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真なるチートの活用法  作者: ぽむ
二章 魔王編
24/25

革命

今回は淡々と進み、無駄に長くあまり面白くないかも知れません。

また残酷描写、悪意描写が多少あるので注意してください。


嫌な人は◆◆◆◆を目安に段落を飛ばし最期に進んで、まとめだけお読み下さい。

「き、貴様ら! こんな事をしてただで済むと思っているのか!

 く、くそっ!離せ! この馬鹿力め!」


 マッズがまだ寝ていただろう役人を詰め所から無理矢理連れてくる。


「はい、はーい。静かにしましょうねぇ~。ヤス、やっちゃいな」


「おう! 『穴』」


「な…… ま、魔法?」


 ヤスが魔法を唱えると役人の前に丁度人間が首まで入りそうな穴が出来る。するとマッズは役人をどんと突き飛ばし穴に落とした。


「『拘束』」


 続いて這い上がれないように手足を拘束。役人は何が何だか解らないのか、呆然とこちらを見るだけだ。


「んで仕上げに『充填』」


 すると、穴が埋まって役人の顔だけが土の上に出た状態になる。


「なな……な、なんだこれは? 一体どういう事だ? ていうかお前ら何故武器を持っている?」


「気付くのおそ……頭悪いなぁ……

 毎日、毎日、気にくわないって、目に付いたってだけで気まぐれに鞭打っておいて反感を買ってないと思ったの?

 人が折角、森から集めた薪や食料を盗んで、更にそれを厚顔無恥にも売りつけて、そんな事してばれてないと思ったの?

 これはね、反逆だよ反逆。全帝国平民の一斉蜂起って奴さ」


「な…… き、貴様らこんな事をしてただで済むと思ってるのか! 直ぐに貴族軍がお前らを滅ぼすぞ!」


「あはは、君としてはそうなってくれたらいいなぁって希望なんだろうけど……

 ……ってそういやこいつの名前なんだ? 誰か知ってるか?」


「いや、しらねーんじゃね? コイツ下々の奴らに名乗る名など無いとか言って教えなかったし」


「あー、そういやそれ俺も聞いた事あるわ。 まぁ聞いた所で意味もないし、お前の名前は暫定的にナナシな」


 本当は看破で解っているのだが皆気に入らないから呼ばないのだ。


「な……」


「んでだ、さっきの続きをすると、今から数時間後にはこの帝国は滅亡します。悪徳貴族は恐らく全員殺されます。

 そんな訳で君も村の総意で殺す事が決定しています。状況説明終り。


 あ、折角名前付けてあげたのに使わなかったね。ゴメン」


「な、な…… お前ら本当に何を言ってるんだ? 大体どうして魔法が……」


「聞きたい? でも全部は教えてあげない。 でも絶望的な状況だけなら教えてやる。

 此処にいる全員が全てレベル100を超えている。 ボーグは180越えだ。

 あの遠征で大惨敗したように、お前達悪徳貴族は一人残らずなんの抵抗も出来ないまま殺されていくんだ」


 役人はあまりの事に口だけパクパクと動かし、声を発する事が出来ない。


「タロウ!」


「ん?なんだ?」


「お前が一番鞭打たれてただろ? お前がやるか?」


「ふーむ、そうだな。いっそムカついてる奴全員でナイフで一刺しづつ刺すってのはどうだ?」


「まて、それは悪くないが子供にはあまり見せたくない。マリー、子供を下がらせろ」


「解ったわ。ついでに嫌な悲鳴を聞かせたくないし、やる人は『静寂の檻』貼ってね」


「了解、よし、希望者はコイツの周りに集まれ。 俺が結界を貼る」


「さ、カズ、ミュウ、行きますよ」


「え~」


「もう良いから来なさい!」


 私達が離れると、夫が直ぐに結界を貼る。今からあの中で、あいつの地獄が始まるのだろう。


 しばらくすると『豪炎』の魔法と思われる火柱が上がり、その後結界が解かれ、夫がやってきた。


「随分早かったわね?」


「ああ、15回ぐらい持つかと思ったんだが、2回も刺したら直ぐに泣き叫んで、みっともなく命乞いしてな……

 あんまり見苦しいので直ぐに止め刺して、『豪炎』で灰にして地中深くに埋めた」


「そう……」


「よし、じゃぁ次はあのピンハネ徴税官だ!

 と、その前に…… お前達子供は此処で革命はお終いだ!」


「「えええええ~!!」」


「どうして駄目なんだよ! 俺らだって戦えるよ!」


「確かに戦える。 そして、お前らは今後俺達よりもずっと強くなるだろう。

 だからこそ、お前達に大人の薄汚いきたねぇ部分は見せたくはねぇ!

 お前達が目指すべきは彼ら魔族のような優しく強い男になる事だ。薄汚い男の死に様なんか見てもなんの勉強にもならん!」


「う~……」


「マルザさん、魔族の誰かが残って子供達をみててやってくれませんか?」


「解った。ビュー、キュール。お前達はここで子供達の世話を頼む」


「はいよ~」

「承りました。ささ、みんなで一緒に遊びましょう。今日は目一杯付き合ってあげるわよ?」


 夫はビューさんとキュールさんに集まる子供を優しく見つめると、踵を返し発言する。


「行こう!」

「解った。『転移』」


 次の瞬間、我々はとある貴族邸、徴税官カラクルの屋敷の庭に来ていた。

 其処には既にカラクルとその家族が縛り上げられ、更には結界で囲まれている。おそらくは『静寂の檻』だろう。


「お、あんたらが一番乗りか。んじゃ後は任せた。俺達は先に行く」

「ああ、ご協力感謝する」

「なんのなんの。ああそうだコイツにはまだ何も喋っちゃ居ないから、好きにしな。

 結界の解除パスはコレだ。じゃな!」


 彼は夫に結界の解除パスとなる魔力コードを渡すと、早々に転移していく。


 このカラクルのように直接の恨みの対象である貴族が自分の近くにいない場合、予め連絡して置くと、その土地の人間が確保して置いてくれるのだ。

 カラクルは徴税官としてウチの村の他に、あと三つの村を担当し、同様にピンハネしていたらしい。

 即ちこの後、あと三つの村の集まってくる予定だ。


 数分待っていると次々と三つの集団が転移してくる。


「一応、一番乗りを果たしたカンザ村のボーグだ」

「グルタ村のメンヒルだ」

「ゼコ村のバルバノという」

「ナンネ村のスコウです」


「ところで、ナンネ村さんには拘束されていない役人さんがいるようですが?」


「ああ、この人は良い貴族だから粛正対象外なんだ。

 なんせこっそり鉈や鎌、包丁とか返却してくれたし、一緒に農作業をまでしてくれたお人好しさ。

 でもこの徴税官のピンハネに憤慨して指摘したら奴隷落しそうになって、こっちで確保したんだ」


「へぇそんなのもいるんだ……」


「ナンネ村の役人だったハイムと言います。コレからもよろしくお願いします」


「あなたはなんで貴族なのに村人を助けようとしたの?」


「俺は一応三男坊なんですけど、貰えた爵位は準男爵。即ち一代限りの物なんです。

 だから俺が結婚して子供が生まれても、その子は余程の事が無い限り平民なんです。

 そう思ったら、今後産まれる自分の息子がこんな目に合うかと思うと人事じゃなくて……」


「あんた、嫁がいるのかい?」


「う……まだ居ません。募集中です」


「あっはっはっは! 嫁も居ないウチから子供の心配かい! 良いねあんた!気に入ったよ!」


「だろ。こいつは帝国貴族には珍しく良い奴なのさ、で見せびらかしに連れてきた」


「見せびらかしにか……なかなか良い趣味してるな。

 しかしハイムとか言ったか? これから行われるのは私刑でしかない。しかも殺すのは本来お前と同じ貴族だ。それでも見ていくというのか?」


「元役人って言ったじゃないですか、俺はこの男にはめられて奴隷になる所でしたしね」


「コイツは良いとしても今後、お前の親しかった貴族を目の前で粛正する事になるかも知れないぞ? それでもか?」


「それでもです。もともと貴族の水は会わなかったんですよ。そもそも私は妾の子でもなく、平民を犯して産ませた子なんです。一応認知をしてくれた為準爵位は貰いましたが、生活の殆どを母親の元で暮らしてましたし、平民と変わりませんよ」


「そうか…… 解った。歓迎する。

 では、改めてこのクズ徴税官と、その家族の処置について話し合いたいと思う。結界が貼ってあるから聞こえないはずだ」


「了解した」

「おう」

「ま、ネックはコイツの子供だな」


◆◆◆◆


「と言う訳でお前の親父さんは、俺達の認識しているだけでもこれだけの悪事を働いていたわけだ。

 お前の贅沢の幾つかも全て俺達を騙して得た物ってわけだ。だからお前の親父さんはこれから大きな罰を受ける」


「ふざけるな! 早くこの拘束を解け! この薄汚い平民共が!

 騙した? っは! 騙されるような愚かな無能が悪いのだ! そもそも平民など貴族の財に過ぎん!」

「そうよ、解きなさいよ! 衛士は? 衛士は何をしてるの?」


「だってよ、どう思う?」

「貴族の財って、まぁそれを言うなら領主の財ではあるかも知れないが、このコッパ役人の財でもなければ、このガキの財でもないな」

「まぁアウトだな」

「アウトだね。不幸中の幸いは糞ガキへの教育も糞教育だったって事か、これで心おきなく殺せる」

「殺し方はどうする?」

「流石に子供だ。苦しみを長く続ける事もあるまいて、苦しまずにってひと思いに所だな」

「そうだな」

「良いだろう」


「お、お、おまえら、何を言っている? 平民が貴族に手をあげるなど重罪なんだぞ! 解ってるのか?

 そんな事したらお前達だって殺されるんだぞ?」

「………え? なんなの? どういう事?」


「それで、殺す順序はどうする?」

「まぁこの身の程を知らないガキにも解るように、カラクル、ガキ二人、妻って所だろう」

「ま、妥当な所か……」

「で、カラクルの奴は誰がやる?」

「一番被害の多いナンネ村に任せよう」

「では、一番やりづらい子供はカンザ村の俺が引き受けよう」

「そうか……、では二番目に付いた者としてグルタ村もその罪を背負おう」

「ではゼコ村は残りの妻か、すまんな嫌な役を押しつけて……」

「いや、仕方がねぇさ此処で残しては必ず遺恨が残る。では始めようか……」


 その後徴税官カラクルは家族の目の前で四肢を切断され、失血死する迄の数分の間、もがき苦しみ抜いて死んだ。子供達はそれを見て急に媚びを売り、命乞いをしたが、容赦する事なく、苦しまぬよう頭を一撃で破壊して殺した。残ったカラクルの妻は終始動揺する事もなく「殺れ。こんなのは貴族社会では日常茶飯事。私の番が来ただけ」そう言って抵抗も無く殺された。その気丈さは、案外高爵位の娘だったのかも知れない。


「そう言えば、お前達の所も子供は連れてきていないんだな?」

「ははっ! こんな所、ウチのガキ共に見せられるかよ。

 カラクルに子供がいる事は解ってたしな。

 何処の親が、自分が子供を殺す所を見せたいって言うんだ?」

「そうだな。こんな思いは俺達大人だけで良い」

「こんな糞の役にもたたねぇ罪を子供に背負わせるわけにはいかねぇ」

「そうだな。では次は領主の城へ向かおう」


 領主の城の前に転移すると、既に多くの平民で取り囲まれていた。状況を聞くべく、既に取り囲んでいる者達に話を聞く。


「カンザ村のボークという。お待たせした様で済まない。今どういう状況なのか教えていただけると有り難い」

「ギリー城下町の反乱元締めをしてるバルザという。

 現状、この城以外の騎士団は既に制圧済みだ。

 城の外にいた殺すに足るような悪徳貴族、それに荷担していた者達は誰でも殺せるように城外のセレモニー広場に拘束して放置してある。

 まぁ今から行っても誰も残ってないかも知れないがな……

 良くも悪くもない、どうでも良い奴らは拘束して役所の会議室に押し込んである。こいつらの処分は後で決めよう。

 で、ギリー城に立てこもる貴族は基本早い者勝ちで、皆殺しだ。平民メイドとか、さっきのどうでも良い貴族は既に確保して城から出ている。

 残っているのはクズ共とそのクズの手下だ。

 まぁ一人レベル73なんて言うのが居るが、ステータスを確認した所、賢さが全く足りねぇから多分苦戦もしないだろう」

「そうか、抜け道とかはどうなってる?」

「当然既に土魔法で塞ぎ、緊急脱出用の転移陣も破壊してある。

 ああ、そうだ。奴隷奉公させられていた平民達が出てくる時に、どうも城の武器防具の全てを持ち出したらしい。

 だから今城の中にいる奴らは全員非武装状態だ」

「はは、それはさぞ震えている事だろうな。後どれ位で全員集まりそうだ?」

「まぁ遅くとも30分は掛からないだろう。何処から攻めるもお前達次第だ。

 好きな所に詰めてくれ。開始の合図に『爆炎』魔法を空に打ち上げる。

 あぁそうそう一つだけ。『妖精の囁き』を使用するのは構わないが、それによる攻撃は今回禁止だ。

 それを許すと、一人の敵に最悪何百という魔法が降り注いで城が壊れかねない。今回の攻撃は目視だけに留めてくれ」

「了解した」


 状況を確認した我々はまだ誰も詰めて居なかった城壁のある一部分に取り付き待機をする。一応今回の革命で初めて戦闘らしい戦闘(?)となるので『妖精の囁き』を起動して周囲の状況を探る。


「どんな感じだ?」

「この壁を越えて直ぐの城の壁を壊せば、数人が立て籠もっている部屋に通じるわ。男二人、女三人、子供が一人ね。

 作戦としては壁を無視して、そのまま直進って所かしら?」

「ああ、壁に穴を開けて直進する。慌てず騒がず済ませていこう」


 状況を確認し、しばらく待っていると開始の合図が上がる。


「行くか…」


 我々は土魔法で淡々と穴を開けて直進する。爆炎魔法などで壊しても良かったが、そうすると城が崩れる可能性もあった為、自重する事となった。


 目的の部屋に付くと予想外の場所から現れた我々に、貴族達は目を丸くする。だが、内一人が状況に気づき手に持っていた椅子で殴りかかるが、その椅子毎切り捨てた。その場にいた他の貴族もなんの抵抗も許さず、淡々と切り捨てていく。


 目的地までゆっくりと歩きながら、道中出会う貴族や騎士を切り捨てていく。領主ズガルゴ・ギリー伯爵が潜伏しているのは大広間だ。本来ならこの大広間にはかなりの数の脱出用抜け道が用意されているのだが、話しに聞いた通り全て塞がれ、どうして良いのか解らず立て籠もっているようだ。その後も数人の貴族を葬った後、大広間にたどり着くと、既に多くの平民が領主とその護衛騎士筆頭であろう男を取り囲み、騎士と一人の平民の戦いを観戦していた。


「これは一体どういう状況なんだ?」

「ああ、領主に何が起きているのか実感させてやろうと思ってな。

 『誰か一人でも殺す事が出来れば命は助けてやる』って好きな相手を選ばせて戦わせてるのさ」

「ふむ、戦っている彼はレベル162か、運が悪かったな」

「へぇ、あんたはそれが解る程高レベルって事か。

 まぁでも此処にいる人間は全員あいつよりも20レベル以上上だ。あいつに区別なんかつかなかったんだろ」

「ふむ…… まぁ領主達をいたぶるのは良いのだが、あまり待たせると帝都攻略を待たせている同士に迷惑が掛かるのではないのか?」

「む、それもそうだな……」


「おい! あんまり帝都攻略組を待たせちゃいかん。 そんなザコさっさと片付けろ」

「ざ、ザコだと……」

「あー、すっかり忘れてた。

 そだな、こんなのにあんまり時間かけて同士に迷惑をかけるわけには行かないな。今片付ける」


 そう言うと、戦っていた彼はいたぶるのを止め、瞬時に騎士の身体を両断する。


「なな…… なんなんだ! どういう事なんだ! どうなってる! なんで高貴なる私が殺されねばならんのだ!」

「高貴…… 高貴ね…… その高貴ってのは誰が決めたのよ? お前ら貴族同士が勝手に高貴って言い合ってただけじゃねーか。

 まぁあんまり時間がねぇんだ。取りあえず死んどけ」


 そう言って、彼は瞬時に四肢を切断し、そして最後に伯爵の首をはねた。


「そう言えば伯爵の家族は?」

「もう既に処理済みだ」

「そうか……」

「さぁ我々も帝都に向かおう。最後の仕上げだ」


 帝都に転移をすると、既に溢れんばかりの民衆で帝都は埋め尽くされていた。転移者の案内をしていると思われる男に話しかける。


「カンザ村のボーグだ。今の状況は?」

「帝都第15転移地の案内を任されたジベルだ。

 まぁ見ての通りだよ。今からじゃ帝城を落とす戦いには参加できねーな。

 『妖精の囁き』は使えるんだろ? それの戦況確認だけで勘弁してくれ」

「了解した。俺達がここまで来たのは、何が起きたのか、何を起こしたのか、自分たちの力で確認し、それを認識する事だ。それで構わない」

「そうだな。今日此処にいるみんなは歴史の証人となる」

「帝城に立て籠もる貴族以外の奴らはどうなってる?」

「悪徳貴族は軒並み処断。どうでも良いのは役所や牢に閉じこめ処分待ち。そっちの領地でも同じだろ?」

「ああ、同じだった」

「あ、そう言えば処分を免れた領主もいるらしいぞ?」

「何? 本当か?」

「ああ『人質政策』は帝国からの指示だったんだけど、それを逆手にとって領民を保護した奴が居たらしい。

 なんでも食うに困った奴らは片っ端から人質として取り上げた事にし、それぞれの街や村の一カ所に集めて

 『人質を殺すわけには行かないから世話はお前達に任せる、餌は十分に用意しよう』とか言って保護したらしい。

 他にも武器防具は取り上げたが、他の領地で普通にあった農具とかの取り上げは一切行わなかったらしい。

 不正役人も片っ端から捕まえたって事だし、なかなかの領主だ。

 『こんな苦しい時にこそ、民を助け、皆で一丸と成らねばならぬと言うのに』とか……

 なんでも話によると『のぶれなんちゃら』とか言ってたけど……」

「ノブレスオブリージュだろう」

「そうそれ! まぁ彼に言わせると昔は此処まで腐ってなかったって嘆いていたらしいよ」

「ふむ…… しかしそんな領地では魔族の助けは必要なかったんじゃないか?」

「ああ、その領地に関しては領主に直接『グロウ教和国に頼まれた』と言って話を付けたらしい。

 その後は多分同じだな。きっとその領地でも魔族のみんなは粉骨砕身で尽くしていた事だろうよ」

「そうか…… 帝国にもそんな領地が在ったのか。しかし、良く他の貴族にバレなかったな」

「まぁその辺は上手くやったんだろ。誤魔化す手段は幾らでもあるさ。

 『偽装』の魔法だって下位へのパラメータ偽装は簡単だ。それにあの人達が付いててヘマをするとも思えねぇ」

「ま、それもそうか……」


 すると私達の後に新たな転移者達の集団が現れる。


「あ、はいは~い! 状況案内は此方で行いま~す。 悪いな、新手の転移者だ、そっちの案内をする。

 後はお前らで適当にやってくれ」

「手間を取らせて済まなかったな。情報感謝する」

「いやいや、これが俺に振られた仕事だしな」


 適当に広さの取れそうな場所を確保すると、みんなで其処に座り込んでミールとケリーが大量の『妖精の囁き』を発動させる。


 ざっと状況を確認した感じでは先程攻略したギリー城と大して変わっていないようだ。普通の武器防具は全て没収済みの為に、飾りとしての価値しかない宝飾剣や、練習用の刃を潰した剣、木剣などを装備し、様々な場所で立て籠もっている。しばらく状況を確認していると、城の上空にひときわ大きな爆裂魔法が打ち上がる。いよいよ帝国の最期の時が来たのだ。


 帝城攻略が始まると、城壁など無かったかのような勢いで平民達は侵入を果たす。道中の貴族達もなんの抵抗も許さぬまま殲滅し、大した時間もかけずに皇帝の居る謁見の間にたどり着いた。


「ケリー、謁見の間の音声も拾えるか?」

「もちろんよ」


『なんなのだ! 何なのだお前達は! 卑しい平民の分際で土足で上がり込みおって! 許さん! 許さんぞ!

 ゲイズ! この薄汚い平民共を一人残らず捻り殺せ!』

『はっ!』

『ん? まさか勝てるとか思ってないよな? それともこの国の将軍は戦う相手に看破を使わずに挑む程馬鹿なのか?』

『………』

『敵に語る言葉はないってか。立派な事だ。しかし何故その忠義を皇帝を正す為に使わなかった?』

『………』

『ふん、まだ語らないか。“騎士の本道はただ主の剣たれ”だっけ? ご立派だけどね。

 おい、其処の後で震えているアホ皇帝に教えてやる。

 お前の跡継ぎである第一王子はこの将軍ゲイズとお后様との不義密通の子だぞ。

 証拠は右足裏にある痣だ。其処に将軍家の秘密の紋章の刻まれている』

『な』

『貴様、何処でそれを……』

『即ち、この将軍は皇帝を守っているように見えて実は自分の息子を守っていたと言う訳だ。

 本当に貴族社会は腐りまくってるな。

 それで皇帝さんよ。あんたはあまりにも愚かだ。だから貴族連中にも散々利用されている。

 そんな可哀想な皇帝に唯一生き残る可能性をやろう。

 将軍と戦い勝てば、国から放逐するだけで済ませてやろう』

『ほ、本当か!?』

『ああ、本当だ。

 そして将軍、あんたは皇帝を殺せなければ、其処にいる愛しの息子も死ぬ事になる。

 だが、皇帝を殺せれば、愛しの息子の命は助けよう。

 あんた自身が生き残れるかは、俺らと戦って勝てるかだ。さぁどうする?』


 将軍ゲイズはゆっくりと皇帝に剣を向ける。なかなか悪趣味な事をする。


『ま、ま、ま、待て!待ってくれ! 良く考えたら我がゲイズに勝てる筈など無い! ハンデだ!ハンデを要求する!』

『残念だがそれは認められない。お前の弱さは皇帝という椅子にあぐらを掻き怠惰をむさぼったツケでしかない。

 ハンデを享受するにはそれ相応の資格が必要だと考える。子供のような我が侭だけで育ったようなお前には分不相応だ』

『な、な、な……ま、待ってくれゲイズ! 不義密通の件はは許そう。いやなんだったらシャルを譲ってやっても良い! だから助けてくれ!』

『っ! シャルは元々俺のものだ! お前が皇帝の権力で無理矢理奪っただけだろう!』


 そう言うと、ゲイズは渾身の力でもって皇帝の頭を打ち砕く。刃の付いてない練習用の模擬剣であっても、それくらいは出来る。


『これで息子のジュールは救ってくれるんだな?』

『ああ。 ただ、この後、どうなるかは保証でき無いがな』

『それで構わない。 達者で生きろよ、ジュール』

『父上……』

『それで俺はどうすればいい? 誰と戦って死ねばいいんだ? どうせ俺とシャルの命は保証されてないんだろ?』

『ん? あー、まぁその事なんだけど……

 正直に言えば、あんたの罪は例の遠征でよく調べもせず勝ち目のない戦いに俺達平民を送り込んだくらいだ。

 だがそれも、大半は皇帝と他の貴族どもの権威を保とうとする我が侭から来たものだ。

 あんたはただ自分を鍛えてたら将軍になり、恋をして、そして利用された。ただそれだけの男だ』

『何が言いたい?』

『それにな、子供を思う親の気持ちも解らなくはないし、子供が生きるにはやっぱり親が必要だ』

『ま、まさか助けてくれると言うのか?』

『ま、そういう事になるな。親子三人で何処へ成りとも行くが良い。但し貴族としてじゃなく平民としてな』

『有り難い。それで十分だ』

『ま、息子よりも自分の命を優先して命乞いをするような下衆だったならその限りじゃなかったが、あんたはなかなか男義がある。息子を大事にしてやれ』

『そうさせて貰う。だが、貰うばかりでは心苦しい。お礼と言ってはなんだが情報を提供しよう』

『情報?』


『魔族に関する情報だ』


『ぷっ…… 魔族の情報ね。うん、なに? 聞こうじゃないか?』

『笑い事ではない! ここ最近世界における魔力密度はドンドン上がっている。これは魔族復活の前兆なのだ!

 お前達はどうやってそれ程の力を手に入れたのかは解らないが、伝説の魔族相手ではそうはいかんぞ! 心して掛かる事だ!』

『ぷふ……っ、あはははは! あんたもう最高だよ!』

『な、な、何を笑っている! これは本当の事なのだ!』

『いや、うん、そうだね。ある意味本当の事だ。 でもそれ認識が大きく間違ってるよ』

『なに?』

『というか魔族の事なら俺達が一番よく知ってるんじゃないかな?』

『どういう事だ?』

『虐げられていた俺達に食料を与え、生きる希望を与え、教養を与え、戦う力と信頼する心をくれた。そんな存在。それが本当の魔族だ』

『なんだと……』

『魔族は人類の敵なんかじゃねぇ。過去の魔族はどうだったか知らないが、今代の魔族はみんなお人好しの良い奴ばっかりだ。

 はっきり言ってな。相手が強いとかそんな事関係なく、俺達は彼らの敵にはなりたくないんだよ。

 此処にいる平民達はそれくらいに多大な恩と、優しさを受けているんだ。だから魔族と敵対とか絶対に有り得ないから』

『な……』

『ついでに言うと魔王だって復活してるぜ? レベルにして一万だってよ。ほんとすげーな』

『な、な……』

『ま、そう言うわけで安心しろ。あんたがもしこの国に残るならいずれお人好しの魔族達に会う事もあるさ』


「終ったか……」

「そうね。案外あっけなかったね」

「まぁな、一旦村に帰って祝勝会と行こう。 恐らく今後、各代表を集めてこの国をどうするのか決めていくだろう。

 しかし、今日の所は帰って祝勝会だ。どうせ出来の良い子供達の事だ。宴会の食料を沢山採って待っている筈さ」

「そうね、そうだね。今は我々が本当の自由になった事を喜ぼう!」

「よし、じゃぁ帰ろう。

 マルザさん最後の転移、頼めるかい?」

「了解した」


◆◆◆◆


 その後、この革命は『聖魔革命』と呼ばれ歴史に刻まれる事になる。

 悪徳貴族とその家族は多くが犠牲となったが、そうでない貴族の多くはその犠牲から免れた。

 革命から四日後、各代表を集め、行われた大会議において以下の事が決る事になる。


 一つ、旧帝国領地は、それぞれを小国家扱いとし、それぞれで自治を行う。

 一つ、小国家間に優劣はなく、互いを尊重し、発展に努める。

 一つ、全ての小国家は『聖魔連合国』に属し、年に数度、代表を集め全体会議を行う。

 一つ、『聖魔連合国』は『聖魔族』との融和を第一条件とし、その信頼に応えるべく誇りある生き方を選択する。


 その結果多くの国の代表に、革命を手助けした聖魔族が選ばれる事になる。

 一説には、国民達に「国を経営するのは面倒だ」と押しつけられたとも言われているが……

 それを証明するかのように、善政を行っていた領主はそのまま代表となった。


 連合国の主国家となる元帝都では城を取り壊し、大会議を行う為の議事堂が建てられることになる。

 そして聖魔族の代表、元魔王であったローガンは初代議長となり、この国を治めていく事になるのだ。

そろそろ2章は終了です。

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