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真なるチートの活用法  作者: ぽむ
二章 魔王編
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とある貴族の独白

また短いです。そして本日3回目の更新。

 最近領民の様子がおかしい。具体的には妙に大人しいのだ。


 数年前は武器を取り上げられた身でありながら頻繁に役人に刃向かい問題を起こしていた。しかし此処一年以上そう言った問題が起きていないのだ。反抗する事を完全に諦めたというのか?


 反抗と言えば職人連中に言う事を聞かせる為、子供を大量に人質に取ったが、ある日殆どの子供が牢の中で頭を壁に打ち付け自殺をしておった。まともに餌をやっていなかったからかも知れないが、此方としてはかなり手痛い反抗よ。おそらくは、空腹などで状況の辛さに絶望したか、親に迷惑をかけぬよう自殺を図ったか、どちらにせよ誰か一人が発作的に起こしたのだろう。それを見た物に集団心理が働き、一斉に自殺を図ったと思われる。


 おかげで月に一度の面会の約束に会わせる事が出来ずあの時は苦労させられたわ。


 一応「同じ所に住まわせていた為、集団で未知の重病に感染した。今は治療をしているので会う事は出来ない。どうもこの病気には強い感染力があるようである。高位治癒能力者しか面会は不可能である」とふれを出しなんとか納得させたが、その後もかなりしつこく面会を迫られ、あやうく武力衝突になる所であったわ。職人は替えが効かぬ場合が多いから失うわけには行かないからな。


 しかし、そう言えば最近はそれもないな。これも諦めたと言う事か?まぁ今でも「娘は無事なんだろうな?」と何かを注文する度に文句を言うものの、物はしっかり仕上げてくるから文句は無いがな。くっくっく、全く馬鹿な奴らだ。とはいえあまり病気と言う事で長引かせるのも不自然だ。適当な所で「治療やむなく死亡した」と伝えねばならんだろう。となればその後奴らをどう働かせるかだな。まぁまた家族の一人を奴隷とし、牢で飼うのが簡単か。


 そう言えば、他にもおかしい事はある。前回の徴税において農村地における収穫が帝国全土において軒並み遠征前並に回復したのだ。


 役人に命じて調査した所、農民共は「木の農具の扱いにも慣れてきたのかも」と答えたらしい。確かに木の農具の故障は減り、買い換える量は減ったが何かおかしい気がする。


 引っかかる物を感じた私は、本当ならあんな汚らしくて臭い所には行きたくはないが、万が一を考えて農村地を視察する事に決める。


 馬車から眺める範囲でみる事の出来る農民達はやせ細り、服もボロボロで乞食のような連中ばかりだ。しかし、幾人かの表情に笑顔が見える。不審に思って問いただすと、農民はこう答えた。


「りょ、領主様でしたか! こっだら所までご苦労様です。

 笑顔の理由、ですか? ああ、作物が前みてぇに取れるようになったもんで、わしらの手元にも収穫が残るようになりました。

 それが一番嬉しいんです。食べ物が無かった時は確かに辛かったのですが、それだけに今はその有り難みが身に染みるのです」


「ふむ、木の農具の扱いにも慣れてきたという話だったが、実際の所どうなのだ?」


「わしらも、あんまり農具の所為にしてふてくされてても、おまんまは食えねぇってんで、工夫をする事にしたんです。

 力の入れ方とか、振り方とか、おかげで領主様からお貸しいただいてる農具もあまり壊さずに済むようになりました。

 収穫は思っていた以上に上がるし、もしかしたら土地の精霊様が味方してくださったのかもしれません」


 精霊だと? そう言えば農民には精霊信仰と言う物もあるのだったな。ふむ、言われてみればこの土地に充満する魔力密度は以前訪れた時に比べ、ずいぶんと上がっているような気がする。いや、待てよ。そう言えば最近は魔法の修練に置いても調子が良いような気がする。もしかすると此処に関わらず、帝国全土、いや世界中で魔力密度が上がっているのかも知れん。そう考えれば土地の恵みを受ける作物の収穫量の増大は頷ける。なるほど、収穫量の増大の本当の原因は木の農具の扱いなどではなく、土地の魔力の活性化というわけか。


 幸い、魔力密度の上昇については心当たりがある。以前、教和国から魔力の活性化に伴い、魔物の凶暴化と魔族や魔王発生の危険在りと警告が来た事があった。もしかするとこれがその前兆という奴なのかも知れん。


「今年の作物の成長具合はどうだ?」


「へぇ、昨年よりも更に良く成長しているようです」


「なる程な、よし、もう作業に戻って良いぞ」


「ありがとうごぜぇます」


 ふむ、成長は上がっていると来たか、これはもう確定だな。収穫量の増大は魔族と魔王復活に影響された土地の変化なのだ。となれば今後取るべき道を考え直した方が良いのかも知れん。方策としては農民共に元の道具を返し、更なる収穫の増量を計るべきだ。


 皇帝は魔族達と戦うつもり満々のようだが、現実的に考えれば無理であろう。最近は国境付近にエクステンドクラスの魔物が頻繁に顔を見せるようになった。幸いに値踏みをするように眺めるだけで去っていくので今のところ実害はないが、あんな化物とは戦ってはおれん。伝説の通りであるなら魔族は魔物を率いる力があるのだと言う。おそらく主となる魔族、そして魔王の復活を待っているのだ。


 となれば我ら帝国が取るべき方策は一つだ。「平民を蔑ろにするな」等とおかしな正義感を振りかざす教和国の事だ。魔族が襲ってくれば正義面して必死に戦ってくれるに違いない。だが魔族は人類を滅ぼす猛毒と伝えられ、人間には決して敵わぬ天敵とも聞く。しかし、遠征での報告によれば教和国の強さはエクステンドクラスの魔物の群れにも匹敵すると言う報告もある。


 ならば化物同士が殺し合い、その両者が疲弊しきった所で、我々帝国が両者を討ち取ればよいのだ。いや、適当に教和国が弱った所で恩を売り、様々な技術供与を強制させてからでも悪くはないな。戦争には金もそうだが食料も大量にいる。それを踏まえても我が国は様々な点で生産量を上げ、それを餌に教和国を操ればよいのだ。


 ふむ、これは貴族院を焚きつけても、すぐさま皇帝を説得する必要がありそうだな。


 くっくっく……、敵である魔族の復活がこれ程楽しみになるとはな。交渉の段階になって教和国がどんな顔をするのか今から楽しみだ。

エクステンドクラスが国境付近を徘徊するのは当然作戦です。

魔力密度が高いのは魔族が近くにたくさん居るからです。

魔力が高いだけでは作物は急成長しません。


と言う訳で、頭の良い貴族が気付いているんじゃないか?と期待した方大変申し訳ありません。全然気が付きませんでした。


しかしながら、彼らの得られる状況と「魔族は人類の天敵」という事、そして魔族発生に伴う現象から、その復活が近い等、それらを加味すれば、貴族としてはこの判断に落ち着くのは仕方がありません。


少なくとも「魔族は人類の天敵」であるなら彼らの方策は間違いなくそれなりの効果を発揮するのですから。


うん、彼ら貴族はきっと、たぶん、おそらく、悪い判断はしていないのですw

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