきゃならないかもしれない。
熊にも家族がいて、その家族を養うために俺を襲おうとしてるかもしれない。
その場合、もし俺がこの熊を殺してしまったら、その家族は飢え死にしてしまうだろう。
ダメだ。俺には、殺す覚悟なんて……ない。
諦める。そんな感情が俺のなかで渦巻く。もういいのではないか。そう思ってしまう。
そんな時、友達や家族の顔が脳裏に浮かぶ。そうだ、ダメだ!
死ねない!
俺には大事な友達や家族がいるんだ!
死ぬわけにはいかない!
俺は勇気を振り絞る。
殺す覚悟はないかも知れない。でもやるしかないんだ!
いいだろう。一生十字架を背負ってやるよ!
お前に恨みはないが、許してくれよ。
すぐそこまで気配が迫っている。もう時間がないあと数秒もすれば俺は死ぬだろう。
だが、まだ間に合う!
俺はさっきの感覚を思いだし、叫ぶ。
「ファイヤ――」
「よお、お前さん見ねえ顔だな。まいg「――ボォォォォォル!!!」」
後ろを向き叫ぶ。途中何か声が聞こえた気がするが皆が俺のことを応援してくれている声だろう。
分かったよ皆。
俺は負けない。
この理不尽な世界で生き残って見せる!
暇だったので三十分で書いてみたら三十分しかかからなかった。
なんだこれは。