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とある救援投手の独白

作者: 三好八人衆

なんとな~く思い浮かんだので、書いてみました。

出番が近いと、投手コーチに告げられた俺はこの日2度目の投球練習を開始する。肩はもう出来上がっている。少ない球数で肩を作ることが出来るのが俺の数少ないアピールポイントだ。

俺の職業はプロ野球選手。ポジションは投手だ。先発・中継ぎ・抑えと役割があるが、俺は中継ぎ投手だ。高卒でこの世界に入って8年目、26才になる。立場的には一軍半・・・『怪我してたレギュラーが復帰した。一軍枠は一杯だ・・・誰落とす?』『この間あいつ打たれたな。じゃああいつを落とそう』ってな立場だ。

ブルペンキャッチャーから返球された球を受け取り、チラリと戦況を映しているテレビに目をやる。現在3回を終えて6対1と我がチームが5点のビハインド。マウンド上には今日の先発のドラフト1位のルーキー。『六大学のプリンス』なんて女の子たちから黄色い悲鳴をあげられていた彼は今日がプロ初登板。プロの洗礼を浴び、ボコボコに打たれて可愛そうなくらいに狼狽えている。

ブルペンの電話が鳴り、それを受けた投手コーチが俺の名を呼ぶ。そして一言「出番だ」と。






救援投手は基本的にはシーズン全試合にベンチ登録される。シーズン最多登板数は90だそうだ。それはとても名誉なことだと思う。その投手は、そこまでチームから頼りにされているのだから。

いつクビになっても、よそのチームに行くことになってもおかしくない俺から見れば羨ましい限りだ。

マウンド上の俺はボールをこねながら現在の状況を確認してみる。3つの塁には3人のランナー。バックスクリーンのアウトを示す『O』のランプはひとつも灯っていない。つまりは無死満塁である。

一見守備側が大ピンチなように見える。・・・まぁ、実際その通りなのだが。

しかし満塁だとフォースプレーになり、守備側にとっても守りやすくなるのだ。内野ゴロならホームに送球、一塁に転送して割と簡単に併殺を狙え、相手チームの勢いを殺すこともできる。

だが・・・あくまでも『打ち取ることが出来たなら』だ。大歓声とともに高々と舞いあがた打球を見送り、俺は溜息をついた。

このイニング、新たにスコアボードには4点が追加された。





ここ数日の登板で好投が続いていたからなのか、はたまた満塁ホームランを打たれた後無失点に抑えたからなのか、毎度おなじみの二軍送りになる事もなく、一軍帯同は続いた。まだ5月。シーズンも俺の野球人生もまだまだ長い。投げて投げて投げまくって、チームに貢献するだけだ。

この肩が、壊れるまで。


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