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真なるチートの活用法  作者: ぽむ
二章 魔王編
15/25

接触

 ――三ヶ月後。


 カツカツカツ……


 図解説明付きで魔力循環の概要について黒板に書いていく。


「そんな訳で人類の魔法文明の発展維持の為には、魔物や魔族との共存が必要不可欠と言う事だな。


 さて、黒板は写し終ったか~?


 よし、じゃぁ消すぞ。次は具体的な魔力反応式を学んでいく。テキストの28ページを開いて――」


 ………


 ……………


 …………………


 キーンコーンカンコーン、キンコンカンコーン!


「お、丁度良い所で終ったな。では次回の授業では実際の魔力反応を詳しく観測する。各自配布された測定器を忘れずに持ってくるように。

 では解散」


 ここは応用学級の一室。俺の分身は魔力循環に関する講義を終え、教室を出ようとした所で、一人の生徒に呼び止められる。


「教授、先程の授業で少し気になる点があるのですが……」


 よしよし、早速引っかかってくれたよ。一回目の授業で質問とはなかなか勉強熱心じゃないか。


「なんだね?」


「先日発表された論文についても詳しく読ませていただいたのですが、論文の中の魔力反応式には魔族のケースなども詳しく載っていました。魔族や魔王という存在は伝説上の存在ではなかったのですか?」


「なるほど、それについては一応古代遺跡の資料を基に……と言う事になっているけど、君の方が良く解っているのではないのかね?」


「………!!」


「実際測定器も使ってみたのだろう?」


「…………」


「ははは、そんな恐い顔をしなくても大丈夫だ。詳しい話が聞きたいなら学園長室まで来なさい。其処でじっくり話をしよう。君の強さはなかなかに素晴らしいが、私に敵わない事もなんとなく予想が付いているんだろう? 個別に説明するのも何だし、仲間が近くにいるなら呼びたまえ、何、悪いようにはしない」


「…………解りました。伺わせていただきます」


◆◆◆◆


「ようこそ我が学園へ! 魔族諸君」


 学園長室に来たのは四人。驚く事にそれぞれが神竜並の強さを持っている。まぁガルフォードやカレンもガッツリ修行をさせているので今では神竜をソロで狩れるほどに強くなったのではあるが、彼らのすごい所は魔族化して僅か半年でその強さになっていると言う事だ。恐らく成長し、成人体になる三年後には、今の三倍程の強さに成ると思われる。


「さて、話だったねまずは質問から受け付けようか」


「一番気になるのはあなたの存在です。学園長も各種教授陣も、様々な市町村に置ける基礎教育教師にも、学園長、あなたと同じ魔力パターンの存在が居ます。そんな真似は人間、いや魔王であっても有り得ない」


「あー、魔力パターンまで正確にわかるのか。思った以上に優秀だね」


 バレている以上教授の分身をここに置いておいても意味がないので退室させる。


「ん~、そうだなぁ数年前、全世界に無数の神の憑代が降臨し人類に対し巣立ちを促したのだが聞いた事はあるかい?」


「話だけなら……」


「ま、簡単に言うと私の正体はそれだ。とは言ってもこの世界を創った神ではないのだけどね。この世界の創造神は既にこの世界を去っており、代わりに私が管理権限を持っている」


「か、神だと……」


「何だったらステータスでも確認するかね? 今君らにも見えるように一時的にレベルを下げるから鑑識を使えば私のステータスを詳しく読み取れるだろう」


「な……なんだこれは……」


「まぁ実際にはそんな数値は飾りだ。自分にとってこの世界では不可能はないからね。そんな数値を増やすのは実に簡単な事だ。

 どれ、実際にやって見せよう」


「なに……? 数値の桁がどんどん上がっていく……? 本当にあなたは神だというのか?」


「私が神かどうかは別として、神と同じ力を持っている事だけは保証しよう。それは即ち君らの強さについて私の方で自由自在に変更出来る事を意味する。私がその気になれば君らを即時に絶命させる事も、赤子並の虚弱生物にする事も可能だ」


「………」


「まぁしかし、君らはその強さでもって魔法をどんどん使って貰わない事には魔力循環が間に合わないんだ。だからそんな事はしないがね……


 さて講義を熱心に聞いていた君なら私の望みは良く解っていると思うが、出来れば人類と共存の道を歩んで欲しい。

 敵である人間を知るために人間になりすまし潜り込むぐらいだ。共存できないわけでもないんだろう?」


「…………本気でそんな事が可能だと思って居るのか?」


「可能かどうかではなく、やって欲しい。そうでなければ君らはいずれ滅亡するよ?」


「人類を奴隷にすると言う方法もある」


「まぁ君らの強さがあれば人類を奴隷にする事も可能だろう。だけどその場合も君らはほぼ全滅してしまうわけだが?」


「なんだと?」


「現状における酸化魔力の増加は人間が高水準の生活、高度な魔法を使っているからこその増加だ。奴隷にされ文化的な生活が出来なくなれば、当然、酸化魔力の生産量は激減する。そうなれば君らは生きて行けまい。君たちの生態は一定以上の酸化魔力濃度が必須なのだからね」


「…………」


「と言う訳で、出来れば前向きに検討して欲しいんだよ。もちろん人間社会で不自由なく暮らせるようにも手配しよう。


 具体的にはこの腕輪を進呈する」


「コレは何だ?」


「君らは魔法を使うと粘液状の汗を掻くだろ? 知っていると思うがこれはそのままでは人間にとって猛毒だ。まぁ汗が気化し時間が立てば人間の使える魔力に変化する訳なのだが、この腕輪はその変化を促進する触媒だ。


 現時点で君らが魔法を使うと人間にとってかなりの刺激臭を発生させる。だから潜入中は一切魔法が使えなかった筈だ。だがこの腕輪によって粘液は即時に分解され、君らでも制限を気にすることなく魔法を使う事が出来る。しかも魔力循環は普通に行われるために人類にとってもとてもハッピーと言う訳だね。


 後は君らの生理的な嫌悪や蔑視さえ心の奥底に飲み込んで貰えれば、問題はクリアと思っている」


「…………」


「人間が魔族や魔王を嫌う最大の理由は、その猛毒の粘液による所が多いからね。それさえ何とか出来れば君らの容姿は人間社会においても美形の類だ。


 美形で、能力が高く、賢い。人間社会にちゃんととけ込んでくれればそれなりに良い生活が出来ると思うが?」


「………ふむ」


「検討に値するわね」


「肯定」


「肯定」


「よかった。頭の良い君たちなら解ってくれると思ったよ」


「しかし、やはりこの魔力循環については別視点からの確証も欲しい」


「まぁ確かに、一方向だけの意見でそれが正しいと判断するのは愚かな事だ。そんな君らの踏ん切りを付ける適任の者が居る」


「何者だ」


「大陸の果てに住む神竜だよ。今じゃ人間から神竜なんて大層な名前で呼ばれているが、実は三代目魔王だ」


「なんだと!?」


「これまでの人類と魔族との戦いは全て双方共倒れの結果になったのだが、滅亡する寸前に唯一魔力循環の秘密に気付いた者が居る。それが三代目魔王さ。


 とはいえ気が付いた時には人間はほぼ死に絶え、魔族も一人も残っておらず、世界に残る残留酸化魔力も残り僅かだった。


 彼は生き残るために、力の大半を封印し、残りの残留魔力で自分の身体を魔力依存度の低い物に改変する事に決めた。しかし、そのおかげで食料に関しての燃費が非常に悪い身体になってしまってね。彼が十全に活動してしまうと、今のように人間や魔物が十分に増えた状態であっても、数年で全てを食らいつくしてしまう程だ。


 となれば、折角身体を改変したというのに結局餓死だ。だから彼は最小限の食料で済むように世界の果てで常時冬眠状態を貫いてると言う訳さ。


 しかし、身体を改変し神竜となったとて、彼は元魔王だ。封印によって力は全盛期の三分の一ほどにまで落ち込んでいるが、魔族が訪ねれば快く会話をしてくれるんじゃないかな?」


「ふむ、興味深い話だ」


「一度会いに行く必要がありそうね」


「同意」


「同意」


「あ、触媒の形は腕輪以外にもペンダントとか、各種アクセサリにする事も可能だ。希望があれば今すぐ作るが?」


「………では私はペンダントの形式でお願いしますわ」


「解った」


「腕輪では戦いの際に邪魔になりそうだ。ベルトという形式には出来るかね?」


「ならバックルに触媒を仕込もう」


「「我々はゴーグルで……」」


「………

 うーむ、腕輪人気無いな…… まぁ良いか。『マテリアライズ』


 はい、大事に使ってくれたまえ。


 他の魔族の方達も希望するなら全員に触媒を渡そう。何時でも学園長室を訪ねてくれ。分身の方でもマテリアライズは可能なのだが、その場合は人目に付かない様にこっそりとな」


「了解した」


「それでだ………

 神竜とあって確信が持ててからでも良いのだが、君らにチョットばかり頼みがあるんだ」


「………なんだ?」


「グライト帝国は知ってるね」


「ああ、既に何人かが潜り込んでいる。生活水準はこのあたりの国と比べかなり低い方になるな」


「うん。あそこは頭の固い貴族様が自分の地位に必死にしがみついてる状態だからね。


 で、上手い事潜り込んで革命を起こしてくれないかな?」


「なんだと?」


「そしてグライト政権を打倒した後は、君らが善政をもってかの土地を治めて貰いたい」


「………我々にグライト帝国の国民を治めろと言うのか?」


「そうそう、現状のままだと、あの馬鹿皇帝は魔族との全面戦争を始めかねないんだよ。折角警告したのに逆に「今こそ帝国の威信を取り戻す好機!」とかアホな事ぬかして、全く勝ち目のない魔族との戦争をする気満々なんだ。だけど、それは君らにとっても人類側にとっても美味しくない。だから被害を最小限に収めるには、革命によって首脳陣だけ排除するのが理想だ。


 この程度、優秀な君らなら容易い事だろう?」


「まぁ可能だとは思うが……」


「うん、それであの国の虐げられていた国民を良い具合に導いて欲しいんだよね。これは君らにとっても悪い話じゃない。

 虐げられた国民を救えば人類の魔族の対する印象を改善する切っ掛けになる。今はまだ魔族っていうのは敵って印象の方が強い。

 しかし、革命を起こした後、善政を敷き、国民の生活を豊かにすれば完全にヒーローだ。人間社会における魔族の好感度は確実に上がる。

 それに、善政を敷くと言う事は、魔力文明水準が上がり、発生する酸化魔力も増える。最終的に君らの力は更に上がると言う訳だ。

 また、多数の魔族が自由に暮らせる国、定住できる場所も出来るわけだし、良い事づくしだと思うんだが、どう?」


「………ふむ。その為に革命を起こし、内側から改造すると言う事か」


「そうそう、後問題になりそうなのは今後発生する魔王さんの事かな」


「恐らく魔王は我々四人の内いずれかが進化すると思う」


「あー、そうかもね。君ら四人が魔族の中じゃ頭一つ上の実力だし」


「………全てお見通しというわけか」


「まぁね。


 いやぁしかし、今回の魔王はすごい事になりそうだな。君ら魔人の段階で、神竜の三倍ほどの強さになる見込みだし、魔王に進化すれば過去の例からして更に三倍の強さになる。神竜の9倍の強さとか凄すぎでしょ」


「ふふふ……我々は優れた種だからな」


「あーでも、くれぐれも(・・・・・)、その強さにかまけて恐怖政治とかしないでね? もしそんな事したら殺しはしないけど、きついお仕置きをお見舞いするから」


「う…… わ、解った」


「まぁ仲良くさえやってくれれば俺は何も干渉する気はない。というか『独り立ちしてくれ~』って人類の前から去っておいて超常の力を使うハメになったら台無しも良い所だ」


「確かにそれはあるかもな」


「そうそう。

 さて、僕の伝えたい事は大体伝えた事だし、希望するなら神竜の所に転移で送っても良いけど?」


「世界の果てまで転移で送れるのか……」


「うん、希望するなら何人でもね。君ら念話で仲間との連絡も出来るんでしょ? というか、この会話も多くの魔族が聞いていたみたいだし。

 と言う訳で希望者はその場で手を揚げてくれれば送ってあげる」


「ま、まて。世界各地に散っている同胞達を全て把握しているというのか?」


「まぁそれくらい出来なきゃ神の力とか言えないでしょ。帰る時は俺に念話飛ばしてくれれば希望の場所に送るよ」


「…………。 解った。よろしく頼む」


「んじゃ、いってら~」


 いや~、良かった。あいつらが冷静に損得勘定のできる奴で。どっかの皇帝みたいに周りが見えず何かに固執する奴らだったら「本能に従う!」とかあり得たからな。まぁ生物ってのは知能が高ければ高いほど本能を除外して思考できるから可能性は低かったが、思っていた以上に上手く行って少々拍子抜けだな。


 さて…… 神竜の話を聞けば彼らは恐らく動いてくれるだろう。その上でどうやって革命を成功させるのか魔族の知恵を見させて貰おう。

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