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彼が噂の情報部  作者: くるなし頼
第一章 『情報部』という存在
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霧丘が知りたいこと

所属している部活を聞くことは、別に変なことではない。


しかし、この笑顔はなんだろう。

しかも、なぜこの流れで聞くのだろう。




例えば霧丘が最初から俺が侵入者だと知っていたら、この笑顔は悪意に満ちている。


つまり、俺の反応を見て遊んでいる。


白池先輩とは違うたちの悪さを、彼女は持っていることになる。



…考え過ぎか。



「俺は帰宅部だけど」

「そっか」


霧丘は笑顔のまま、少し低い声で言った。


怖い。



もし霧丘が侵入者の俺を捕まえようとしたら危険なので、いつでも窓に向かって走り出せるようにした。



冷や汗をかきながらこちらも愛想笑いを浮かべていると、霧丘の顔が少し曇る。


「あのね。私も帰宅部なんだけど」

「え。あ、うん」


話が全く読めずに俺は少し混乱していたが、霧丘は構わず話を続けてくる。


「気になる部活があるの。なんというか、凄く怪しくて情報が少ないんだけど」

「ほ、ほほう」


霧丘が俺の目を真っ直ぐ見た。


「『戦略部』って知ってる?」


『戦略部』。

それは第二高校にある、割と有名な部活だ。


俺の学校でいう、戦闘部の策略担当者たちに相当する。

つまり、織り姫こと城戸のような策略をたてる部員たちだけを集めて、一つの部にしたような部活である。


ちなみに、この情報も雪平先輩が取ってきてくれたものだ。


「知ってるけど」

「ほ、ほんと?」


霧丘の目が輝く。


「ねえ、どんな部活なの?」

「え、えっと」


霧丘の勢いに圧倒されながら、戦略部の特徴を説明した。

霧丘は興味深そうに説明を聞いている。


全てを説明し終えたところで、ちょうど放送が流れてきた。


「奏寺君、至急職員室前まで来るように」


この声は白池先輩だ。

向こうも情報を得たので、終わりの合図をしたのだろう。


それにしても、なぜそんなに簡単に放送室に入れるのか。


「あ、俺行ってくる。じゃあな」


霧丘に簡単に挨拶をして背中を向けた。


「うん。色々ありがとう!」


霧丘の明るい声を聞いた直後、無事に図書室の扉からでることができた。





白池先輩と校門で合流すると、お互いに仕入れた情報や、起きた出来事を報告しあう。


体育祭の日程はお互いに一致し、開始時間は9時という情報を白池先輩が教えてくれた。


「…え、じゃあ先輩は副会長から直々に聞き出したんですか?」

「うん。まあ裏付けとして、誰もいない生徒会室漁って書類とかでも調べたけどね。


どうやら、第二高校は毎年9月の最終日に体育祭を行っているみたいだよ」


さすが白池先輩だ。

あの短い時間でそんなことまで調べられるとは。



「それより奏寺、誰かとぶつかってたね?」

「あはは、見られていましたか」

「まあ、高校ではそんなに見ない光景だったから」


俺は霧丘のことを思い出した。


謎が残るあの女子生徒。

白池先輩に相談したほうが良いかもしれない。


「先輩、実はそのぶつかった女子が変な人でして…」


変な人、ではなく変わった人と言った方が良かったかな、と思いながら説明を始めた。




白池先輩が笑顔を封じて考え込む。


「なるほどね…。確かに奏寺の正体を知っている可能性もあるけど」


一呼吸おいて、白池先輩は俺に1つの可能性を提案した。


「彼女も実は第二高校に潜入捜査しに来た、他校の生徒だった可能性もあるんじゃない?」

「…!なるほど!」


確かにそれなら少し納得がいく。


クラスを聞いたとき焦ったこと。

予定表の仕掛けに関して、全く知識が無かったこと。

第二高校では割と知られている戦略部を、あまり知らなかったこと。


だが…。


「でも、潜入捜査にしてはちょっとレベルが低くないですか?もし、話してたのが俺じゃなかったら、彼女はばれていたかも」


考え込む俺を見て、白池先輩も再び考え込む。


「うーん。やっぱり?」


やがて、考えることに少し疲れた俺は、にやりと笑ってみせた。


「それとも、俺たち情報部のレベルが高いから、そう見えちゃうんですかね?」

「ははっ!そうかもね!」


白池先輩も笑顔に戻っていた。


このあとは霧丘の話をする事なく、くだらない話をして、笑いながらショッピングモールに向かった。




そして寮に帰ってから、俺の部屋で開かれた情報部のミーティングで、驚きの事実が判明した。


実は、本日潜入捜査を行うことを、白池先輩は香藤部長に連絡し忘れていたらしい。



よって今夜も香藤部長は怒り、白池先輩を叱る。


なぜか白池先輩はへらへら笑いながら、香藤部長を宥めていた。

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