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真なるチートの活用法  作者: ぽむ
二章 魔王編
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エピローグ

「ひぐっ……う…… うぅ……」


 レイシル信和国議長であるサクラ・ミソノは泣いていた。

 カレンやミリアリアもガルフォードもミラービリスも眼を赤くしている。マグナルに至ってはサクラと同じように大泣きをしていた。


「うぅ…… この下りは何度読んでも泣けますねぇ……」


「あぁ、こいつら良いやつすぎんだろ。報告書は定期的に届いていたがまとめて読むとまた違う」


「俺はこの『聖魔革命記』をドキュメンタリー小説として大々的に売り出そうと思う。

 舞台となった場所は特に酷い虐げを受けていた農村地ではあるが、それだけに彼らの団結は強い。

 きっと魔族、いや今は聖魔族か、彼らの認識を変えてくれると信じている」


「賛成です! レイシル信和国でもバンバン売りましょう!」


「俺も大賛成だ! いっそ初等教育の国語の時間に使わせたいぐらいだ!」


「あ、良いですね。我が国でも議会に提案してみましょう」


「それにしても、私が他の国を救わないの?って頼んだ時『救わない』って言った意味が解った気がする」


「そうね、もしケイジが直接貴族を排除してもこんな結末にはならなかった。

 助けられるべき人は、ただ待っているだけじゃ駄目。自分達で立ち上がる事にこそ意味があった。

 そして彼ら聖魔族は最後までその立ち上がる為の手助けをしただけだった。

 本当の救いとは自らに降りかかった苦境を自らの手で覆すからこそ、二度と同じ事が起きなくなる」


「もう、ミリアリア! 私が言いたかったのに!

 でも、本当。きっと外から強引に帝国政府を打倒しても、多かれ少なかれ同じ事が起きてたと思う。

 だから悲劇を繰り返さない為には、彼ら当事者が解決する必要があったのね」


「くそっ! ほんと、拍子抜けする程に良い奴だぜ!

 ケイジ殿! これからも、もっともっと俺に修行を付けてくれ!

 俺はやっぱり、あんな奴らと対等でいたい。肩を並べてガハハと一緒に笑えるような存在になりてぇ!

 今の俺はまだまだちっぽけすぎる!」


「解ったよガルフォード、何時でもここに来い。 幾らでも修行を付けてやるさ」


「有り難い! では早速!」


「おいおい、今からか、これから昼食じゃなかったのか?」


「身体がうずいて仕方がねえんだ。付き合え!」


「駄目だよ将軍! 今日もいつも通り私の勉強に付き合って貰う約束なんだから!

 ミリアリアもこっそり修行の準備しない!」


「あはは、ガルが修行するなら一緒にご相伴にあずからせて貰おうかと思ったんだけど……」


「はぁ……いいよ。俺にとっては一人も三人も同じだ。幾らでも分体出来るしな全員に修行付けてやる」


「やった」

「よしっ!」

「ラッキー!」


◆◆◆◆


 その日、遅めの昼食をとった後、サクラに書籍用のデータとサンプル本を幾つか渡し、今日の会合は終了となった。


 「ふう……これで最低限の準備が整ったな。思ってた以上に今回の件は大変だった……」


 予想外の事は意外に多く起きた。俺は前兆を察知すると直ぐに担当の魔族に対処させた。


 人の心は複雑だ。どうしても対処できない、予測の効かない事は沢山ある。


 平民の犠牲者を0に抑える事。


 当初掲げた目標は案外直ぐに瓦解した。脱落者に関しての救済が上手く行かなかった例は多い。魔族が手を下さずとも、事情を知った住民が裁きを与えてしまうのだ。しかしそれを止めるわけにも行かない。彼らの感情もまた正しいものだからだ。そう考えるとカンザ村の例は本当に運が良かった例だ。


 難しい。全知全能に近いような力を与えられて尚、救えない人間がいる。


 俺は前世、転移前の世界では諦めていた。街で評判のお人好しで生真面目だった両親はあっけなく地震で死んだ。俺の生き方が変わった原因はこれだ。


「理不尽だ! なんでこんな事で死なねばならないんだ! おかしいだろう!

 死とはなんだ? 何故にこんなに理不尽なのだ!

 抗ってやる! どんな死にも抗える力を手に入れてやる!」


 そして俺は自衛隊に入り苦境下で生き延びる術を覚え、そして傭兵となった。戦場で悪と思える奴らは殺して殺して殺し尽くした。少しでも理不尽な死を引き起こす物を排除したかったのだ。しかし、戦場から戻ってみると俺が守りたいと思っていた人は別働隊によって壊滅していた。そう、殺す事に意味など無かったのだ。自分一人の力はあまりにもちっぽけで、無力で、どんなに救いたいと思っても、砂が手からこぼれ落ちるように、俺の手から離れた。


 無力感は俺から戦う意思を奪い、堕落させた。それでも何かを救いたいと言う未練は俺に警察官を選ばせた。上は俺の経歴からSATへの転属を強く勧めたが、頑なに断り資格試験も受ける事はなかった。


 そんな時ゲームの世界は楽しかった。この世界の死には理不尽は基本存在しない。救いたい者、救われるべき者はちゃんと救われるのだ。だからのめり込んだ。そして数をこなす内に時間が足りなくなった。それがチートとの出会いだった。


 チートは楽しい。ゲームは確かに面白いがそれでも気に入らない所は必ず出てくる。チートはそれを自分で修正する事が出来た。解析も楽しい。解析は作者とプログラマーの心理が透けて見える。その人の思考の幅が解るのだ。こんな小さな世界にも様々な違いがある事を知った。


 そして俺の興味は知識、小説へと移っていく。世の中には学ぶべき事が多い。知るべき意識が多い事をしらされた。でも既に、全てを諦めていた俺にはそれを活用する事はなく、ただの娯楽として楽しんだのだ。


 だが、俺は神にチートの能力を貰い変わった。この世界で生活を続けていく上で、俺には以前よりもずっと多くの人を救える力がある事を知った。最初は少々暴走させ、要らぬ戦いも招いたりしたが、自分自身もまた自分が何をすべきか学んでいったのだ。


◆◆◆◆


 気が付くと俺は真っ白な空間にいた。そして目の前にはあの時の爺さんが居た。


「あれ? もしかして俺死んだの?」


「いやいや、死んではおらんよ。少々話がしたくて無理矢理呼ばせて貰った」


「あ、もしかしてやり過ぎたのか? 此処まで弄っちゃまずかったか?」


「いや、それも構わん。この世界をどうしようとお前の自由じゃ。それも約束通り。

 ただな、お前が何を思い。これから何をしようとしているのか気になったのじゃ」


「そんなの俺の意識を読めば直ぐに解るんじゃないのか?」


「はっはっは、無敵コードじゃったか。お主自分の意識を世界に移しておるじゃろう。

 おかげでお前の意思はそちらの世界の隅々までに広がり完全に同化しておる。

 そんなものから読み取るのは流石に上位神とて不可能じゃ」


「ふーん、まぁいいや。爺さんはこの後この世界がどうなるか解るか?」


「ふむ、ざっと見た所、この世界の問題はほぼ取り除かれ、今後長く平和な時が訪れるように思うが?」


「起きないね」


「ほう、その理由は?」


「またまた、本当は解って聞いているんだろ?まぁいいか。

 産業爆発は確かに人間達の暮しを大幅に改善するだろう。

 しかし同時にそれは人口爆発をも産む。

 俺の試算では200年もしない内にこの星には人が住めない場所が無くなる。

 そしてそれは、土地と資源の枯渇を意味し、それは争いを誘発する」


「ふむ、確かにな……」


「一度大きな争いが産まれてしまえば、俺の掲げた理想の教義など容易くねじ曲げられる事だろう。そうなれば地獄のはじまりだ。

 だからそうさせない為にも今から準備が必要なんだ」


「まさか、住人のレベルをやけに高レベルにしているのはその準備か?」


「ああ、最終的に今の魔王クラス。レベル一万以上がゴロゴロ居る世界を創り出す」


「そ、それは豪気な世界だな…… 本来、神が直接力を行使する際、自分の分身たる使徒に与えるレベルが1000じゃ。

 その程度では足りぬと?」


「足りない。俺の目指しているのは恒星間転移門の設置だ。


 幸いレベル1万がゴロゴロ居るような世界になればギリギリ届く場所に居住可能な星がある。土地や資源の問題はそれで解決する。


 その次はチョット遠いがまぁ何とか時間は稼げるだろう。かの星はこの星よりも何倍も大きいからな。


 一度解決策を提示していれば、争うよりもその技術を高める方に尽力してくれる筈だ。


 まぁ最悪は、住めそうな星を転移可能な場所に持ってくるけどね」


「はぁ……、何ともまぁ……壮大な話じゃの。

 しかしこれはまた…… くく、本当にケイジらしい選択じゃの!

 お主は本当に面白い!

 そうじゃ恒星間転移門の件が片づいたら一度神界に遊びに来ぬか?是非他の神々にも紹介したい」


「あー、まぁ暇があったらね」


「ははは、そうじゃの。お主は何時も忙しそうじゃ。 ま、のんびりと待たせて貰うよ。

 そうじゃ、その時は是非カレンという子も連れてくるが良い。

 お主はあの子をパートナーに選んだのじゃろう?」


「う…… ま、まぁな」


「ふふふ、では我々(・・)はその時をのんびり待たせて貰うとしよう。

 またな、ケイジ」


「ああ、また。じいさんも達者でな」


◆◆◆◆


 気が付けば俺は自室のベッドで眠っていた。時刻を確認すると既に朝のようだ。


 じいさん、あっちの世界とこの世界の時間の流れ早めやがったな。全くもう……


 まぁいい、朝食を食う時間が無くなったが工場と店の方に顔を出さないとな。


「あ、店長おはよう御座います!」

「「おはよう御座います!」」


「みんなおはよう。開店準備は滞りないか?」


「はい! いつも通り清潔、親切、笑顔をモットーに頑張っています」


「そっかそっか、頑張れよ。お前達の頑張りの分、それがそのままお前達にかえってくるんだからな」


「「はい!」」


「それと店長少し見て貰いたい物が…… 一応新製品の試作なのですが」


「ほう、どれどれ検分させて貰おう!」


 遠くで他の従業員が「頑張れー!ザック! 店長のツッコミに負けるなよ~」としきりに声援を送っている。全くこいつらは……


 その後会議室で、様々なツッコミを入れてザックを涙目にすると、携帯から呼び出しを受ける。商業ギルド長メルゲンさんからだ。


『ケイジ殿~。助けてくだされ~』


 はぁまた商業ギルド内で問題が起きたのか……最近多いなぁ。やはり権利関連は早急に法整備を済ます必要がありそうだな。


 そう言えばハンターギルドのギルド長タネンさんは最近は魔物が大人しくて仕事が無くて困ると嘆いていた。腕っ節中心の奴らの仕事も何とか考えてやらんとな。これも要注意案件としてToDoに記録しておかねば。


 そしてお昼にはいつも通りカレンが満面の笑みでやって来て、抱きついてくる。気の済むまで抱きつかせると勉強と修行だ。日暮れが近付くとガルフォードとミリアリアがやっぱり満面の笑みでやってくる。そして「よ! 修行に来たぜ!」と言って訓練に誘うのだ。


 我が分身も世界各地で、可愛い教え子達を導いていく。


 小さくこまかな問題は色々と起きる。しかし俺はこの心地良い世界を守る為に、教える事、考える事を止めないのだ。

恒星間転移理論とか流石リアルに描いていくのは無理そうなので此処で終了です。


様々な応援、感想、ありがとう御座いました。

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